メディアグランプリ

料理は断捨離である。

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記事:ふるはしゆうこ(リーディング&ライティングゼミ)
 
 
私は結婚するまで、家に「包丁」というものがなかった。
貧乏だったのではない。料理を全くしなかったのだ。
 
どういう食生活かというと、朝は菓子パンを職場で食べ、お昼は先輩とランチに行き、夜はコンビニのお弁当かお酒を飲んで帰る。包丁はおろか、炊飯器の登場回数も少なく、調味料に至っては、コンビニに売っている、人差し指ほどの醤油のボトルが1年で使い切ることがないくらいの、自炊レベルだ。
 
そんな私が結婚し、ようやく重い腰を上げようか、と思ったが、そんなに人は簡単には変わるわけがない。夫も、私の独身時代とほぼ同じ食生活に引き込まれていった。
 
そしてやっと、包丁を手にしたのが、子供が生まれてからだった。
育児の本を読み、見よう見まねで、離乳食を作った。娘が食べない。捨てる。作る、捨てる。それが何度も繰り返されるのだ。そもそも、料理の経験値が少ないため心折れるのも早かった。
 
保育園に通い始めたすぐ、娘の初めての遠足があった。もちろん弁当持参だ。お弁当なんて自分で作ったことなんてない。私の思い出にあるお弁当は母が作った、一面茶色のお弁当しかない。ああ、どうしよう。
お料理アプリをみても、彩りきれいな、いわゆる「キャラ弁」が並ぶ。遠足1週間前からどうしようどうしようと、仕事も手につかない。
苦肉の策で、市販のミートボールと、ポテトサラダと、卵焼きとおにぎりのお弁当を作ったが、またもや娘の胃の中に入ることはなく、泣く泣く自分で食べた。
そんなことから数年も経っているが、未だに料理への苦手意識は克服できないのだ。
 
私が幼少の頃、母は自宅で洋裁の仕事をしていた。祖父と同居していたので、仕事の傍、祖父の食事も朝昼晩用意をしていた。
いま、自分が親になって、母の大変さは容易に想像がつくが、その当時は、やれおかずが一品、なんでこんなご飯なの?と母に食ってかかった思い出がある。今思えば、「手伝え!」と思春期の私に一喝してやりたい。
 
そんな「料理」に対して、苦手というかできれば一切関わりたくない私だが、本屋で一冊の本が目に止まった。
料理研究家の土井先生の「一汁一菜という提案」という本だ。
 
「土井先生、いいの?おかず、なくていいの?」
藁にもすがる思い、というと大げさだが「おかずをたくさんつくらなくていい」という、私の勝手な解釈から、この本を手に取った。
 
料理は手を抜いていいんだよ,というのではなく,和食の在り方・起源を考えさせられる本だった。ハレとケを区別し,日常はみそ汁中心の簡素な食事として,ケの日に旬のごちそうを添えることで日常は豊かになる。とのこと。
 
確かに、今の私の食生活は、ハレとケの境目がない。食べたい時に回る寿司を食べたり、ハンバーグを食べに言ったり、普通の食事がすでに「ご馳走」なのだ。
外食続きで、脂質の多いものばかり食べていると、なんだか身体が重く感じるし、顔の艶も悪くなる。自分で料理を作るとなると、野菜を多めに入れたり、油を控えめにしたり、私や家族の身体の健康のことを考えて調理をする。
 
料理を作ってもらえる人は、愛されている。自分で自分の食事を作ることは、自分で自分を愛することになるのだ。そのための、一汁一菜。
 
私は、包丁すら持っていなかったのに、子どもが生まれてから急に立派な母親になろうと、『ちゃんとしないといけない』と思い、栄養のあるおかずを何品も用意しようとしていた。でも、それができずにずっと苦しんでいたが、土井先生は「一汁一菜で、もうすでにちゃんとしている」と語っている。
 
そうか。
そう思うと、私も、母親にちゃんと愛されて育ったのだ。母も、祖父の面倒と、仕事と忙しい中でも、ちゃんとご飯を作ってくれていた。そして、母親になった私は、下手くそながらも、子供のために料理をしている。おかずが一品しかない時もあるが、それでいいのだ。なんだろう、安堵、というのか、これでいい、自分にバッテンをつけなくてもいい。ちょっと自信が戻って来た。
 
「心や時間に余裕がある時におかずを増やせばいいよ、ご飯を作らなきゃと悩んでストレスになるならご飯に汁物で充分。そんな日があっていいんだよ。大丈夫!」と土井先生の優しい関西の言葉で言われているような気がした。
 
一汁一菜は手抜でいい、ということではなく、品数が少なくても手間をかけ丁寧に作るということ。季節の旬を楽しみ、そして五感を集中して味わうこと。
 
最近、旬を意識したことはあっただろうか。子供たちに、季節の旬の味を伝えてあげられているだろうか。
本の中にあるお味噌汁の写真も、春夏秋冬の美味しい野菜が、こんなに入れてもいいの?こんなものもありなの?という新しい発見もあり、味噌汁の具の既成概念を覆した。お味噌汁の具で、子供たちに季節の旬を伝えていけばいいのだ。
 
シンプルな一汁一菜は、断捨離やお片付けに通じるものがあるように思う。
自分のいる空間が整うと自己肯定感が増す、と言われるように、日々の食事も、コンビニスイーツやレトルトカレー、カップラーメンで甘みや添加物をたくさん取るのではなく、無駄なものを省き、旬のものを丁寧に、簡単に美味しくいただく。身体も心も整うのではないだろうか。
 
毎日の食事を考えるのに、ため息をついているお母さんは多いだろう。私もその1人だ。ふだんの食事はケの食事、ごちそうでなくていい、特別美味しくなくていい、安心できる食事であれば、それでいいのだ。
土井先生が言っているのだから、大丈夫。
さあ、美味しい味噌汁をつくりましょう。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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