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会社ってさあ、学校みたいなもんじゃん。


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記事:黒木陽晴(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「会社は学校じゃねぇんだよぉっ!!!!」
「会社ってさあ、学校みたいなもんじゃん」
 
口調も趣旨も正反対の二つのセリフが、頭の中でリフレインする。
 
「会社は学校じゃねぇんだよぉっ!!!!」
いかにも芝居がかった調子で、PCのスピーカーから何度も何度も聴こえてきた。
 
ご存知の方もおられると思うが、「会社は学校じゃねぇんだよ」は今から2年ほど前、あるネットテレビ局が自社の社長の著書を下敷きにして制作、放映したドラマのタイトルである。
 
主人公のキメ台詞でもあるらしく、そのネットテレビ局を視聴していると番宣CMが流れるたびに「会社は学校じゃねぇんだよぉっ!」と怒鳴られるので、そのドラマを観ていなくてもすっかり覚えてしまうという次第。
 
何を隠そう、私はこのドラマを観ていないので、このセリフがどういうストーリーの中で誰に対してどういう気持ちで発せられたのか、言われた側もその後どう行動したのかなど、実はぜんぜん知らない。
 
無理やり想像すると、セリフの趣旨は「会社はビジネス上の成果を他人から厳しく求められるところだ。学校みたいにチャラチャラ遊んでお勉強はそこそこでよい、というわけにはいかないんだよ!」といったあたりで、ベンチャー企業を興した主人公が同僚なり部下なりに言い放った言葉なのではないだろうか。
 
そして、これを聞かされた側はどう思うのか。
 
ドラマの中の展開はわからないが、視聴者、特に社会人たる大人の受け止め方としては「まあ、確かに会社って学校みたいに仲良しこよしで通うところじゃないよね」あたりが妥当なところか。
 
しかし「会社は学校じゃねぇんだよぉっ!!!!」と怒鳴られて、私の心に浮かぶのは
 
「はて、会社って学校じゃなかったっけ?」
「ある意味、学校よりも学校っぽいところじゃないんだっけ?」
 
という思いなのである。
 
冒頭に挙げた二つ目のセリフ、
「会社ってさあ、学校みたいなもんじゃん」
 
これは私が新卒で入社した職場で1年を過ぎたころ、ある先輩社員が私に向けてつぶやくように言ったものだ。
 
私とその先輩は人事部で採用を担当していた。
 
面接で尋ねる質問の内容を検討しているときに、私が
「会社って何で学生時代に力を入れたことをしつこく訊くんですかね。それって仕事と関係なくないですか?」と生意気な口を聞くと、その先輩はちょっと乾いた笑みを含んで、
 
「でも会社ってさあ、学校みたいなもんじゃん」
と言ったのである。
 
「学校で上手くやってこれたヤツって会社でも上手くやれそうじゃん」
「そういう要素多いでしょ?」
 
言われてみると、思い当たる節はいろいろある。
 
ルールを守らなくてはならないこと。
目上の人間の命令には従わなくてはならないこと。
評価されること。
その評価をものさしにして能力を高めなければならないこと。
 
部活動で言うなら、
日々の練習にコツコツ取り組むこと。
後輩が先輩に従順であること。
チーム制のスポーツとかであれば、与えられたポジションに応じて役割をきっちりこなすこと。
 
挙げれば挙げるほど会社って学校みたいだ。
 
そして学校生活が決められた何年かで過ぎ去ってしまうのに比べ、会社生活は何十年に及ぶ。
 
昨今は転職が珍しくなくなったとはいえ、起業でもしない限りは、
 
上司の命令に従い、
先輩のアドバイスは素直に受け入れ、
自分の役割をそつなくこなし、
評価され、
その評価の求めるところに応じて能力を磨き続けなくてはならない、
 
そうした日々がずっと続くのだ。
 
加えて、日本の会社は学校で学んだことそのものにはほとんど期待していない。
 
言い換えると、学校で教えていることが会社での成果に結びつくとはあまり考えていない。
 
だから学校で何をどう学んだかは採用時にあまり問題とされない。
 
どうやって稼ぐかは、入社した会社がどう稼いでいるかを学べばいいのだし、もし新規のビジネスに取り組むとしても、組織で決まったことを分担すればいいのだから。
結局、組織の和を乱さない人柄であることが尊重される場だ。
 
だから、学校でやってきたのと同じように振る舞うことが会社でも求められる。
いや、成果の出し方すら組織に指示されるとしたら、学校以上に振る舞い方のほうこそが大切かもしれない。期間もずっと長いことだし。
 
そう考えると、これまでの会社の現実は、学校でうまく振る舞ってきた社員に学校っぽい日々を送らせて、でも「会社は学校じゃねぇ」から厳しく成果を出さないといけないという、いかにもちぐはぐな状況だったのではないか。
 
実際に、各社の採用活動について調べてみると「学生時代に力を入れたことを教えて下さい」と聞く会社ばかりだった。
 
組織をつつがなく維持することが自然と成果につながるようなビジネス環境であれば、学校っぽく会社を運営していくことで事足りた。
 
感染症が経済を揺るがす今後はそういうわけにもいかないだろう。
 
リフレインする二つのセリフが新たな現実に直面している。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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