メディアグランプリ

「何もしない」から産んでみる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤野(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
先日、部屋の大掃除をしていたら段ボールに押し込められた古い手帳が見つかった。
1冊1冊は大した厚さじゃないのに、年数が積み重なるとこれがなかなかのボリューム。
とっておくのもなぁ、と思って捨てることにしたのだが、ぱらぱらと中身をめくってみた。
 
マンスリー手帳なので大したことは書いてない。だけど、その日にあったイベントは書き留められていた。ほんの数年前だというのに、これが呆れるほどの過密スケジュール。
 
月曜(札幌出張)
火曜(飲み)
水曜(飲み)
木曜(飲み)
金曜(沖縄出張)
土曜(草津旅行)
日曜(草津旅行)
月曜(熊本出張)
 
札幌や沖縄に日帰りでポンポン出かけていたことがまず信じられないし、その間は全部飲み会を入れ、週末は旅行。一体、家事はいつやるつもりなんだと、どつきたくなるスケジュールだった。恐ろしいことに、この週が特別なわけじゃなくて、前後を見ても似たようなもの。日本全国をふらふらしながら、隙があれば飲んで、週末は友人たちとの予定を朝、昼、夕、晩と4件ほど掛け持ちしていることもあった。
 
バカなの?
思わずつぶやいたけど、この過去が今の自分を作っていることは否定できないのでとりあえず受け入れるしかない。
それにしても、当時の私は空いている時間は全て埋める方針で動いていたようだ。やりたいことはやってみたし、誘われたことも基本は断らなかった。
 
理由は今でもなんとなく覚えている。
「無駄」と思える時間を持ちたくなかったからだ。
実はその「無駄」が一番大切な時間だってことを知らされたのはつい先日。私がこの文章を書こうと思ったきっかけでもある。
 
少し前まで、何をするでもなく過ごすことは時間の無駄と感じていた。人に会う、もしくは美術展やフェスに行って何かしらの影響をもらえる時間こそが有意義だと思い込んでいた。
 
そんな私は先日、こんな言葉に出会った。
「何かを産み出すには、『何もしない』ことが一番だよ」
 
先日、仕事で本を1冊書き上げたことから、とある集まりに呼んでもらった。そこで「おぉ! よく本屋で見かける」という作家さんが何人か居て、自虐的に「書いてるとき、もうダメだと思ってだいたいの時間、床の上に転がってました」みたいな話をしたら「わかるっ」と強くうなずかれた。
 
まさかの同意。
 
その人たち曰く、
 
「能動的に何かを生み出す、というのはとんでもなくエネルギーが必要だ。外からは様々な影響があって、脳が喜ぶけど、そんな必須アミノ酸みたいな外的要因だけに頼っちゃだめだ。1冊分の言葉を絞り出す段階になってからは、脳が痛くて1日に何度も無心で床の上に転がる。だけど、その無の状態から生み出るものはたくさんある。その無の状態になるのが難しいんだよ。忙しがるのが好きな人たちは多いけど、『何もしない』から産み出せる練習はしたほうがいい」
 
私がまさに「無駄」と切り捨てていた「何もしないこと」からこそ産み出せる。それはとても意外な教えだった。 いろんな出来事を体験し吸収する、そんな刺激こそが人生には大事だと思っていたから。だけど、時に、それはあくまで受動的なのだと気付かされた。
 
外からもらう刺激はワクワクするし、自分の中の何かが反応しているようで心地よい。さらに言えば、すべて刺激を自分で生み出しているわけじゃないから正直楽チンでもある。泣ける映画をサプリメントにする、みたいな。精製された栄養を与えられて満足した気分になってしまう。
ごっつり脳は喜んでいるけど、実は与えられたもので満足しただけであって、自分で何かしたわけではない。この脳の喜び状態をきっかけに「産み」に転じられるのが一番だけど、染み込んだ影響をクールダウンさせるためには少し立ち止まってる時間が必要になる。だけど、刺激が与えられ続けていたら、その時間を上手く持つことができない。
 
例えば、お風呂に入っている時や散歩をしている時。
そんな時に、ふいに、アイディアがふってわくことがことはないだろうか? 何も考えずに窓の外の景色を眺めていたら、不思議と自分の中に埋まっていた記憶や経験が浮上してきて、悩みを解決するきっかけになったなんてことは?
 
湧いて来るアイディアは、別に本を書くためだけのものだけじゃない。
人間関係や仕事の悩み、クローゼットの整理をするためのアイディア、友人への誕生日プレゼントの案だったりと幅広い。どれだけ雑誌やネットを見てもパッとしなかった考えが、自分の中で産まれる瞬間がある。
 
産むというのはとても力がいる。
だからこそ、力を抜いて頭も体も無になった時、全ての力が「産む」ことに集中できるのかもしれない。
 
文章でも、夕飯のおかずでも、ヤバイぞアイディアがわかないという時こそ、ごろりと床に転がってみたり、ぼーっと散歩してみるのはどうだろうか。「何もない」状態をうまくコントロールできるようになれば、産むは易し状態も自由自在になるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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