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東京には、何もない。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長尾創真(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
畳の家に引っ越した。
 
もともと住んでいた品川区から東へ1時間。
葛西の片田舎に、引っ越した。
 
ぼくは、23歳で、就職した。
なんとなく都会に憧れて、なんとなく東京に憧れて東京に出てきた。
 
なにかになれるような気がして、なにかできるようになる気がして。
 
最初は、よかった。
 
都会になにかある気がして、なんでもある気がして。
東京ならなんでもできる気がして。
 
ワクワクして出てきた。
 
最初、品川にある会社の寮に住んだ。
「いやー、東京どうなるんやろ!」
 
そんなことを思いながら、ワクワクしていた。
ワクワクしている勢いのままに、趣味のカメラで東京を写真に収める。
 
今まで見てきた景色とは違う景色。
これまで感じてきた空気とは、違う空気。
 
最初は、興奮していた。
 
きらびやかなビルの輝き。
うるさく走り抜ける電車の姿。
なかなか上がらない踏切。
 
いろんなものを楽しんでいた。
 
でも、それも短い期間だった。
 
ある日、僕は在宅ワークでの会社の業務が終わって、ゆっくりしていた。
ぱっと、窓の方を向くと、夕日が差し込んでいた。
 
すりガラスの窓から夕日が美しく差し込み、真っ白な床をオレンジ色に染めていた。
 
「めちゃくちゃきれいだ!」
 
そう思った僕は、カメラを持って、バタバタと外に出た。
 
「夕日が落ちる瞬間が撮りたい」
 
そう思って、飛び出した。
 
寮の近くは、ビルに囲まれていたことはわかっていたから
どこか夕日が沈む瞬間が見えないかと思って、走った。
 
少しでも高いところを目指して、
少しでも開けたところを目指して、走った。
 
でも。
 
どこまで行っても、ビル。
ビル、ビル、ビル。
 
一向に、地平線は見えてこない。
夕日は早くもビルに隠れてしまい、暗い影ができる。
 
それでも、どこかに、夕日が沈むところが見えるんじゃないかと思って走った。
 
「きっとどこかに、隙間があるはず」
 
そう思いながら、走った。
 
でも、その隙間は現れなかった。
 
結局、夕日は撮ることができず、60分間走り続けた。
 
その瞬間、
 
「あぁ、なんだよ。東京は」
 
そう思った。
 
夕日を見ることができないことがショックだった。
 
人間が作ったもの、人間が便利だから作ったビルで、
あんなにも綺麗な夕日が見えないなんて、もったいない。
 
あんなに、素敵な夕日が見れないなんて。
 
「東京には、何もないな」
 
そう、思った。
 
僕は、小学生の時、夕日が大好きだった。
 
山口県の綺麗な空気に、遮るものがなにもない空で。
新緑の山に、オレンジ色の夕日が落ちていくのが好きだった。
 
そして、その夕日に照らされる、稲穂が好きだった。
オレンジ色の絨毯が広がっていた。
 
その光景が当たり前で、外に行くとそれが見れなくなるなんて思わなかった。
 
夕日が落ちる瞬間は、どこに行っても見えるだろうと思っていた。
 
だけど、東京では見れなかった。
どれだけ走っても、見えてこなかった。
 
人が便利だから作ったビルに阻まれて
人が美しいと思う夕日が隠れていた。
 
だから、ぼくは、引っ越しを決めた。
 
しかも、かなり田舎。
 
家は和室だし、外に高いビルはない。
歩いて10分もすれば、川もある。河川敷もある。
 
そこに引っ越した。
 
「せっかくなら、東京の都心に住んだらいいじゃん」
 
先輩に、そう言われた。
 
「田舎が好きなんですよね」
 
と、ぼくが言うと、微妙な顔をされた。
 
なんだか、悔しかった。
 
自分が美しいと思うものが否定された気がして。
自分がこれまで住んできた環境を否定された気がして。
 
その先輩は、都会で生まれて、都会で過ごしているみたいだ。
もちろん、都会を否定するわけじゃない。
都会にも良いところがあって、便利な中で過ごしたい気持ちもわかる。
 
でも、ぼくは、田舎が良いんだ。
誰も、それを、否定することはできない。
 
都会に来たことは、後悔していない。
田舎が好きだってことを、知ることができたから。
夕日が大好きだってことを、知ることができたから。
 
だからこそ、ぼくは、この田舎生活を存分に楽しもうと思う。
 
和室をどの洋室よりもおしゃれにしてやる。
都心に住んでいるどの部屋よりも、素敵な部屋にしてやる。
 
田舎に住んでいることを、羨ましがらせてやる。
 
これは、下剋上だ。
 
都会に住まなくても、充実した生活を送ることができる。
都会にいなくても、幸せは感じることができる。
 
便利なこと、綺麗なことだけが、人の幸せじゃない。
 
そのことを、誰かに証明するために。
 
都会に住んでる先輩が、ぼくの家に来て
 
「こんなとこ住みたいな」
 
って言ってもらえるように。
 
よし、今から、家具を買ってこよう。
 
最高の田舎ライフを過ごすために。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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