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2020年をノーカウントにしたいあなたへ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:シマザキ キミコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「2020年、ノーカウントにしてくれないですかねぇ、私まだ今年何にもやっていないんですよ」
 
緊急事態宣言が明けて、3か月ちょっと。
9月半ばに、久しぶりに表参道の美容室に行った時、シャンプーを担当してくれた女性スタッフがこんな言葉を口にした。
 
「わかる、今年本当に何にもしてないよね」
私が勢いで答えると、
「今年社会人1年目なんですけど、ずっと憧れだったこのお店に就職できたのに、まだ何にもしてなくて、でも時間だけが過ぎていっちゃって……」
 
聞くと、コロナによって彼女は仕事面でもたくさんストレスを抱えているらしかった。
新人として、リピーターのお客さんの顔を覚えたいのに、みんなマスクをしているので顔を覚えるのも難しい。せめて自分のことを覚えてもらうために、とにかくたくさんお話をして印象付けなくてはならない。
成長したいのに、自粛期間に何もできずに入社後の数ヶ月が無駄に過ぎていったと嘆いている。
 
(あ、違うな。間違えた。私の「何にもしてない」と彼女のこの数ヶ月は意味が違うぞ……)
 
彼女はとにかく「焦っている」ということを言っていた。
 
「だって、自分が成長しようがしまいが来年の4月はやってきて、新しい人が入社したら嫌でも先輩になっちゃうんですよ?」
 
そりゃ、そうだ。
私だっておなじ立場だったらめっちゃ焦る気持ちでいっぱいになると思う。
自分が20代初めの頃、初めて大きな仕事の企画に参加させていただいた時のことを思い出していた。
 
元々不器用だった私は、割り振られた仕事をどうにかこうにかこなすのが精一杯で、あまりの出来の悪さに、いつプロジェクトから外されるか分かったものではないという有様だった。
一緒に仕事をしている先輩たちの仕事ぶりの素晴らしさを見ては、
(いますぐ達者に仕事ができるようになりたい! 明日にでも、あんな風になりたい!)
そう思っていた。
 
ある時、先輩と話していた流れで、その気持ちをそのままぶつけてみた。
すると、意外な言葉が返ってきた。
 
「あのね、その考え方は傲慢だよ。私たちが何年この仕事やってきたと思ってるの?」
 
私は、一瞬ポカンとした。
先輩たちに対して尊敬の気持ちもあったし、私の発言はむしろ向上心からのものだということは明白なのに……。
まさかのお叱りの言葉だった。
 
確かに、先輩のおっしゃることも一理ある。
先輩たちにも新人の時代があって、苦しい思いや出来なくて悔しい思いをしながら、それでも諦めずに10年以上もこの仕事を続けてきた末に手に入れた技術を、新人の私が1日でできるようになったら逆にイラっとするかもしれない。
 
その言葉は私に軽い平手打ちを食らわせたような衝撃だった。
 
なんだろう。
1日も早く成長したいという気持ちは間違っているのだろうか。
 
そんな出来事があってから、20年近く経って自分があの時の先輩と同じ年齢になってから聞いた新社会人の「焦る」という言葉に私が感じたのは……
 
「焦ったらいいと思いますよ。だって歳取ったらもう焦れないですもん、体力無くて」
 
本当は焦らなくていいよ、とか言うのがよろしいのかもしれない。
 
しかし、我が身を省みて、心からの言葉はやはり「焦りなよ」しか出てこない。
 
この自粛期間を通して、久しぶりにたっぷりとありあまる自由時間を手に入れた私は、買ってみたものの読破しきれていない資格の本や、中途半端になっている英会話の本を少しでも進めようと思っていた。
しかし、現実には幾つかのネット配信ドラマを見た程度で、何一つ勉強を進めるには至らず、再開された仕事と日常生活に流されていく自分を残念な気持ちで受け入れていた。
 
でも、焦る気持ちの中で、
もがきながら勉強したり、
進む方向性を自分なりに探したり、
悩みを因数分解して具体的に今やるべきことが何なのかを見出したりする力を得るのは、
その人にとって最高の財産になるはずだ。
 
現に、自粛期間でなくなってから、私は猛烈に勉強を再開し始めている。
それでも、新社会人だった頃のような勢いやスピードはないし、記憶力も集中力も視力も体力も、すべてがあの頃よりも劣っている。
唯一確実に勝っているのは、気持ちを切り替える能力と、開き直る能力だ。
 
あの時先輩から指摘を受けたことも、今ならこう返事するだろう。
 
「私が今すぐに仕事できるようになったら、プロジェクト全体の質が上がるんですよ?」
 
同じ力量を手に入れるのに、必ずしも10年も20年も時間をかける必要はない。これが、今の私の結論だ。
 
焦る気持ちを大切にして、今何を感じて何に悩んでいるのか、
新社会人1年目にあった、このレアな状況をただ記録してみるのはどうかと提案してみた。
 
これほどの規模の感染症が以前に起きたのは、スペイン風邪の時くらい。
ということで言えばおおよそ100年ぶりの出来事。
そして、こんなにネットが発達した中で緊急事態宣言が起きるというのは確実に人類初の出来事だ。
 
そんな中で、新社会人になった、あるいは大学一年生になった、その当事者にしか分かりえない悩みや、ストレスが確実に存在する。
その悩みを、他の世代の人たちは全く同じようには共有できないということも、大きなストレスのひとつではある。
 
いま、何を感じているのかを記録して、
数ヶ月後、あるいは数年後に読み返してみた時に、
自分の成長を感じるのか、
或いは、全く成長してないと感じるのか、
どちらにしても自分にとって意味のある記録にはなるのではないかと思う。
 
自分が先輩という立場になった時、新人の時に何を思い悩んでいたのかを思い返す材料としても役立てることができるかもしれない。
 
2020をノーカウントにしたい人は、きっとまだまだいっぱいいるだろう。
それでも、その中でどれだけこの状況を価値あるものに変えられるかは、気の持ちようと日々の小さな努力くらいしかない。
少しだけ神経が図太くなった、昔の若者として、心からエールを送りたい。
 
がんばれ、焦る若者!
 
 
 
 
***
 
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2020-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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