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メディアグランプリ

私を、紡ぐ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鳥井 春菜(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
すべての準備が終わった夜更け。
お風呂に入って髪を乾かし、歯磨きも終えて、コップ一杯の麦茶をもってテーブルにつく。
 
「今日は、書かなきゃ」
 
そう思って、私は日記帳を開く。まるで使命を受けたみたいに、書かなきゃ、と思う。それぐらい、日記を書くことはいつしか私にとって必要なことになっていた。
 
「日記」というものは、三日坊主の代名詞ではなかろうか。
続けようと思って新しい手帳を買ってみても、たいてい最初の数ページで終わってしまう。私自身もそんな経験を何度もして、ようやくそうなってしまうわけを知った。
トリガーは、「恋」だった。私が日記を書き続けられるようになったのは、小学生高学年の頃だ。恋する少女は、悩んだり、嬉しかったり、ドキドキしたり、不安になったり。心は忙しくて、そうした気持ちの揺れや高まりを私は日記に書き綴るようになった。するとどうだろう、今まで書きかけのノートを増やしてばかりいたのに、自然と日記が続くようになった。
 
きっとその時、私の中で「日記」の概念が少し変わったのだ。
それまでの日記は、一日の出来事をつらつらと書き連ねたものだった。とどのつまり、ただの記録で「今日はあれとこれを書かなきゃ……」などと考え始めると面倒臭くて到底続くものではない。
だけど、恋愛について書き始めると、それはもはや事実の羅列ではなくて感情を吐き出すことだった。小さなことで嬉しくなったり、本当はこうしたかったのにと後悔したり。自分の中に湧き上がった見知らぬ感情を文字にして吐き出すことは、いつしか私の新陳代謝の方法になっていた。ぐるぐる、ぐちゃぐちゃ回っている自分の中の感情を、そのままごろっと吐き出して、やっと少し客観的になって考えて、どうすればいいのか導き出せるようになる。老廃物を身体の外に出して、新しい自分へと塗り替わっていく作業だ。
周知のことかもしれないのだけど、「日記」とはただ事実を記録するものではなく、自分の内面を吐き出す場所なのだと、そのときやっと気がついた。
それからだ。10年が過ぎても、私は日記を書き続けている。
 
とは言え、白状すれば、毎日欠かさず日記を付けているわけではない。
「日記」を感情を綴るものとするならば、そう毎日書き綴る必要はないのだ。日記を書くのは年に数回のこともあれば、毎月必ず手帳を開くということもある。だけど、どんなに間があいても私はずっと「日記を書いている」という感覚をもっているし、これから先も死ぬまで書き続けていくと思う。
 
日記を書くタイミングは、不思議と天啓のように舞い降りてくる。
嬉しいことがあったときや何かに感動したときは、「このことを書き残しておきたい!」と強く思うし、苦しいときや何かに迷っているときはフツフツと湧き上がってくる感情を「あぁー! そろそろ吐き出さなきゃ!」と思ったりする。
そしたら私は静かな時間を作って、白いページを開く。誰もいない空間で、自分の本音を聞いて、語り合う。それは私にとって、言ってみれば一つの神聖な儀式に近い。言葉を連ねて、少しずつ本当の気持ちに近づいて、思う存分ペンを走らせた後には不意にどうしたいのかが分かるのだ。日記を書き終えると、いつも心を優しくゆすがれたような気持ちになる。今までの感情は洗い流されて、後には、決心とか意志とかちょっとした満足感が残っている。
 
誰かが汗を流してリフレッシュするように、誰かが美味しいものを食べて発散するように、私は日記を書いて自分を整える。だけど、日記のいいところは、後に残るところだと思う。忘れた頃に、あの時の気持ちを覗きに行くことができる。昔の日記を読み返して「なんて世間知らずだったんだろう」と恥ずかしくなることもあるし、恋人と付き合い始めの日記に小さなことに感動して嬉しくなっている自分を見つけて今ある幸せを大切にしようと思ったりする。思い悩み、迷い、だけど決意表明をしながら進んでいく日記には、確かに今につながる軌跡を感じる。
日記は、今あるすべてが自分を裏切らないことを教えてくれる。嬉しいことも、悲しいことも、全部自分になっていく。私は何年もの間、自分の気持ちを綴り、振り返りながらそのことを学習してきた。あの日の私がいるから、今の私がいて、今の私もきっと未来へつながっていく、そんなふうに過去を確かめながら思える。
 
だからなのか、日記を書くことは、自分を作っていく作業のようでもある。
綴ることはいつでも本心で、一生懸命喜んだり悲しんだりしながらその時を生きている。そういう自分の姿を日々に流されるのではなく、文章にして自分の中でおさらいすることは、実際、私の糧となり血肉になっている。だから、私にとって日記を書くことは、「神聖な儀式」なのかもしれない。それは、自分という人間を紡いでいくこと。曖昧だった輪郭線をキレイな線に引き直し、つなぎながら自分を描いているのかもしれない。書くことで、私は意志を固めて自分の形を認識する。
 
機を織るように、私は今日も日記を書く。
私は自分の人生を生きているのに、日記は一人の人間のストーリーを写していて、時々、日記の中の主人公として自分が生きているような気持ちにもなる。人は人生で一冊は本を書けるというけれど、私はまさにその一冊を丁寧に時間をかけて書き続けているのかもしれない。自分を見つめ、紡ぎ、作っていくような感覚に、私は日記を手放せない。
 
もし人生を、練り込み、編み上げ、じっくりコトコト仕上げたいのなら、あなたも日記を書いてみるといいかもしない。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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