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鈍感になっていないだろうか?


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記事:堀 紗章子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
某有名ファストファッションブランドの紙袋が部屋に散乱している。
 
4文字の、コストパフォーマンスが抜群に良い、定番服が揃ったあのブランドだ。
 
仕事で着られる適当な服、どのブランドとも分からないような無地のスウェット、何着あっても困らないTシャツ。
 
スーパーで納豆や卵を買うくらい脳を使わずに日々のルーティーンのように、自然な流れで同じような服を買い、傷んだ服の代打を召喚すべく同じようなデザインばかりを選んでしまっていた。
 
20代半ばの女性としてなんだか残念なショッピングになっていないか?
 
ふとそんな事を考えてしまったが、そもそも服を買うのにいつからこんなに流れるように安くて無難なものばかりにお金を使い続けるようになったのだろうかと、考えてみた。
 
子供の時、物心がついて母親と買い物に出かけるようになった頃、何でもかんでも買えるわけではない状況で、ショッピングモールの子供服売り場で「あれが可愛い」「こっちが好き」とワクワクしながら服選びをしていた。
 
中学生くらいになれば、お小遣いをためて原宿や下北沢に安くても自分らしいと思えるお気に入りの服を探しに足を運んでいた。
 
お金がない不便が、服選びをより一層楽しくさせている部分もあったと思う。
と同時に私の価値観も、「服=貴重なもの」のようにあまり気軽に買えるものではない分、自分を表現する大事なアイテムの一部になっていたのだ。
 
ところが今、それなりにお金がある社会人という状況で、服に対してあまり慎重になっていないのが現状だ。
「ある程度の無難な服ならいつでも買える」という安心感によって、いつしか服1着1着に対するこだわりが薄らいでいってしまった。
更に会社員という没個性になりがちな立場が、無難な服の採集をより加速させ、単に消耗品として服を扱うことが増えていった。
 
もちろん、今もこだわりを持って選んだ服もあるし、大事に着たいと思う服もある。
けれど昔はすごく大事に、慎重に行っていた買い物が少し、軽いものになってしまった気がしてしまい切なさを感じる。
 
同じような事で言えば、連絡先の交換もずいぶん軽いものになってしまった。
 
平成後半から散々、「昔はRe;が増えていくのが嬉しかったな」などと懐かしむ声が聞こえていたように、メール文化、電話文化の時代にはなかった軽やかさが、今のS N S文化にはある。
 
先日も飲み屋で隣り合わせたグループとなんとなく連絡先を交換してしまった。
 
その場で顔を合わせて話したのなんてほんの数十分だ。
 
その程度の関係性の人に対しても、「L I N E教えてよ」と言えるし「交換してもいいか」と思ってしまうのは、S N S文化ならではな気がする。
 
少し前、メールが主流だっった頃もそこまで気負わずに連絡先を聞く事はできたし、やりとりも気軽にしていたと思う。
けれど連絡を断とうと思ったら、着信拒否や連絡先の削除など若干の手間がかかる。
 
ましてや昔、私よりもそこそこ世代が上の人たちはきっと連絡を取るなら自宅の電話で、その番号を聞いて電話をかけるというのなら相手の家族と会話する可能性も普通にあって、一度お互いの電話番号を知ってしまったら、それを消して無かったことにするなんてできなかったのだろう。
 
令和の今、気軽に連絡先を交換してしばらくやりとりをして、もう不要だと思ったら片手の指をスライドさせるだけで簡単に連絡を断つことができてしまう。
 
画面上で作られ画面上で消えていく関係性が山ほどあるだろう。
 
メールアドレスや電話番号は、交換するとしてもなんだか個人情報を相手に渡している感覚が、今でもある。
 
S N SのI Dとなると途端に安売りできてしまうのは不思議だ。
やはり簡単に相手との繋がりを切ることができてしまうからこそ、深く考えずに教えてしまうのだろう。
 
けれど、まるで消耗品として個人情報を扱っているような気さえしてくる。
 
簡単に消せるからいくらでも交換できる。自分のI Dだって変えればいいだけだからばらまいても平気。入れては消して、交換しては繋がりを切って。
 
別に今の一般的なS N Sでの連絡において、リスクが高いから気軽に交換するのをやめるべきだと言いたいわけではない。
 
むしろメールアドレスや電話番号を交換するよりも安全だと思うし、簡単でとにかく便利だ。
 
けれど某ブランドの服ばかりを買う私然り、消耗品として扱い出してしまうと感覚が薄まっていく気がしてならない。
 
服選びにときめく感覚、連絡先の交換に緊張する感覚、そうしたものが鈍感になっていくことが怖いと思う。
 
ただ、今更ファストファッションでの買い物やS N Sの便利さから離れる事はできない。
それは時代の流れとともにあるべき状況だと思うし、わざわざ不便な方法を選ぶ必要はないと思う。
 
けれど、鈍感になっていく事に気づかないまま過ごすのではなく、時々不便だった頃を思い出したり丁寧に買い物をしてみたりして、できるだけいつまでも新鮮な感覚を忘れずにいたいものだと思った。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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