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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岡 志津(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
今年も夏がやってくる……。
 
「この世界の片隅に」という作品を知っているだろうか。
こうの史代さんの漫画で、2016年に映画化、2018年にドラマ化もされた。
 
ものがたりは、1943(昭和18)年から1945(昭和20)年、18歳で広島から呉に嫁いだすずさんの日常を描いている。
おっとりした性格のすずさん。
見知らぬ土地で、配給が少なくなっても工夫して食事を作り、趣味の絵を描いたりしながら、毎日のくらしを積み重ねていく。
そして、1945(昭和20)年の「あの日」がやってくる……。
 
映画は、第40回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を受賞し、クラウドファンディングでの支援によりかなり話題になった作品なので、見たことあるという人も多いと思う。
この作品は一般的には「戦争モノ」のカテゴリーに分類されるが、辛い・暗い・悲惨・救いがない……といったいわゆる「戦争モノ」とは少し異なると感じた人が多かったのではないか。
 
おそらくその理由は、食事のシーンを代表するように、当時の生活が「ごく普通の日常」としてすずさんの目線から描かれていること。
楽しい時には楽しみながら、普通に生きていること。
今の私たちも、コロナ禍で行動が制限される中、「食べることは生活の基本だ」と感じた人が大勢いた。
すずさんたちも同じように、不自由な中で工夫をこらしながら食べることを基本とした生活を送っている。
その平凡な日常の中で、戦争によりすずさんの大切なものたちが失われる。
「普通でいる」ことが難しくなっていく……。
 
逆に、いわゆる「戦争モノ」は、とにかく悲惨で、人類の負の遺産といったマイナスイメージをメインに取り扱う。
それは間違いではないし、大切なメッセージなのだが、2020年の今年は戦後75年。
実際に経験した人が高齢化により少なくなってしまった今では、私たちはリアルに感じられず、どうしてもフィクション感が強くなってしまう。
 
そんな中、「この世界の片隅に」という作品は、普通に生活していたすずさんを主人公にし、世界の片隅にいる普通の人たちの目線から描いた。
戦後75年という今の時代を生きる私たちにとって、自分とは関係のないことではなく、今の延長に戦争があってもおかしくない、そう思わせた。
日常を脅かす戦争をリアルに感じることができる作品だったことが、これだけの評価に繋がったのではないかと思っている。
 
身近な人が死ぬかもしれない恐怖
暴力では何も解決しない
人が死ぬ戦争は悪である
抑止力としての核兵器になってはいけない
科学技術は平和のために使うべき
 
……わかる。
だけど、ふわふわとしてつかみどころがない。
実感が湧かない。
 
「足にバケツができたって、ばぁさんが言っとったなぁ」
1938(昭和13)年生まれの父が話してくれた。
神戸生まれの父は、7歳の頃に神戸大空襲にあい、広島の親戚を頼って逃げてきたそうだ。
空襲から逃げる際に祖母が覆いかぶさって守ってくれたおかげで九死に一生を得たが、足に爆弾の破片が当たってしまい、「バケツみたいな穴」ができたと言う。
幼かった私は、毛が生えていないツルツルした「バケツ」を触るのが好きだったが、幼すぎて何も分かっていなかった。
 
祖母の家には、幼い頃の父のおめかしした写真が1つだけ飾ってあった。
当時、写真館に飾られたという祖母自慢の父の写真。空襲でこれだけ抱えて逃げたと祖母が言っていた。
この話を聞いた時も私は幼く、「ふーん、よく焼けなかったな」程度だった。
 
祖母は私が高校生の頃に亡くなり、父も認知症で当時の話はもう聞けない。
大切な写真の話もバケツの話も、もう聞けなくなってしまった。
これが戦後75年という現実なんだろう。
 
私自身、広島生まれで、小学校では毎年折り鶴を折り、8月6日の全校登校日で平和学習を行い、黙祷を捧げた。
中学高校では8月6日は休みだったが、8時15分には「黙祷の時間よ」と起こされた。
東京で暮らしている今でも、電車に乗っている時もあるが、気持ちだけでも8月6日の8時15分には黙祷をしている。
 
祖父母ではなく父母に戦争経験者がいる、広島生まれで平和学習が身近だった、今年38歳の私。
同年代からすると、戦争体験に触れることが多い方ではないかと思うが、それでも風化を感じている。
「戦争を二度と繰り替えしてはいけない」
この言葉がリアルに実感できなくなっていく。
 
戦争の話をすることは、政治の話のように「知らない人に話す権利はない」と思われがちだ。
確かに知らない。だけど、話題にしないとこのままどんどん無かったことになってしまうのではないか。その方が怖い。
教科書の歴史ではなく、知っている〇〇さんの話として「実感」を伴って語り継ぐことが必要なのではないか。
 
今年も夏がやってくる……。
 
2020年の今年は戦後75年。
知らないけど話してみよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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