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メディアグランプリ

忘年会のストーリーテラー達


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記事:廣田夏(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
12月になると忘年会が多く開催される。僕はこの忘年会が大好きだ。なぜなら老若男女、色々な人のその年にあった苦労話が聞けるからだ。
「今年はどんな1年だった?」
僕が忘年会で多用する質問だ。この質問をするだけで多くの人はただの酔っ払いからストーリーテラーに早変わりする。
 
忘年会で聞く苦労話は当事者から聞く最高のドキュメンタリーだと僕は思っている。
そんな良質なドキュメンタリーを仕入れる忘年会の中でも毎年一番楽しみにしているのが大学時代の友人との忘年会だ。僕たちは工学部出身なので様々な業界でエンジニアや研究員として働いている。IT業界に進んだ友人もいるし、家電業界に進んだ友人もいる。
そんな友人達の中から今回は一人のストーリーテラーを紹介する。角田君だ。彼は大手自動車メーカーで開発系のエンジニアとして働いている。その彼の話は毎年聞いていてとても面白い。
 
皆さん自動車メーカーで働いていると聞いてどんなイメージがあるだろうか?
「きれいなオフィスで働いている感じ!」とか「CMで見ている感じからなんかカッコいい感じ!」といったイメージではないだろうか? 残念ながらどちらも間違いだ。
 
まず勤務地だが自動車メーカーに限らずエンジニアはITエンジニアを除き都市部で働くことはほぼ無い。大抵は都市部から離れた工場地帯で働いている。
(毎年この友人たちとの忘年会では「一度でいいから東京の品川や大阪の淀屋橋のオフィスで働いてみたい!」という愚痴が出る)
角田君も例外ではなく電車も通っていない工場地帯に配属され入社して早々に社割で通勤用の車を買っていた。
 
仕事内容も泥臭い仕事の連続である。特に自動車は約3万個の部品から構成される工業製品なので他の工業製品とは比べ物にならないくらい作るのが大変なのだ。
自動車の製造はデパ地下で売られているケーキに似ている。完成した姿はとてもカッコよかったり美しかったりするが、完成までに材料の仕入れの調整から材料の保管、製造に正確さが求められる。
 
そんな自動車メーカーに勤める角田君が話す苦労話のなかで数年前に話してくれた内容が未だに記憶に残っている。当時彼は他の会社から購入する部品の納期や品質を管理する部署で働いていた。
ある朝、いつも通りに出社したところ上司に呼び出されこう質問されたらしい。
「突然だけどヨーロッパかアメリカならどっちに出張に行きたい?」
一瞬彼は喜んだ。現地の開発拠点に行けると思ったからだ。しかし次の上司の一言で彼は青ざめた。
「実は日本から既に出荷して陸揚げされている車1200台で電気系統の不具合が見つかったんだ。ちょっと現地に飛んで対応してくれ」
それを言われたのが水曜日。その週の日曜に出る飛行機で現地入りした。
空港から車が陸揚げされている港まで車で数時間かけて移動する。そして彼は絶望した。港にキレイに並ぶ1300台の車が目に入ってきたからだ。これからこの1台1台のドアを開けて中に入りハンドル近くにある蓋を外して修理してかないといけない。毎日ひたすら繰り返す単調作業。しかも新車のために丁寧に仕事を行わなければならない。
初めての海外出張だったが都市部から離れた港だったので、特に観光が出来るわけでなく週末もホテルにこもりっきりだったらしい。
「それは大変だったな」と僕が言うと彼はこう答えた。
「まあ仕事は大変だけど、自分が開発に関わった車が走っているのを見ると嬉しくなるよ。あとこうやって話のネタになるしな」
 
その時彼が話してくれた車を街で見るたびにこの話を思い出してしまう。そしてこんな苦労話は車に限った話ではない。普段何気なく使っている洗濯機、冷蔵庫、テレビ、ノートパソコンなどもこんな風に様々な困難を乗り越え開発されて僕たちの手に届くのだ。皆さんも時々で良いので開発に関わっている人のことを思ってあげてほしい。
 
多くのストーリーテラーと会える今年の忘年会は残念ながらオンライン開催になりそうだ。一番の心配ごとはオンライン開催だと自宅なのでついつい飲みすぎてしまうことだ。飲みすぎてしまうこと自体を心配しているのではない。飲みすぎてしまうことによって、せっかく聞いた良質なドキュメンタリーを忘れたり、寝落ちしたりして話を聞き逃してしまうのではないかと心配している。
今年はみんなどんな1年を過ごしたのだろうか? 冬休み、彼らからどんなドキュメンタリーが聞けるか楽しみにしている。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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