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「~しないといけない」という牢屋に囚われて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤井佑香(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「何でインターンだからって5分前に出社しないといけないんだ? 僕の給料が発生するのは朝9時からなんだから、その時に出社すれば良いじゃないか」
これは、私が以前働いていた会社で、教育係を担当していたフランス人の学生インターン生から言われた言葉だ。その会社は朝9時始業なのだが、インターン生は始業5分前までの出社が義務付けされていた。社会に出た時に恥をかかないように、少なくとも5分は余裕を持って出社する癖を付けさせるのが目的だ。そして始業時間の5分前である8時55分を過ぎてからの出社はインターン生に限って「遅刻」とみなすということになっており、このフランス人インターン生はその「遅刻」の常習犯だった。指導係として何とかしなさいと上司から言われた私は、彼に注意をしたのだ。
「や、だからさ、何度も言ってるじゃん。5分前までに来ないといけないんだって。日本だと、特に新人は早めに会社に来ることが良いとされてて、その癖を身につけて欲しいっていう想いでそういうルールにしているんだけど」
「でもお給料が発生するのは9時からなんだよね? それなのに、8時55分までに出社が絶対って。この5分は無償で働けって言ってるわけ?」
こいつ、あー言えばこういうわね……と思いイラつきながらも、私は別のヨーロッパ出身の友人から言われたことを思い出していた。
「日本ってさ、こうしなさい、だってそうあるべきだからっていうの多くない? 皆こうしてるからとか、そういうもんだからって言われても納得できないんだけど」
う~ん、言われてみればそういう面もあるかも。そもそも私達がインターン生に課している5分前出社は正しいと言い切れるのだろうか。結局フランス人学生には、郷に入れば郷に従え、そこから学ぶこともあるはずだと無理やり説得をしてしまった。しかし、そのやり方で良かったのだろうか。
大学の卒業旅行で訪れたスペインでも同じようなことを考えさせられた出来事があった。スペイン語を少しだけかじっていた私は、滞在費も安く言語も学べるという理由でスペイン南部のセビリアという街で2週間語学学校に通っていた。周りはほぼヨーロッパ出身の学生ばかりという環境だった。彼らはそれぞれの理由で学校に通っていたが、一番多かったのはギャップイヤーと呼ばれる、進学や就職など進路が決まる前に色々経験をすることを目的としている期間で来ているというものだった。高校を卒業して暫くアルバイトでお金を貯めて、そのお金で生活しながら言語でも学びつつ将来を考えたいからとか、将来的には大学院に行こうと思っているけど、進路を決める前に暫くスペインを旅行するために言語を学びに来たといった具合に。ただ、当時の私にとってこれらの理由は衝撃的なものだった。学校卒業後はすぐに進学・就職するのが当たり前で、そうでなければならないと思っていたし、周りではその考え方が一般的であったからである。だからこそ、大学卒業までに何とか進路を決めないと、と疲弊しながらも必死に就職活動をしたのだ。一方で、卒業後の進路に関して何にも囚われずゆっくり将来を考えている彼らの考え方に触れて、自分が今まで信じて来た常識はあくまでも自分が所属するコミュニティの中で有効なだけだったのではないかと思うようになった。何故あんなにも「すぐ就職しないといけない」という考え方囚われていたのだろう。大学の学費は親に払って貰っていたし、卒業後も親に頼ってのんびりするというのは実際現実的ではなかったけれど、それでも、もしかしたら就職以外の他の道もあったかもしれないのに。というか、そもそも私は何のために大学卒業後働くことにしたのだろう。そもそも働くこととは何か、とか根本的なことから考えても良かったかもしれないし、すぐに答えが見つからなくても良いはずだったかもしれないのに。
私たちの周りには、たくさんの「~しないといけない」が存在する。しかしながら、よくよく考えてみると、それが正しいとも限らないし、自分にとって良いことなのかも分からないことがある。「~しないといけない」という言葉はなんだか誰かが勝手に作った牢屋のようで、私たちは知らないうちにその言葉に囚われて、行動を制限されているのではないか。あるいは、それが当たり前になってしまっているからこそ、考えることを止めていないだろうか。勿論、周りの常識や決められたルールなどは、社会を機能させるために大事な要素であるという側面もあるのも事実だ。しかし、自分が当たり前だと思っていることが、別のコミュニティに所属してみると実はとても特殊な考え方だったということもあるかもしれないのだ。
私が指導に頭を抱えたフランス人インターン生は、もしかしたら別の牢屋の囚人だったのかもしれないが、少なくとも同じ牢屋には居なかったのだ。別の牢屋のルールを押し付けられたところで、彼が生きてきた当たり前に存在しない考えを強制されるのは、納得感も無いし理解出来なかっただろう。
私たちを不自由にしている「~しないといけない」という言葉は、所詮誰かに作られたもので、自分の所属している場所でしか効力を発動しないかもしれない。その事実に気づくことが、その牢屋から抜け出して、自由になれるきっかけになるはずである。
 
 
 
 
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2020-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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