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親が危篤の知らせを受けたらやっておくべき、たった1つのこと


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:安藤竜(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「母ちゃん、入院したらしいんですよ」
2ヶ月ぶりに行きつけの美容院に髪を切りに行き、あらかた切り終えたかな、というタイミングでの一言だった。
「え、どういうこと?」
気心のしれた美容師さんの突然の一言に、私は一瞬なにを言っているのか分からず混乱した。なにせ、ついさっきまで
「早くコロナおさまってほしいね。どこか遊びに行きたい」
なんていう、ある意味当たり障りのない会話しかしていなかったから。
たぶん彼は、ずっとこの会話をしたかったんだと思う。だけど、なかなか言い出せなくて、どうでもいい話を振り続けていたのだ。
でも、それは当たり前だと思う。
「今回は、少しバッサリいっちゃいます?」
なんて、セリフの後に続けるような話題じゃないし、そもそも美容師が客に振る会話じゃないと思う。だけど、彼はどうしても私の意見が欲しかったのだ。それで散髪の最後の最後、あまりにも不自然なタイミングでその話は始まった。
 
話の内容はこうだ。
今まで彼のお母さんが入院することは何度もあった。けど、いつも自分には心配かけたくないと、報告はいつも退院してからだった。なのに、今回はさすがにやばいかもしれないことで、お父さんが内緒で連絡をしてくれたというのだ。
でも、もう実家に帰らなくなって3年もたっていて、なんとなく帰りづらいし、コロナもあるし、そもそもお母さんから
「こんなことくらいで帰って来なくていいのに」
って言われたらと思うと、なんか行きづらい。そんな内容だった。
私は今年の3月に母を亡くしていたが、彼はそのことを知っていた。だから、どうしても意見が聞きたかったのだという。
 
私の場合はこうだった。
父はもう20年前に亡くなり、母は15年前くらいから寝たきりになっていた。
母の最後の5年は、ほとんど会話もできなくなっていて、正直なところ会いに行っても私の言葉がわかっているのかどうかすら怪しかった。だから、ただ一方的に自分の近況をラジオのパーソナリティよろしく20分ほど話せば、やることもなく帰るというのが私のお見舞いだった。なんの反応もない人に20分も話し続けるというのはなかなか大変なことで、良いことではないと思ってはいても、いつしかお見舞いに行く回数は減ってしまっていた。
母とまともな会話ができなくなった後、私も妹も結婚をし、妹は男の子を生んだ。
しかし、私も妹も結婚相手に母を会わせたことはなかった。お見舞いはそれぞれが1人で行くか、兄妹2人で行くのが当たり前だった。私も妹も、過去に両親の病気が原因で、恋人と別れたことがあった。だから、親の病気を承知で結婚してくれた人だから大丈夫と思っても、やっぱり会わせるのは怖かった。だから、
「どうせ会話もできない状態だから、会ってもしかたないよ」
と言って、いつもはぐらかして、なるべく会わせようとはしてこなかった。
 
しかし、そんな状況を変えるできごとが1年前に起こる。
病院から「母が肺炎になった」という連絡があったのだ。ずっと寝たきりではあったけど、母が死ぬかもしれないということはあまり考えたことがなかった。確かに入院して最初の数年はそんなことを思ったこともあったけど、それから15年も生き続けていたんだから。
でも、当たり前だけど、15年という月日は母の体を確実に弱らせていた。
やっぱり母が死ぬ前に、私は奥さんを、妹は夫と子供を見せてやらなくちゃいけないんじゃないか。そう思った私は、まだ怖がる妹を説得し、みんなで病院に母に会いに行くことにした。
「お母さん。報告が遅くなったけど、俺、結婚したよ」
「お母さん。私は結婚して、子供も生まれたよ。男の子だよ」
いつもどおり、わかってるんだかわかってないんだか、よくわからない感じではあったけど、連れてきてよかったな。そう思った。
 
その後、また母が肺炎になった。
今までは、怖くて受け入れられないと思っていた母の死。でも、その連絡を受けたときの私は意外と冷静だった。
母は「今夜が山」と言われた山をなんとか乗り越え、少し落ち着いたある日の夜。突然、容体が急変して亡くなった。
夜の2時。突然の電話で、そのことを聞いた私は
「お疲れさま。今まで生きてくれてありがとう、母さん」
自然と、そんな言葉をつぶやいていた。
 
正直なところ、母は私の奥さんや、妹の夫と子供を認識していたか疑わしい。
でも、私も妹も、この日があったから、母の死をすんなりと受け入れることができた。自分たちにできることはやったと思えた。だから、母の葬式は2人でしっかりと送ってあげることができた。だから、
「お母さんのためじゃなくていいから、自分が『あのとき、行っとけば良かったな』って思わないで済むように、会いに行くといいよ。子供ちゃんも一緒にね」
そう彼に伝えたとき、ちょうど最後のドライヤーが終わった。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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