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文学YouTuberは、私のエナジードリンク


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森真由子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
女神が、舞い降りた。
お決まりの優雅な挨拶をしながら、彼女は右手でさらっと自身の髪を揺らした。
私は食い入るように彼女が映る画面を観ていた。
 
なぜ私は彼女をこんなにも観てしまうのだろうか。
彼女の動画を観ると元気が出てくる。
読書好き、本好きな人は既に知っているかもしれない。
私は気が付けば、文学YouTuberのベルさんの虜になっていた。
 
「ごきげんよう、ベルです。今日も本を読む文学YouTuberです」
彼女は冒頭にこの挨拶をして、ジャンルを問わず最近読んだ本や買った本の紹介をしていく。
たまに読者アンケートを行なって、再読する派? しない派? 等といった読書にまつわるテーマについて彼女のスタンスも含めて分かりやすく話をしてくれる。
 
目もくりんとしていて、肌も白くて滑らか。
声や話し方はアナンサーのように美しい。
チャンネル登録者数12.1万人。(2020年7月下旬現在)
見た目が可愛いから人気なだけだったりして……。最初はそんな風に思っていた。
そんな浅い考えしかなかった当時の私は、とても愚かだったと思う。
額が地面に着くくらい深くお詫びをしたい。
今は絶対にそんなことは思わない、私は彼女のファンになってしまったのだから。
 
YouTuberなんて悪ふざけのような無茶な企画をして収入を得ているだけでしょ。
若い人たちはそんな偏見は持っていないかもしれないが、まだそう思っている人もいるかもしれない。
実は私もそんな見方をしていた。テレビ番組のどっきり企画は観ていて嫌な気持ちなることが多いから、なるべくチャンネルを早く切り替えるタイプ。
 
でも、文学YouTuberのベルさんは違う。
そんなイメージは全くない。
こんな私でも楽しんで観れる。
いや、むしろ楽しむ以上に、溢れるほどの元気をくれる存在だ。
 
私は読書が好きで、読む本を切らすことは基本的にはない。
でも忙しさからなのか、心の不安定さからなのか、本にすら触れないほど読書から離れてしまう期間がたまにできたりする。
 
最近、仕事でリーダーを任されたプロジェクトの終わりがあまりにも見えなくて、ずっと重い石を持ち歩いてるような暗い気分だった。
頭の中は常にそのことでいっぱいで、読書をする心の余裕がなかった。
それでもどうにかストレスの解消をしたくて、活字を読むのではなく、比較的労力もなく受動的に観れるYouTubeを開いた。
 
どうやって彼女に辿り着いたかはもう覚えていないが、運命に吸い寄せられるように私は文学YouTuberの動画に辿り着いた。
最初はぼーっと眺めているだけだった。
それが徐々に自分の心臓に、体中に血液が巡るような感じがしてきた。
体がほかほかするほど、夢中で画面を見ていた。
 
最近読んだ小説の良さを彼女の言葉で、視聴者に伝わるような表現で説明していく。
どこが面白かったのか、読んでいてどんな感情を抱いたのか。
ときには期待していたほどではなかった本に当たってしまっても、その本のことは決して貶すことなく、彼女の想定と違っていた理由を的確に分析して伝えてくれる。
知性あふれる彼女だが、ときに見せる笑顔を見たり、何気ない失敗談を聞いたりして観ている側をほっとさせてくれる。
 
私の周りには読書が好きという友人はあまり多くない。
もしかすると隠しているだけなのかもしれないけれど、現状本の話で熱く語ることはそんなにない。
たまに私が読了後の溢れ出る感情を思わず語り出したりしてしまうと、みんな優しく聞いてくれた。それだけでもありがたかった。
でもどこか孤独だった。もっとこの好きという気持ちを誰かと共有したかった。
 
そんな分かり合えなさを感じていた頃、ベルさんが私の前に降臨した。
画面上でしか見たことがないが、目をキラキラして全身から本が好きということが伝わってくる。
 
あ、ここに仲間がいたんだ。
自分だけだと思っていたら、自分以外にも本が好きだと堂々と語れる人がいた。
長年会えていなかった気心の知れた懐かしい友人と再会したような気分だった。
 
一つ動画を見終わる頃には、棚やベッドの横に置き去りにしていた本に触れたくなってうずうずした。
彼らは、今まで私を待っていたかのようにしっかりとスタンバイをしていた。
私は迷わず、本を開き、最初のページを読み進めていけた。
 
文学YouTuberのベルさんは、私にとっての読書のエナジードリンクになった。
本は読みたい、でもちょっと疲れている。そんなときに彼女の動画を観ると元気が湧いてくる。
本は素晴らしい、読書って楽しいんだよ、と背中を押してもらえる。
 
本が好きな人はもちろん、本はそこまで好きではないという人も、ぜひ一度は彼女の動画を観てほしい。
もとから本が好きな人はきっともっと好きなるし、そうでなかった人もきっと何かを読みたくなるはず。
 
文学YouTuberのベルさんという女神のもと、私はこれからも読書という大海を渡っていこう。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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