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ぐるぐる悩むじぶんと生きる

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記事: 星永俊太郎 (天狼院リーディングクラブ)
 
 
電話が苦手なんです。
 
特に、電話予約とかが苦手で、電話しなきゃって思ってるとお腹の調子が悪くなってトイレに行きたくなります。
 
世の中すべてがオンライン予約に対応したらいいのにってかなり真剣に思っています。奥さんも電話予約が苦手で、先日、スマホアプリからカラオケ予約ができるとあったので必要事項を記入して送信したら、すぐにメール応答があり、
 
「オンライン予約を廃止したので、電話予約をお願いします」
 
と書いてあったそうです。
 
で、結局、私が電話予約するはめになりました。
 
だいたい、電話予約しなきゃってときは、頭の中で相手との会話を何回もシミュレーションするんです。何パターンか考えて、こう相手が言ったらこう返す、みたいな練習を頭の中でするんですが、まあ、たいてい予想外のおきます。
 
先日、料理屋さんに持ち帰り弁当の電話をしたときも、そうでした。晩ごはん用に持ち帰り弁当を予約したくて、でも、夕方は道路が混むからちょっと早目の時間が良くて、他の買い物の時間もあるから、18時頃に受け取れるようにお願いして……と考えて電話したら、
 
「本日混み合っておりまして、20時以降のご予約となってしまいますがよろしいでしょうか?」
えーと、私のシミュレーションにはそのパターンはなかったな、うーん、どうしよう?
 
「すいません、一旦考えますので、またお電話します」
 
とりあえず電話を切った。出先から電話したので慌てて奥さんに電話して「20時以降って言われたけど、どうしようか?」ってな相談をして、結局、20時以降で予約をしたような出来事もありました。
 
こんな電話ごときで、ぐるぐる考えたり、お腹痛くなったり、そんな自分ってどうなんだろう? とずっと思ってました。
 
そんなときに手にとったのが「思わず考えちゃう(新潮社)」(ヨシタケシンスケ著)でした。
 
ヨシタケシンスケさんは絵本作家で「もうぬげない」「おしっこちょっぴりもれたろう」といった、日常のあるあるからスタートして、どんどん妄想をふくらませていくちびっ子の様子が微笑ましくって、くすっと笑ってしまう絵本を描かれている作家さんです。
 
この「思わず考えちゃう」は、絵本ではなく、ヨシタケシンスケさんが日々描き綴っているイラストに対して、このときこんなことがあった、や、こんなことを考えたってことを綴ったエッセイ集のようなものです。
 
さて、ヨシタケシンスケさん、いい具合にぐるぐる考えていらっしゃいます。
 
・スーパーに「自由にお使いください」って箱がおいてあったら、試されてる気がする。「さて? どんなおもしろい使い方するんだ?」って。人生だって、神様がこの身体自由に使ってねって与えられたものなんだよな。改めて、自由ってなんなんだろう?
 
・駅で「盗み撮りにご注意ください」ってのを見た時に、富士山の写真取るのも、そういう意味では盗撮なのかなあ。富士山に許可取ってないしなあ。でも富士山は文句言わないからいいんかなあ
 
なんて、いい大人が、というと失礼ですが、こんな具合に目にしたものに対して思ったこと、感じたこと、そしてそこから考えが飛んで別のことを考えて、といった内容が綴られています。
 
まさに、絵本の中で繰り広げられてる、ちびっ子たちの妄想の世界そのままが、ヨシタケシンスケさんの頭の中で繰り広げられています。
 
でも、これ、ヨシタケシンスケさんにとっては、「自分を楽しませるため」「すぐにダメだって思いがちな自分に対して、世の中も捨てたもんじゃないでしょ?」って思わせるための、精神衛生上必要なリハビリのようなものなんだそうです。だから、人に見せておもしろいと言われたときには驚いたし、たとえ絵の仕事がなくなったとしても、続けていくであろう習慣なんだそうです。
 
日常のできごとだけじゃなく、人生訓にまで発展しているものも何点もあります。
 
・なんでもできるようにするんじゃなくて、自分ができないことっていう短所をどう長所に変えるかみたいな部分が、案外、誰にとってもだいじなんじゃないかなと思って
・もし、そうなったら、そういうものをつくればいいだけだよ。っていうのがそれこそすごく大きなテーマとしてあるんですよね。
 
落ち込みやすく心配性な方だからこその、弱い人に寄り添った考え方ができるんだと思います。自分の弱い部分を潰すんじゃなく、すでにあるものを磨いて伸ばす生き方もあるし、未来のことを心配して「ああなったらどうしよう?」「こうなったらどうしよう?」と思い悩むんじゃなくて、「そうなったらそうなったで、仕方ないんだから、それに合わすしかないよね」って考え方をすることで、少しは楽に生きていける人もいるんじゃないかな、と書かれています。
 
持って生まれた自分の特性を否定しても始まらないし、ないものはないし、あるものでやっていくしかないんだから、ぐるぐる悩む性格なら、それこそヨシタケシンスケさんを見習って、それをネタにするくらいとことんぐるぐる悩んだらいいのかな。
 
そんなふうに、心をふっと軽くしてくれる一冊でした。
 
とりあえず、私も自分のぐるぐるを忘れずに記録することから始めよう。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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