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メディアグランプリ

博多不美人最強伝説 ~隔てられたお見合いパーティー会場~


小堺さま 博多不美人

記事:小堺ラム(ライティング・ラボ)

 

まさか、こんなカラクリになっているとは!!
今回のパーティー、30人対30人だと聞いていたのに、何か人数が少ないと思っていたんだよね。
こんな仕掛けがしてあったとは……。
意を決して参加した職場主催のお見合いパーティー会場のフロアで、私は愕然と肩を落としていた。

今回のお見合いパーティーは、東京に本社がある、福岡支店で働く私の会社の男性陣が企画したもので、東京本社や他の支店にも声をかけて、参加メンバーを集めていた。

久しぶりにこういうパーティーに参加するから、少し気後れするところもあったけど、いつも職場で着ている紺色のパンツスーツは脇に置いた。
そして、オフホワイトの柔らかい生地でできた、ワンピースを着て行った。
メイクも、自己流じゃちょっとイマイチだから、ここぞという時に投資はしないといけないよね!!
ってことで、3000円を投資して、メイクスタジオで40分もかけて、下地からポイントメイクまで、この秋流行のメイクにしてもらった。

メイクスタジオから出て、パーティー会場まで歩いていて、大きめの窓ガラスに映る自分の姿を見た。
いつもかろうじて塗ってるだけのメイクとは違うし、白いワンピースを着ているせいもあり、自分でもまんざらじゃないほど、今日の私は華やかだと思った。

けっこう、いけるんじゃないか?
そう思うと、今日のお見合いパーティーで私はいい戦跡を残すことができるのではないか、と秘かな闘志が心に湧いてくるのであった。

会場へ着き、受付を済ます。
やや緊張して、案内されたフロアで待機。
その際に、今日ともに戦う女性陣を一瞥し、自分がどのくらいの階層に位置づけされるのか、自然と脳内コンピューターが自動識別をしていた。

今日参加の女性たちは、私が言うのもなんだけど、全く垢抜けない。
華が無いのである。

これは、私、いけるんじゃないか……。

戦う前から私はほくそえんでいた。
この中なら、私、頭一つ出てる気がする、今日は余裕でいけそうだ。
そんなゆとりのある、不戦勝で次に進んだような気持ちになっていると、パーティーが始まった。

開始して、設置された円卓のテーブルに、何人ずつかの男女が集まっており、それぞれグループトークをしていた。
開始20分後、私は二人のぱっとしない男に挟まれてぼんやりとした会話をしながら、もっと他の人、なんかこう、話していて乙女心がくすぐられる人がいないかなあ~と周囲をうかがっていた。
そして、一つの異変に気が付いたのだ。なんか、男性の数が少ない。
さきほどまで、30人いたのに。
なんでだろうか。
気のせいかなあ。

そんな違和感を感じながら、両脇のパッとしない男から逃れるために「ちょっと失礼します」と言い、化粧直しをしにいくフリをして、フロアから一旦出た。
トイレは、1フロア上にしかない、ということだったので、階段をあがった。
女子トイレへ入ると、パウダーブースの鏡のところに、ものすごいオーラを放っている女性達が3人化粧を直しながら、何やら話していた。

「今日のパーティーちょっとイマイチだよね。男性陣、ガサツでおしゃれ感がないし」
彼女たちも、なにやらマッチングパーティーに参加している様子で、相手の男性陣に対して、不服そうな感じであった。
隣でちらちら観察していると、ふんわりとラベンダーに似た女らしい香りがしていた。
髪の毛も、カジュアルに巻いていたが、あれは一朝一夕でできるような感じではなく、毎朝しっかりやっているから、今日も自然にできましたよ~という、こなれ感があった。
肌ももっちりしていて、透き通るように白く、「えーー、私エステとか言ってないし」と言いながら、陰で、パックをしたり、こまめに水分を補給したり、継続した努力の結果だといえる透明感だった。
お目目もくりくり、それでいて、バカっぽい感じではなく、凛とした知的なまなざしも兼ね備えていた。
そして、博多で暮らしている私達のような、言い方は良いけれど「素朴」ななんとも垢抜けない感じと比べて、彼女たちには、都会的な洗練された香りがたちこめていた。

その人の持った感性、そして知的な内面は、話す以前に外面に現れるものだと私は思っている。
だから、このような女子女子した服装を彼女たちがしていたとしても、洗練された環境で積み重ねて得られる知性、洗練された雰囲気というものが、どこはかとなく漂っているのが同性の私には感じられた。

