メディアグランプリ

ヒーローになるために


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田真嗣(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
護身術を習い始めたのは3年前。友達と歌舞伎町で飲んでいた帰り。友達が5人の見ず知らずの若者に寄ってたかって殴られたのです。
ぼくはこれでも柔道有段者。武道を学んだ者なら、一度はかっこよく暴漢をやっつけてヒーローになりたい、と思うもの。
そんなヒーローになるチャンスが今まさに目に前に訪れたのです。ぼくは5人の暴漢をさっそうと投げ、友達を救い出すはずだった……。
 
しかし、実際にはぼくの手足はブルブル震え、友達を助けることなんかとてもできなかった。ぼくにできたのは土下座をして若者たちに許しを請うことくらい。なんとも情けない。なんのために柔道を習ってきたのでしょう。こんな思いは二度としたくない。そう思ったぼくは護身術を習おうと決心したのです。
 
まず色々な護身術をWebで調べました。しかし中々これ! というものには出会いません。そんなある日、街を歩いていると、こんなポスターに出くわしたのでした。
 
「イスラエル軍発祥の軍隊格闘術クラヴマガ。FBIでも採用。パニック状態を想定したトレーニング。動けるカラダと強いココロが手に入る」
 
イスラエル軍というのはなんか強そう。しかも昔からぼくはNASAとかFBIとかいう響きにはめっぽう弱い。歌舞伎町の一件でパニックになってしまって、手足ブルブルのぼく。パニック状態を想定したトレーニングとは、まさにうってつけ。ぼくはこのクラヴマガに入会することにしたのでした。
 
入会してみるとクラヴマガの会員は20代から30代と若くて格闘好き、体力自慢の男女が中心でした。その中で50歳手前のぼくは最年長の部類です。しかし柔道有段者のぼくにとって、護身術なんて楽勝と舐めていました。しかしそれはかなり甘い考えだと気づかされるのです。
 
ぼくのような入会して間もない練習生はまず2人一組になってパンチとキックの打ち込みからです。交代で、パンチやキックを出す側、受ける側を担当します。当然受ける側は防具やミットをつけて完全防備です。しかし防具やミットの上からでも相手は容赦なくパンチ、キックを繰り出してきます。何度か受けているとその衝撃で気持ち悪くなって、吐きそうになるほどです。
ぐっとこらえながら我慢して受けると、交代です。いよいよぼくがパンチ、キックを出す番に。今度はお返しとばかり力一杯パンチ、キックを繰り出します。しかしパンチの衝撃で自分の拳の皮はすぐに剥け、血が滲み、足は腫れあがる始末。息もあがり、頭はくらくら。元気で練習している他の練習生を横目に一人だけ休憩させてもらうことも一度や二度ではありませんでした。ヒーローになるはずが練習にもついていけない、ぼくは、とんだお荷物です。
 
それでもパンチ、キックの打ち込みくらいなら、しばらくすると馴れてきて、なんとか練習にもついていけるようになりました。
 
しかしもっと困ったのが護身の動きを覚える事。初心者は正面、側面、背後から突然首を絞められた場合の対処方法を習います。首絞めなんて柔道でも締め技があるので慣れたもの。楽勝と思いきや、そんなことはありません。護身は武道と違って、不意をつかれる事が前提。咄嗟にいかに反応できるかが勝負。この咄嗟の動きが、頭も身体も固いぼくには、全然できない。他の練習生はちょっと練習すると自然とやり方を覚えていきます。
一方、ぼくはいくら練習しても一向にできるようになりません。他の誰よりも下手なのは明らかです。しまいには坊主頭の強面インストラクターから
 
「そんなんじゃダメ! 何聞いてたの? ちょっと代わって!」
 
などと練習から外されてしまう始末。
 
ぼくの柔道の技術は全く役にたたない。あー情けない。ヒーローになりたい、なんて思わなければよかった。こんな無様な姿を晒すくらいなら消えてしまいたい。あまりにもできない自分に腹が立って、腹が立って、とうとう
 
「あー!!! なんなんだよ!!! 」
とジム中に響くくらいの大声で思わず叫んでしまいました。
なんとも恥ずかしい。ぼくってホントに馬鹿だ・・・・・・。
 
しかし次の瞬間、インストラクターも
「あー!!! なんなんだよ!!! 」」
とぼくの口調をまねて叫びます。
 
その様子がなんともおかしく、ジムの中にいる全員で爆笑。みっともない自分をさらけ出し、自分自身がそのみっともなさを認められた瞬間でした。そしてその日を境に、ぼくはインストラクターや他の練習生と話す機会が増えていきます。私は周りと会話をして、アドバイスを受けながら、少しずつですが、できなかった護身の動きもできるようになっていきました。今は中級レベルの技術の習得に邁進中です。
 
さて、こんなぼくですが、3年前のあの歌舞伎町に戻って、果たして友達を助け出せるのか? ヒーローになれるのか?
 
正直言って全く自信はありません。
 
しかし、ヒーローになるためには、練習を積む以前にもっと大事な事があると、このクラヴマガで教わったように思います。
新たに何か学ぶためには今までの実績とかプライドという心の鎧をまず脱ぐこと。これが重要なのだと。
 
ぼくは今回初めて護身術を学んだわけですが、最初は柔道有段者としての実績、プライドを中々脱ぎ捨てられなかった。しかし鎧を脱ぎ捨て、できない自分をさらけ出す。そのことで初めて学びのスタートラインに立つ事ができたのです。
 
ヒーローになるには、まず心の鎧を脱ぐ事。これが重要だと知ったのでした。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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