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24歳「軽い肺炎」体験記


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:早川愛(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ゴホッゴホッゲホッ
はぁはぁ
ゲッホ、ゴホッゴッホゴッホゴホッ
すぅ〜…はぁ、ゴホッゴホッ
 
一体、いつからこれを繰り返しているだろうか。
いい加減にしてほしい。
吸っても吸っても、酸素が足りない。咳でどんどん息がでていく。
 
浅いことろでコンコンとする咳ではなくて、体の深いところから出てくる、気管がゼェゼェとするような咳。
 
息を吸っても十分な量の酸素が体に供給されていない。
吸っているよりも多くの息が咳によって出て行っている気がする。
普通に息を吐くことができない。
息を吐こうとすると、全部、咳になる。
腹筋と背筋が常にフル稼働している。
 
苦しい。
延々と、長距離を走らされているような。
どんなに泳いでもゴールにたどり着けない水泳をしているような、溺れてしまいそうな、息苦しさ。
体力が奪われる。消耗していく。
 
もう疲れた。休みたい。と、ベッドに寝転がりながら思う。
一日中ベッドに寝ているのに、止まらない咳のせいで全く休んでいる気がしない。
一日中横になっているのに、顔色は悪いし、目の下にはクマがある。
 
死ぬかも。と、半ば本気で思う。
私、おばあちゃんじゃなくてよかった。
体力なかったらほんとに死ぬ。
確か高齢者の死因第3位だっけ? 納得する。これは死んでしまう。
 
苦しい。酸素が足りない。酸素が足りない苦しみってこんな感じなのね。
いつか観たSF作品のワンシーンが頭をよぎる。酸素濃度のゲージがみるみる下がっていく宇宙船で、苦しそうに、なんとか生き延びようと奮闘する宇宙飛行士。
わたしいまうちゅうひこうし…高熱で朦朧としている頭で、ぼんやりと考える。
 
これが「軽い肺炎」ってどういうこと。
 
日曜日の夜、仕事から帰ってきたら熱が出た。
38.4℃。
しんどいし、体も重い。ひどい倦怠感。何もできる気がしない。
最近、忙しかったからな。解熱剤飲んでおけば下がるかな。ベッドに倒れこむ。
 
月曜日の朝。38.2℃。仕事を休んだ。咳が続く。体もだるい。
病院に行ったら、風邪ですね、と言われて薬を処方された。
 
火曜日の朝。38.1℃。薬は飲んでいるけど、熱はあまり下がっていない。咳が続く。息が苦しい。
仕方がないからもう1日休む。
 
水曜日の朝。38.2℃。薬を飲んで仕事に行った。
休んでいられない時期だった。既に二日も休んでしまった。
今週の金曜日にやる研究授業の指導案を仕上げないといけないし、授業用のワークシートも用意しないと。指導案見てくれた先輩にもお礼を言わなきゃ。授業も今度のテスト範囲まで終わってないから急いで進めないと。あとは、長期欠席の生徒の対応と、別室登校してる生徒の対応と、集団で万引した生徒の対応と、保護者への説明会の準備と…… 。
まあ、今日は授業数もそんなに多くないし明日は祝日だから、今日を乗り越えられれば何とかなるだろう。
部活動は明日もあるけど、活動開始は9時だし、いつもよりゆっくりできるから大丈夫。
 
木曜日。祝日。朝。39.8℃。…!!! これは、流石に、ダメだ。部活は行けない。ごめんなさい。
インフルエンザだったらどうしよう。とりあえず、休日診療してくれる病院に行こう。
タクシーを呼ぶ。ぐったりしていて、とてもじゃないけど、電車と徒歩では行けない。
 
診察を待っている間も咳が止まらない。
ゲホッゴホッゲハッ
ぜぇぜぇ
すぅ〜…ゴッホゲッホ
 
酸素が足りない。熱で頭もぼーっとする。体が重くて自分を支えるのがしんどい。
 
お医者さんに診てもらう。
「咳が止まらないんですね。もらった薬も効かない。なるほど。熱もかなり高いですね。え〜と…そしたら、ちょっと、レントゲン撮りましょうか」
 
「あ〜これ、軽い肺炎ですね。見えますか?この少し白くなっている影の部分。これは肺炎です。免疫力、かなり下がっちゃってますね」
哀れみの目で見られている気がする。
 
肺炎って。おじいちゃんおばあちゃんがなるやつじゃん。
どんだけ免疫機能低下してるのよ私。
しかも、「軽い」肺炎って言われた。軽い? この辛さで?
いや、こちとら死にそうなんですが。
 
「軽い肺炎なので、入院の必要はないです。今日の分の薬は処方しておくので、明日、最初に行った病院へこのレントゲン写真を持って行ってください。肺炎だとわかってくれると思うので、そこでまた薬の処方をしてもらってくださいね」
 
ああ、そういうことか。入院しなくてもいい程度の、軽い肺炎。
 
薬が肺炎のものだと知った薬局のお姉さんに心配される。
「肋骨、折れないように気をつけてね」
そう、咳のしすぎで肋骨を骨折する人がいるのだ。
ただでさえ咳が止まらず酸素が足りなくて苦しいのに、さらに骨まで折れたら、もう、いっそ死んだほうがマシだと思う辛さだろう。想像するだに恐ろしい。上手に咳をしなければ。
 
処方された薬は劇的に効いた。今まで飲んでいた薬は何だったのかと思うくらい、きちんと熱が下がった。
ただ、咳は続く。多少マシにはなったけれど、相変わらず、ゴッホゴッホしている。
しかし、咳の頻度が減っただけでこんなにも楽になるとは。
しばらくの間、ゼェゼェする感じとゲホッという嫌な感じの咳は続いたけれど、やがて落ち着いた。
 
絶え間ない咳によって、ウエストが細くなった。
常に腹筋と背筋がフル稼働していたから。
ご飯が食べられないので体重も減った。
1週間で小さくなった。なんて不健康な痩せ方。なんという威力。
 
これは数年前の話。24歳だった私の肺炎体験記。
もう二度と、あの苦しみを味わいたくない。
今、新しいウイルスの肺炎が広がっている。特に20〜30代の若者を中心に広がっているらしい。
重症化している人は少ないと聞く。でも、「軽い肺炎」を甘く見てはいけない。
 
過度に恐れることはよくないのかもしれないけれど。適切に恐れて、しっかり予防したい。
咳が止まらない。酸素が足りない。
溺れそうになりながら永遠に泳ぎ続ける。
そんな苦しみを味わう人が、最小限であってほしい。
だから今日も、手を洗ってうがいをして、皆でこの状況を乗り切れますようにと願う。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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