色が付いた中学生時代
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:いはみどり(ライティング・ゼミ日曜コース)
わたしには小学生の頃の記憶がない。
もちろん、記憶喪失とか何かの病気とかそういうわけでは無いのだが、ただ単純に自分がどのようにして過ごしていたのか思い出すことができないのだ。
楽しくなかったわけではない、いじめられてもいなかったし友達もいた。毎日平和に過ごしていたのだが、その時のことを思い返すと自分なんだけど自分では無いような、不思議な感覚になることがある。まるで夢の中にいるような、宙に浮いているふわふわした記憶。
その感覚に気づいたのは1冊の本を読んでからだった。
幼い頃から一人っ子として育ったわたしは家の中では天下を取っていた。実家が自営業していたため家には常に両親がいた。「遊んで!」「お腹すいた!」「ねぇこれ見て!」自分の言いたい事は何でも伝えることができた。
しかし、これが小学校に上がるとどうだろう。
その時期特有の人見知りを発揮してしまい、自分の思っていることをうまく伝えることができなかった。なにか意見があっても言いたくない。なるべく目立ちたくない。手をあげて発表するなんて考えられない!
常に人に合わせて「なんでもいいよ」「どっちでもいいよ」「決めていいよ」
そんなわたしが自分の意見を言えるようになったのは、中学にあがってからだ。
年代的に自分の見た目を気にするようになり、メイクの研究をしたり初めて香水を買って学校につけて行ってみたり。そんな中「美人になりたい!」と思って買った1冊の本。タイトルは忘れてしまったが“美人の教科書”みたいな名前だったと思う。今考えると恥ずかしすぎるが、わたしはこの時読んだ本でたくさんの影響を受けた。
自分を大切にしなさい
常に背筋を伸ばしていなさい
ありがとうをたくさん言いなさい
その本の中で、こんなことが書いてあったのを覚えている。
“自分の思っていることは言葉にしなければ伝わらない”
当たり前のことだが、当時のわたしにはとても深く心に響いた。その本には気持ちを伝える練習方法も記載されており、わたしは少しずつそれを実践していった。
「人の良いと思ったことを伝える」
「食べたいものは系統だけでも伝える」
「みんなが悩んでいる時は、何でもいいから意見を言うとその場のヒーロー」
小さいことから実践することで、自分の気持ちを伝えることにも慣れていった。そんな中でも“自分の思っていることは言葉にしなければ伝わらない”この言葉だけは常に自分の中にあった。
本というのは香水と同じだと思う。
お気に入りの香水を自分にふりかけて、美人なお姉さん気分で背伸びした行動をとるように、気に入った本のワンフレーズを頭の中にふりかけて、なりたい自分への背中を押してくれる。
それからというもの、わたしは自分の気持ちを伝えるということに快感を覚えた。それもそのはず、実践しだしてから自分が自分でいられる感覚を取り戻すことが出来たのだ。今考えると、それくらいの時期からわたしの記憶は鮮明だ。それぞれの時期特有の悩みはあったものの、人間関係で悩んだことは記憶の中では無い。今も昔も毎日素敵な人に囲まれて生活が出来ていると思う。
そんな自分になれたのも1冊の本がきっかけだった。
思い返せば本を読むと同時にわたしは人生の転機をたくさん迎えた。
ホスピタリティの本を読みホテルの仕事が好きになり、観光業に興味を持った。「大好きな地元伊東の観光地を知ってもらいたい!」っと広報の本を読むことでマーケティングに興味を持った。「伊東のことを知ってもらうためにマーケティングをもっと勉強したい!」っとビジネス本を読み漁っていると行動力の本に出会い「東京でリアルなマーケティングを勉強してこよ」っと上京した。
東京に来てから1年。
今とても楽しい。
文化庁が2019年10月に発表した『国語に関する世論調査』で1ヵ月に読む本の冊数の統計をとったところ読まない人が47.3%、2冊以下の人が37.6%と、約80%以上の人が本を読んでいないことがわかった。
もちろん文章で読むのが得意な人もいれば、動画の方が頭に入る人もいると思う。
しかし、学校の朝読書以来あまり本に触ったことがないという人は自分が興味のある分野の1冊だけでも良いから自分のお気に入りの本を見つけてみて欲しい。仕事でも趣味でも恋愛でも、もちろん小説でも良いと思う。それで少しでもあなたの見てる世界の色付きが鮮やかに変わったら嬉しいな。
“自分の思っていることは言葉にしなければ伝わらない”
この言葉を胸に今日もわたしは、たくさんの感謝を伝えていきたい。
***
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