メディアグランプリ

世界の片隅から愛を叫ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イマムラカナコ(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「大好きだよ」
「ハイハイ。分かってるんで口に出さなくていいから」
 
娘が若干引きながら私を諭す。
私はウチの一人娘のことを、親バカ全開で愛している。
勿論人前では控えるが、たまに心の声が漏れてしまう。
 
娘は、高校3年生で受験生だ。
朝の課外、夕方の課外。それに塾に通っているため忙しい。
塾がある日は、家に帰ってくるのが23時前。
そこから晩ご飯を食べ、風呂に入り、残っている宿題を終わらせたら、眠るのは深夜だ。
毎朝眠たい目を擦りながら2階から降りてくる娘の体調が、いつも気にかかる。
 
こんな日常も、あと僅かかもしれない。
志望する大学に合格することができれば、娘とは離れ離れだ。
いつもの当たり前だった風景は、もう戻ってこないのだ。
そう思うだけで、じわっとこみ上げるものがある。
だめだ。
空の巣症候群まっしぐらだ。
こんなことでは、却って娘に心配をかけてしまう。
普段は軽口を叩いて私をからかうくせに、娘は、心配性で寂しがりの私を結構真剣に「心配」するのだ。
 
18年前。
私は、初めての子どもを授かった。
結婚前に卵巣を手術していたこともあり、妊娠できるか不安だった私は、とても嬉しかった。
2854グラム。50センチ。小さな体をこの腕に抱いたとき、心が震えた。
生まれてすぐおっぱいを飲む我が子を見た瞬間、何があってもこの子だけは守らねばならないという使命感が芽生えた。
無事に生まれてきてくれたこと。
こんなにも愛おしいと思えること。
存在だけで、私をここまで幸せにしてくれる娘に感謝しかなかった。
 
育児休業後、娘を1歳半で保育園に預けると、しばらく私は気が気ではなかった。
私と離れて泣いて過ごしてはいないだろうか?
初めの3日間は、迎えに行くと娘は泣きながら飛びついてきた。
だが4日目を過ぎる頃には、すっかり保育園に慣れ、そのうち古株の如く振る舞う姿を目の当たりにした。
娘の驚くべき順応性に感心する反面、ちょっと私は寂しかった。
 
小学生のとき、一時期いじめのターゲットになったときは心底心配し、毎晩涙を流す娘を抱きしめて眠りについた。
私の心配をよそに、いじめが止んだ後、何もなかったかのように、いじめた相手を受け入れすっかり仲良くなっていた娘。
拍子抜けするほどの娘のおおらかさに、なんとも複雑な思いがした。
 
中高一貫教育の中学を受験して入学し、もっと違う世界が見たいからと、そのまま高校へエスカレーター式に進むことをやめ、猛勉強して別の高校に入学したのも、全て娘が決めたことだった。
やりたいことや進みたい道を自ら選んでつかみ取っていく姿に、振り回されながらも頼もしさを感じた。
 
病気で手術した後、重いものが持てなくなった私とスーパーに買い物に行ったとき、娘は決まってお買い物かごを持ってくれる。
「大丈夫だよ」と言っても、「いいから」と言って聞かない。
私がお会計を済ませている間に、買ったものをマイバックに詰めて、それをまた車まで運んでくれるのだ。
 
あんなに小さかった子どもが、あっという間に大人への階段を駆け上がっていく。
その期間は、長いようでとても短い。
若芽がのびのびと育ち、茎や葉をつけて逞しくなり、そのうち花を咲かせる。
そんな成長過程が、大人である私にはとても眩しい。
 
人の成長は、経験という名の水、思考という名の養分、出会いという名の日光、そんなものによって促されていく。
どんな経験をするのか、どんなことを考えるのか、誰と出会うのか。
組み合わせは、何通りもある。
どんな人に成長していくのか、どんな花を咲かせるのか、可能性は無限にある。
 
親として子供を育てている立場の私も、日々成長していく娘にいろいろな事を教えられた。
娘がいなければ経験できなかったこと、感じられなかったことがたくさんある。いわば、娘に親として成長させてもらったと思う。
しかし親とは言っても、まだまだ未熟者。
いくつになろうとも、日々の様々な出来事や経験を通して、自分を成熟させようという気概は持ち続けたい。
 
もうすぐ親元を巣立っていく娘よ。
これから、理不尽なことや思いどおりにならないことに出会うかもしれない。
そんなとき、本当はどうにかしてあげたいけれど、あなたが自立した大人になるために、手を出さずに励ましを送ろうと思う。
そして悩み、苦しんだ経験が、より充実して生きるための糧となることを願いたい。
 
これから、たくさんの素晴らしい出会いが、あなたを豊かにしてくれるだろう。
あなたの名前にある「友」という字には、友人に恵まれ、愛されるような人になってほしい。そういう願いが込められているから。
 
自分で限界を決めてしまわないで、思いっきり人生を楽しんで。
一人で悩まないで。
自分を信じて。
真っ直ぐな心を持ったまま、堂々と前を向いて歩んでほしい。
 
あなたに心配されないように、負けないように、私ももっと成長していこうと思う。
分かっているでしょうが、いつまでもあなたは私の宝物。
あなたがどこにいようとも、ここから見守っているから。
いつまでも、あなたに愛を叫び続けるから。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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