仕事においても、かなり社会的な責任もあり、知の部分も発揮せざるを得ない仕事をしているんじゃないかなあ、私はそう思い、この、華やかだけどクレバーな感覚が溢れ出ている彼女たちの魅力に引き寄せられるように、自然と声をかけてしまった。

「今日、お見合いパーティーか何かですか?」
すると、彼女たちはこう答えた。
「はい。そうなんですよ~。あ、私達東京からわざわざ来たんですけど。今回の支店の職場の男性陣が主催してくれたんだけど、ちょっと固くて野暮な感じで…」
いたずらっぽく微笑みながら、彼女たちは言った。

彼女たちの言う、「支店の男性陣」は、私の職場であった。
え??? どうなってんだろう。
彼女たちは私と同じお見合いパーティーに参加しているのか?
でも、会場にこんな洗練された女子はいなかったはず……。
頭がこんがらがってきたので、彼女たちに聞いたところ、私の職場が主催するお見合いパーティーに東京本社から申し込んで参加しているとのことだった。

え……彼女たちは私と同じパーティーに参加しているの?
でもこんな人達私の会場にはいなかったし
しかも、彼女たちのパーティー会場は、このトイレがある2階だという。
私は、1階の会場だった。

ここから私は、まるで殺人事件現場で謎を解く刑事のように、順を追って謎を紐解いていった。

私の職場で主催している今回のパーティー、男女がそれぞれ30人対30人だったはず。私は受付をして、1階の会場に案内された……。

ま、待てよ……。
ひょっとして、予め東京本社の彼女たちと私とは、会場が分けられている???

そんな疑惑が頭をよぎり、私はトイレから走り出て、2階のフロアでパーティーがあっていそうな会場のドアを片っ端から開けて行った。
会場の重い量開き戸の取っ手をつかみ、思いっきりドアを開くと、そこには、なんとも華やかで、洗練された、都会的でアッパーな雰囲気が漂っていた。

そんな彼女たちと対照的な、いささか残念な感じのする男性達は先ほど私がいたパーティー会場で顔を見た福岡支店の私の同僚たちだったのである…

ここで、私は、同じお見合いパーティーなのに、女性参加者は、東京支店とその他の支店の参加者、フロアを分けられているという、「からくり」を目の当たりにしたのであった。

ま、まさか……。
東京の女性達とパーティー会場さえ分けられているだなんて……。
キレイじゃない私は、相当なハンデがあることを自覚して一生懸命やってるのに、会場さえわけられているんじゃあ、どうしようもないなあ……。

イカれ、イカるんだ、小堺!!
ここで感情をバクハツさせないと!!!

しかし、どんなにあがいても湧いてくるはずであろう憤りが、一切湧いてこなかった。

「完敗」だって、本能的に悟ったからである。

美貌、そしてそれを継続する努力をしているであろう様子、中から滲み出る知性。
彼女たちは、もとから美しく賢かったかもしれない。
しかし、「東京」という都会の上昇志向の強いその環境が、更に努力を継続させ、圧倒的に彼女たちを美しくしていったのだと思う。

博多の田舎者の私も、東京の彼女たちも、おそらく幼稚園の頃は、皆天使のような女子だったと思う。
皆、一様にかわいかったのだ。
しかし、30年近く経過した今では、お見合いパーティー会場を秘密裏に分けられるほどの差がついていた。

これは現実なんだ。
だけど、僻みの感情は一切湧かなかった。
東京で暮らす彼女たちが必死に頑張ってきた結果、それがあの美しさと知性なんだと思う。

ここまでくると、お見合いパーティー会場を分けられているという衝撃的な事実すら、もうどうでもよくなっていた。
そして、あのように美しく知性もあり洗練された彼女たちをつくりあげた「東京」という都市で自分が暮らすことについて、ひそかに想像をはせていた。

週末の今日、外に出て、すれ違った女性が、洗練された美しさと充実した笑顔に輝きを見せていて、そのまなざしに知性が滲み出ているとしたら、その女性は「東京の女」かもしれない。
洗練された美しい女は、感度の高い「都市」が育てた一つの作品なのだと思う。

博多の女は美人が多いって巷では定説らしい。
しかし、私はその説に独り静かに異論を唱えたいと思う。
お見合いパーティーの会場を東京の女達と隔てられるというその結果をみればわかると思う。

だけど、同時に、これからどんどん美しく洗練されていく可能性と伸びシロを十分に孕んでいるのだ。
九州で、アジアで中心となり、どんどんと発展している街博多と一緒に、私も成長していこう。
そして、いつしか東京の女の上をいく、小気味よい女になろうと思う。
持ち前の素朴さは、そのままにして。

 

***
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2015-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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