メディアグランプリ

天狗はあなたの妄想エンジンで空を飛ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:渡邉たかね(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
突然ですが、天狗が空を飛ぶスピードをご存知ですか?
なんと、天狗は音速で空を飛ぶそうです。
この豆知識の仕入れ先は、私が学生時代から親しんでいる能楽の『善界(ぜかい)』という曲。
日本の国を傾けんと中国から悪の天狗が乗り込んでくるというお話なのですが、その天狗の登場するシーンでは、実際の演者はめちゃめちゃゆっくり舞台の上をめぐります。
何も知らなければ、とても音速で飛んでいるようには見えません。
けれど私が愛読していた解説本『能楽手帖』(著者:権藤芳一)には、こうありました。
『回っている独楽が静止して見えるように、フルスピードで飛んでいるものを、ゆっくりした動きで示すのも能の表現方法の一つ』
この情報が頭の片隅にあるだけで、ゆっくり歩いている舞台上の人物が、実は「戦闘機のパイロット並みのGを体に受けながら飛んでいる天狗」に見えてくるので不思議です。
 
能楽は中世に日本に生まれた、歌あり踊りあり芝居ありの、いわばミュージカルです。
能楽といえば、「能面のような顔」のお面とか、舞台上の人が動かないとか、難しそうとか、退屈とか、学校で見に行ったけど寝ちゃったー、とか。
だいたいそんなイメージで世の中に食わず嫌いされちゃってるなあと、愛好者としては残念な気持ちでいっぱいです。
ですので、今回、能楽は親しみやすいところもあるエンターテインメントのひとつだということを読者の方に知っていただければと思っています。
 
先ほどの天狗が出てくるお話があるように、能は能面をかぶったなかなか動かない女性ばかりが登場人物ではありません。
亡霊が出てくるのは定番ですが、他に鬼や龍神、仏様もでてきます。
ストーリーも多様で、夫婦愛に親子愛、友情、嫉妬、仕事における苦悩、別れや再会、そして、鬼vs人間のバトルや天狗vs仏様など。
ん? 仏様がバトル?
そうです、仏様は慈悲深いまなざしで座っておられるだけではありません。時には人間に害するものと果敢に戦う、超絶戦闘能力を持った存在として描かれています。
 
どうでしょう? 現代のエンターテインメントと、基本は同じだと思いませんか?
小説、映画、ドラマ、アニメ、ゲーム……日本のみならず、世界的に、エンターテインメントの基本のテーマは時代が変わっても同じです。
中世や江戸時代の人々も、現代の私たちと同じように親子の別れに涙し、天狗と仏様の戦いに興奮したのです。
 
けれども視覚情報が豊富なエンターテインメントに慣れた現代人には、能楽を、観たそのまま受け取ったのでは物足りません。
ここで現代人がやるべきことは、目の前の舞台に自分の持っている知識や経験を頭の中で視覚的に付け足しながら観るということです。
つまり、妄想力を駆使して能楽を観るのです。
舞台セットがほとんどないシンプルな能舞台は、妄想を邪魔するものが少ないとも言えます。自分流のイメージを盛り放題なのです。
 
例えばバトルものを観るときは、個人的にはSF映画や子供の頃観ていたアニメがとても参考になると思っています。
そこでもう一曲、バトルものをご紹介します。『田村』という曲です。
この曲の主人公は坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)という、平安時代の武人です。めちゃめちゃ強かったそうで、
死後は平安京の守護神として信仰の対象にもなりました。
この田村麻呂が帝に命じられて鈴鹿峠(現在の三重県)に巣食う悪魔退治に赴いたときのこと。
悪魔が真っ赤な鉄を降らせるとそれらが数千騎の軍勢となって襲ってきて、田村麻呂は大ピンチに!
と、突如味方の軍勢の虚空に千手観音が光輝く姿で現れます。
観音様は千の手にそれぞれ弓を持ち、放たれた矢は敵にことごとく当たり、あっという間に敵は滅んでしまいました。
 
――この情景、既視感がありませんか?
敵の想像を越えた強大さにひるむ主人公たち。
どうしよう、絶体絶命だ!
そこへ、諦めていた援軍が、大艦隊で現れる。または、封印されていた能力の突然の開花やら、友情など人間の思いが強力なパワーを生み出して、敵を倒すことができた。そして平和が訪れた。
 
この、SF映画やアニメのお約束ともいえる情景を、脳内で加工して能楽の舞台に当てはめてみるのです。
実際には能楽には派手な照明も音響もなく、小さな四角い能舞台に数人の演者がいるだけ。けれど妄想フィルターを通してみると、そこは敵味方の軍勢がひしめく戦場になり、大音響と光の洪水であふれかえります。
視覚的な情報をたくさん持っている分、中世の人たちよりも現代人はずっと刺激的なものを観ることができるのではないでしょうか。
 
ぜひ、能楽堂に一度足を運んでみてください。
そしてプログラムに載っている演目の解説を一読してみて、そのとき浮かんだイメージをふくらませて舞台を観てみてください。
天狗が空を飛ぶのも、ピンチの田村麻呂が救われるのも、あなたの妄想力にかかっています。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
▼大好評お申し込み受け付け中!『マーケティング・ライティング講座』 http://tenro-in.com/zemi/136634

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事