【チャレンジ企画】「音声入力」で文章が作れるか!?
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Sakko(ライティング・ゼミ日曜コース)
最近、「音声入力」をいうワードをよく耳にするようになった。
「音声入力」とは、話した内容をコンピュータが自動的に文字に起こして、テキストデータにしてくれるというもの。
音声入力で文章を書いていて、それがとても便利だという話を、有名なブロガーや作家が語っているネット記事をここ最近立て続けに目にした。
確かに、最近の音声認識技術の進化は凄まじい。
我が家にも、スマートスピーカーのアレクサがいて、「アレクサ、今日の天気は?」と声をかけると、しっかりと聞き取って、今日の天気を教えてくれる。
もしかして、すごい効率化の技術なんじゃないの?
「音声入力」でサクッと文章が作れるなら、いつも机の上でうんうん唸りながら書く必要がなくなるんじゃないだろうか?
まるで魔法のようだ! 私の胸は高鳴った。
しかし、私には「音声入力」に苦い思い出があった。
10年くらい前、私は大量のプレゼン動画を文字お越しする業務を行っていたことがあった。10分くらいのスピーチでも1時間近くかかる。しゃべるスピードにタイピングが追い付かないし、ちょっと打ち間違えた間に、話はどんどん先に進んでしまう。その都度巻き戻し、こまめに一時停止するという作業を何度も繰り返し、テキストに起こしていった。
そんな時、音声入力アプリの存在を知り、使ってみたところ、まだまだ使える精度には程遠く、結局人力でやりきった。
だが、技術の進化は早い。
今や私の持っているiPhoneにも標準装備で、音声入力ボタンがついている。
簡単なメールの返信など、短文なら問題なく音声入力できることは知っていた。
たが、長文となれば、どうだろうか。
試しに、音声入力でどこまでいけるかチャレンジしてみることにした。
用意したのは、手持ちのiPhone1台だけ。
まずはどのくらい正確にテキストに変換できるか。
夏目漱石の「吾輩は猫である」を読んで試してみることにした。
以下は、私が音読し、iPhoneが文字にしたものだ。
結論から言うと、ほぼ完ぺき。
正確でないところは、( )内に正しい文章をキーボード入力したので、ご覧ください。
吾輩は猫である。名前はまだない。
どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャンニャン(ニャーニャー)泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生と言う人間中で一番当惑(獰悪)な種族であったそうだ。
この書生というのは時々われわれをつかまえて煮て食うという話である。しかしその当時は何と言う考えもなかったから別段恐ろしいと思わなかった。ただ彼の掌に乗(載)せられてすーっ(スー)と持ち上げられた時なん(何)だかふわふわ(フワフワ)した感じがあったばかりである。手のひら(掌)の上で少し落ち着いて女性の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。
以上。
音声認識の正確さに、ちょっと感動。
ニャンニャン、すーっなどは、私の発音が分かりにくかったからだろう。
「獰悪」は何度読んでも文字に起こせなかったので、近年一般的に使用しない言葉は苦手のようだ。
同音で漢字が異なるのも間違えやすい。
試しに、「箸を持つ」と「橋を持つ」を入力してみたところ、どちらも「箸を持つ」になった。イントネーションではなく、文章の前後を読み取って、漢字を変換しているようだ。
後、句読点やカッコ、改行を入れたい場合は、発声する必要があることがわかった。
「てん」
「まる」
「カッコ、カッコとじ」
「かいぎょう」
といった具合だ。
慣れるまで、ちょっと気持ち悪い。
逆に「改行」と音声入力したくても、改行されてしまうので、そうないと思うが「改行」と入力したい場合は、キーボード入力が必要だ。
この勢いで、この文章も音声入力で作成してみよう!
慣れてくると面白い。
散歩しながらでも、踊りながらでも、料理しながらでも、文章が作れる。
おしゃべりがどんどん文字情報になっていく。あっという間に原稿用紙が埋まっていく。
なんてすばらしい技術なんだ!
感動し、上機嫌になった私は、テキストデータになった文章を読んで、愕然とした。
内容が浅いし、わかりにくい。
それはそのはず。
頭に浮かんだことを、メモとして書き連ねただけなのだ。
もし、頭ですでに文章が完ぺきに出来上がっていて、それをアウトプットするだけなら、音声入力して誤字を少々直せば文章の出来上がり! となるだろう。
しかし、私の場合、まず書いて、その文章をみて修正し、また書き直すという工程を踏む。
文章を書き直しながら、さらに自分自身の思考を深める作業をしている。
その作業が、音声入力だけではできないのだ。
この文章も、7割ほど音声入力で文章を作成したが、そのあと編集、追記を何度も繰り返して完成させた。
手順はこんな感じ。
1. 大まかに話す項目を決める
2. 項目ごとに、ぺらぺら話し、音声入力する
3. 編集、修正する。
最終的には、音声入力で作成したものは2割程度、思いとエッセンスが残った感じだ。
全然残ってないじゃん! と思った方も多いだろう。
確かに思った以上に残っていない。
でも、徒然なるままに頭から流れ出てくる妄想をキャッチして文字として残しておくには、とても有益だった。
改めて「音声入力」のメリットを考えてみると、机の上に座らず、他のことをしながらでも、話すスピードと同じ速さで文字が入力されることだ。
はっきり発音すれば、打ち間違えも少ない。
画面をしっかりと見なくていいから、目に優しいかもしれない。
なにより、思いついたことをメモとして残しておくには、すごく良い。
ただ、わかってはいたけど、文章がうまくなるわけではない。
心のどこかで、ちょっぴり期待していた自分が恥ずかしい。
サクッと文章は作れるけど、机上でうんうん唸る時間は、私にはやっぱり必要だった。
***
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