悪口で人生を満たさないためにできること
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:北林万里奈(ライティング・ゼミ日曜コース)
胸に手を当てて、考えてほしいことがあります。
あなたは最近、誰かと悪口で盛り上がりましたか?
「はい」と答えた方に、私の物語をご紹介します。
あれは二年前、職場で可愛がっている後輩二人と談笑していた昼下がりのこと。
後輩の一人が、笑いながらこう発言しました。
「先輩って、悪口言ってるときが一番楽しそうですよね〜!」
ガーン。
愕然としました。
「そ、そんなことないって」返答できずにいると、もう一人の後輩がフォローにまわります。
「いやいや、僕、ホストやってたんで、そういうのわかっちゃうんですよ。悪口のとき口数が明らかに増えるから、そうなんだろうな〜って!」
天使のような笑みを浮かべる端正な顔の後輩が、悪魔のように見えました。
最初は認めたくなかったので、気にしないふりをしていたのです。
でも、誰かと愚痴を言い合うたびに、後輩の「楽しそうですよね〜!」という言葉が脳裏をよぎりました。
あのとき困り顔でフォローしていた子も、そういえば言葉に詰まっていたな。同じ意見だったのかな……。
もはや、疑心暗鬼になりかけていました。
悩んだ末、こう考えました。
26年間、「悪口言ってるときが一番楽しそうに見える」人生を送ってしまった。
これからは、悪口をなるべく言わずに、人生を楽しもうじゃないか!
まず、日記にその日の出来事や思ったことを素直に書いていきます。
今まで「せめて日記の世界の私はポジティブでいよう」と背伸びをしていたので、正直に感じたことを書いてみるようにしました。
すると、堰を切ったように悪口が飛び出してくるのです。
「病院の待ち時間が長すぎる」という日常の些細な出来事から、「◯◯君とは仕事がしたくない」という仕事の対人関係まで。
とにかく幅広く腹を立てていることに気がつきました。
そのうえ、良い出来事よりも悪い出来事を書いているときのほうが、筆が乗ってたくさん書けるのです。
ガーン。
己の性格の悪さに、再び愕然としました。
落ち着いて読み返してみると、私は思い込みが激しく、マイナスと感じたことをプラスに変換することが苦手で、何でも他人のせいにしてしまう癖があるとわかりました。
特に生活の中で長い時間を占める仕事で、その性格が顕著に出てしまうようでした。
たとえば、「◯◯君とは仕事がしたくない」理由は、「指示通りにしてくれないから」でした。「一定のクオリティに仕上げるのがプロとして当然だ」という強い確信があるので、自分の基準を満たさない相手のことを許せなくなってしまう、というわけです。
当時の私は、本心を伝えると相手を傷つけてしまうだろうと思い、他の同僚や先輩に「◯◯君は仕事ができない」と悪口を言ってしまっていたのでした。
私は悪口で人生を満たさない自分になるために、職場で二つのことを実践しました。
まず、自分のやり方がまずかったのではないか? と振り返ってみること。
私の場合、これくらい指示しなくても伝わるだろうと自分勝手にハードルを設定してしまっているケースが多いとわかりました。
指示通りにならない一因は、私のコミュニケーション能力不足だと素直に認めます。
次に、思ったことは周りに悪口や愚痴として伝えるのではなく、相手に伝えること。
「ここは私の意図とちょっと違っていて、どうすれば今後わかりやすくなるかな?」という具合です。
相手を尊重し、自分のやり方を変える意思を見せて、一緒に落とし所を探るようにすると、指示の回数が減るようになりました。
この例のように相手が同僚や後輩の場合は伝えやすいですが、相手が目上の人の場合、「伝える」難易度が上がる気がしています。
自分の発言や行動が仕事の評価につながるのではと感じ、発言をためらってしまうからです。実際、「成果を出してから文句を言え」という管理職の方に多く出会ってきました。
上長の前では常に「はい喜んで!」と言える社員であろうと努力してきた私は、やはり陰で「あんな無茶振りしてさあ……」と悪口を言ってしまっていました。
そんな私を見かねて、人事部の先輩が教えてくれたことがあります。
「言ってあげることが、その人や会社のためにもなるよ。相手が偉い人でも関係ないよ」
この考え方を知ってから、目上の人に対しても素直に感情を話すことができるようになりました。
「内容は分かりましたが、やったことのない分野なので難しそうだなと思います」
すると、上長も「それなら少しずつで大丈夫」と期待値を調整してくれるようになりました。
許せない気持ちを素直に書き出し、落ち着いて分析することで自分の思い込みや癖に気づく。
思い込みから一度離れて振り返ったうえで、相手に伝えてみる。
この繰り返しで、「悪口をなるべく言わずに人生を楽しむ」自分の理想像に、少しずつ近づけている気がします。
仕事上の対人関係が改善したことで、プライベートにも余裕が生まれるようになりました。
「悪口言ってるときが一番楽しそうですよね」
後輩にそう言われたとき、なんてことを言うんだ。と許せない気持ちになりました。
信頼していた後輩が、悪魔に変わった瞬間でした。
でも、誰も教えてくれなかったことを真正面から指摘してくれ、自分を見つめなおすきっかけというプレゼントをくれた。
やはり天使だったのだと今では思っています。
この物語が、悪口で盛り上がってしまったあなたへのプレゼントになることを願います。
***
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