京都といえば思い出すのは……
記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ラボ)
覚えていますか?修学旅行。
小中高での行先と、ホテルでのエピソード。
児童生徒の立場で行くと、それは楽しい行事。
しかし、仕事となるとなかなかつらい……。
大勢の生徒を引率する修学旅行は、その苦労も半端ではなく。京都といえば、その修学旅行のメッカである。
体育館に並べたパイプ椅子。新幹線の車内を再現。プラットフォームに見立てたビニール
テープのライン。40人一塊の6クラス240人が並ぶ。
「新幹線が来ました。はい、ドアが開きました」
「乗車!」
ストップウォッチで時間を計る。
「はい、新大阪を過ぎました。準備開始」
「京都駅です。降車!」
最初はイメージ訓練。次に荷物を持っての乗り降り訓練。一般客への迷惑を最小限に抑えるためには、必要不可欠だ。
ときどき新幹線の駅で、小規模の学校と出会う。50人ほどの生徒に、7人の教員がついていたりでうらやましい。240人に10人程度の教員、あと旅行会社の添乗員の増員をお願いして4名。しかし、旅行前の骨折で松葉づえ、旅行中の発熱等マンツーマンでつく生徒が必ずいるので、益々手薄になる人員。
大規模校の日常は、いつも教員不足。
不登校の生徒も多いので、その連絡も一仕事。
どの班に入りたいか、新幹線の座席は誰と一緒がいいか、班別研修ではどこにいきたいか、などなど、電話や家庭訪問で希望を聞く。
えっ? 不登校なら修学旅行には参加できないでしょう?
いえいえ、修学旅行日だけ1年のうちで出席率100%だったりする現実。それだけ、生徒が楽しみにしているので、何とか参加させてやりたいと教員は手を尽くすのだ。
早いときは旅行の1年前から「京都学」として、その歴史、地理、文化、食べ物を学び、学習を深めていく。資料も6人班に1冊などというのでは、手に取れない生徒が出てくるので、最低一人1冊は揃えようと努力し、年次計画で購入、公共図書館からも借りて数をそろえる、300冊近く。資料を揃え、管理するのも司書教諭という、図書館担当の私の仕事。学年主任をやっていると、旅行全般の計画も業者とやり取りしながら進め、集金に気をもみ……と、心配の種は尽きないが、それが日常の授業や部活動にプラスアルファの業務となる。
そこまで事前学習に努めても、なかなか生徒には浸透しない。
京都市内でのバスの中。
「三十三間堂には千手観音が納められていて」
「先生、なんか、中途半端やねぇ~」
「ん?」
「1010観音って、1000でいいよね」
「あのね、手が1000あって1000の手、千手観音なのよ」
三十三間堂内で、
「先生、よくこんなにほったよね! すごい」
「細かいところまで、彫刻してあるよね」
「違う違う! よくこんだけ土の中から掘ったよね」
「あの~、それって中国の兵馬俑と勘違いしてない?」
「あれ? おんなじじゃないの?」
とほほな会話は、エンドレス。
三条のホテルで、
「先生、大変です!」
真っ青な顔の男子生徒たち。
「どうしたの?」
「ぼくたち、何気なく部屋の下の通りを見ていたら、何か白い袋をやり取りしてる人を見た! 麻薬の取引現場かもしれない。まずい見られたことに気づかれて、狙われるかも」
「テレビの見過ぎだと思うけど」
詳しく話を聞くも、妄想に過ぎない可能性大。
「また、気になることがあったらおいで。ホテルのフロントにも伝えておくから」
夜になると、おなかが痛い、頭が痛い、熱が出た、幽霊が出たと次々に生徒がやってきて。
養護教諭と管理職と添乗員で病院へ連れて行ったり、それも一晩に複数名。
どたばたと、あたふたと寝る暇なく過ぎる時間。
昼間は、財布を無くした、バッグがない、さっきの見学先に忘れ物をしたなどなど。対応に追われて、見学どころではなく。
それでも、在学中の一大行事で、お金もかかっているからには、事故なく、思い出はたくさん作ってやらねばと粉骨砕身の教員たち。
修学旅行引率で、京都に行ったけど、何を見たかも定かではない。
天狼院が京都にも進出すると聞いている。
京都天狼院
お寺と勘違いして見学に来る生徒がいても、怒らないでくださいね、三浦さん。
店主と遭遇して、合掌する生徒がいたら、お説教でも聞かせていただくとありがたいです。
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