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日本は、『第3次世界大戦』でも大敗していた


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記事:やまぐちりょう(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
今年の夏で、第2次世界大戦(太平洋戦争)の終戦から75年が経った。
戦争を直接知る人が少なくなり、
戦争の教訓を次世代に引き継いでいくことが徐々に難しくなっている。
 
かく言う私はというと、今年で28歳。
正直に言うと、戦争はどこか遠くの国の出来事、と感じている面もある。
 
小学生のころに夏休みの課題で祖父から戦時中の話を聞いたことや、
修学旅行で訪れた広島で被爆者の方の講演を聞いたことはあるものの、
それ以外は、学校の授業で学ぶ程度の知識しかなかった。
 
しかし、経営コンサルタントとして働くようになり、
戦争に関連する書籍を読んだり、映画を見たりすることが少し増えたように思う。
 
企業経営と戦争には、共通点が多々あるからだ。
企業にとって不可欠な”戦略”は、言うまでもなく戦争・戦(いくさ)から来た言葉だ。
 
経営者の必読書の一冊に、『孫氏の兵法』が良くあげられるのは、
“戦略”という言葉だけでなく、その方法論でも企業経営と戦争の間に共通点が多い証拠だろう。
 
企業にとって、戦略と双璧をなして重要な要素が、”組織”だ。
こちらも、戦時中の組織、つまり軍隊から学ぶべきことは多い。
戦時中の組織に関する書籍も様々世に出ているが、
経営者や経営コンサルタントが読むべき書籍として取り上げられるのが、
『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』という本だ。
 
この本では、太平洋戦争の重要局面で日本軍が選択した作戦と、作戦が失敗に至った過程を解説しつつ、作戦の選択や実行の背景にあった組織的な問題を紐解く。
 
書籍の中で示される、日本軍が抱えていた主な問題は以下のようなものだ。
・戦いの目的が明確に定められていなかった
・異端や偶然を排除する傾向にあった
・環境変化に対応できなかった
・論理的な判断ではなく、”空気”に流された判断をしていた
 
皆さんは、これらの問題を見て、あることに気づかないだろうか?
 
……
 
企業の存在意義や目的が定まっていない、
同質的な人々で構成されており、イノベーションが生まれにくい、
世界で次々に起こる変化に対応できていない、
「あの役員が始めた事業だからやめられない」と、空気に流されて適切な判断ができない……
 
戦争中に日本軍が抱えていた問題と、
昨今の日本企業が抱える問題は似通っているのだ。
この本が経営者やコンサルタントの必読書と言われる所以である。
 
問題が似通っている理由はいくつか考えられるが、
私は、太平洋戦争時の日本軍と、
最近の日本企業が置かれた状況が近しいことが原因ではないかと考えている。
 
太平洋戦争前の日本は、日清戦争、日露戦争と負け知らずだった。
さらに言えば、太平洋戦争が開戦した当初は真珠湾攻撃に始まり、快進撃を続けていたのだ。
これらの成功体験を積み重ねる中で形作られた組織が、アメリカ軍の反転攻勢を受けた際には弱みとなったのだ。
 
一方、日本企業についても同様のことが言える。
現在、日本で大企業と言われる企業及びその組織形態の多くは、
戦後に人口が増加し、経済発展する中で形作られてきた。
 
1980年代には、ジャパン・アズ・ナンバーワンと、
日本企業が世界からもてはやされる時期もあった。
 
しかし、バブル崩壊後、失われた20年と呼ばれる逆風が吹き荒れる中で、すっかり勢いを失ってしまった。
その間に、欧米企業には大きく水をあけられ、中国をはじめとした発展著しい国の企業に追い上げられた。
 
つまり、日本軍も、日本企業も、
成功体験を重ねる中で、「追い風の中で最も早く走ることができる」組織形態に最適化されたのだ。
追い風の恩恵を最大限に享受するために、帆を全開に張りながら航行してきた。
 
一方、ひとたび向かい風を受ければ、帆を畳んで向かい風をやり過ごさなければならない。
しかし、日本軍も、日本企業も、帆を広げたままで向かい風をもろに受けてしまったのだ。
 
仮に、第3次世界大戦が企業同士の戦いだとすれば、
日本は第3次世界大戦にも敗北してしまった、と言わざるを得ないだろう。
 
しかし、第2次世界大戦(太平洋戦争)の敗戦から、
日本が飛躍的な発展を遂げて世界有数の経済大国に上り詰めたように、
 
『第3次世界大戦』の敗戦から、
また、再び世界をリードする存在に返り咲く日がいつか来ると、信じたい。
 
そのために、改めて歴史に学ぶことが必要な時期に来ている。
終戦から75年が経ち、その記憶が社会全体から薄れつつある今だからこそ、
ぜひ、企業の発展に活かすという視点で、歴史に目を向け、教訓として学びを得たいものだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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