メディアグランプリ

少し先の未来を生きる自分に、何度も手に取ってほしい本


*この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森真由子(リーディング・ライティング講座)
 
 
ポキッ。
自分の中から情けない音がした。
どうして自分はいつもこうなのだろう。
 
大学を卒業後、会社員として数年働き、若手だった立場から徐々に中堅になりつつあるような中途半端な時期に差し掛かっていた。
私は今やっている仕事以外にやってみたいことがあり、ちょうど親にそのことを話したタイミングだった。
本当は応援してほしかったのだけれど、想いとは裏腹に、彼らは猛反対した。無理もない、仕事も友人も恋人も、何もかも捨ててやろうとしていたことだったから。
それを分かった上で一歩を踏み出そうとしていたのに、準備をしていたつもりだったのに、親の反対だけで私の気持ちはいとも簡単にぽっきりと折れてしまった。
そもそも何をしたかったのか分からなくなってしまったくらい、目の前が真っ暗で身動きが取れなくなっていた。
 
こんな自分がとても情けなくて、悔して、だけど動けなくて。
とにかく全てから逃げ出したくなってしまっていた。
一方で、片側には冷静な自分が存在していて、どうにかしなければいけないという危機感はどこかに持っていた。
そんなときに、以前読んだ本のことを思い出した。
今の自分を見たら、必ず?咤するであろうあの人の本を思い浮かべた。
 
元ボクサーで、大学にいけず独学で建築を学び、今では世界的に有名なあの建築家を知っているだろうか。
彼の名は、安藤忠雄さん。
建築家にしては異例の経歴を持ちながらも、第一線で活躍し続けている。
そんな彼の人生と強い想いが詰まった本、『仕事をつくる 私の履歴書』(日本経済新聞出版社、安藤忠雄・著)を読んだ。
日本経済新聞に「私の履歴書」という連載記事があり、一ヶ月間ひとりの人物を取り上げているものだ。過去には経営者、作家、政治家などの大物が選ばれており、その人自身が文章を書いているものが多い。
『仕事をつくる 私の履歴書』、安藤忠雄さんの連載を一つにまとめたものがこの本である。
 
この本を読んだ当時、私はやる気がみなぎっていた。
読み終えた頃には、私も安藤忠雄さんのように、自分の夢へと邁進しようと天に誓ったくらいだった。
それくらいこの本には彼の力強くて若者を叱咤激励してくれる言葉で溢れていた。
彼のように自分だってやってやろう、なんて謎の自信を持ってしまっていた。
だけど今なら分かる。安藤忠雄さんがどれほど、覚悟と意志の強さを持っている方なのかが。
建築を独学で学んだり、何もない状態から自ら仕事を取りにいったり、海外の仕事にも果敢に挑んだり。改めて、それらは誰にでも簡単にできることではないことだとはっきりと理解した。
 
自分の読書メモを振り返ると、彼を構成している要素が各所に言葉として散りばめられていたことに気付いた。
情熱、気力、集中力、目的意識。
自立心、判断力に、実行力。
言葉でいうのは簡単だが、安藤忠雄さんのようにこれらを実際に体現している人はなかなかいないように思う。
 
続けてぱらぱらとノートをめくると、私が書いていた印象に残った彼のメッセージに、はっとした。
 
「私は大学の教育を受けていない。自分で生きる力を身につけなければという思いを人一倍強くもってきた。だから自分の意志が希薄で、人と直接ぶつかり合おうとしない、芯の弱い若者や子どもたちをみていると、日本の将来に強い危惧の念を覚える」(247頁)
 
頭が痛くなった。
まさに彼が危惧していたような人間に自分がなってしまっていたんだ。
自分を車に例えるなら、今はタイヤがパンクしていて動けない状態だと思っていた。
タイヤのパンクならば、そのタイヤさえ交換すれば走ることができるが、そもそも私は走るための動力であるエンジン自体が不足していたのではないか。
安藤忠雄さんが身につけていたような生きる力が、圧倒的に不足していたのではないか。
 
私は人から反対され、どうしたいのか分からなくなってしまった自分に激しく失望した。
安藤忠雄さんの厳しい言葉から、彼の信念からは程遠い若者であることを自覚した。
でも彼はただ厳しいだけではない。本当は誰よりもこれからの若者を応援しているのではないか、若者を信じてくれているのではないかと思うところもあった。
 
「小さな点からでも、情熱をもって辛抱強く続けていれば必ず実になる。大切なのは、こころをつないでいくこと」(105頁)
 
そう。
彼は私のような人間へのヒントを、メッセージを随所に散りばめ、エールを送ってくれていると思わずにはいられなかった。
彼の言葉で、私は少しずつ自分のエンジンを、前に進む力を組立て直さなければいけない。
ポキッ。のような悲しい音ではなく、もっと高速回転しているような吹かした音を出したい。
 
前に進みたい。
そういう気持ちを思い起こしてくれたこの本を読み返そう。
まだ不安定な私は、どこかでまた立ち止まってしまうかもしれない。
そんなときに、私は何度もこの本を手に取りたい。
諦めないように、何度でも、何度でも少し先の未来を生きる自分に手に取ってほしい。
強く、だけど優しく、背中をたたいてくれるこの本を。
 

 
【紹介本】
『仕事をつくる 私の履歴書』(日本経済新聞出版社、安藤忠雄・著)
 
【こういう人にも読んでほしい】
・夢へと向かう勇気が出ない人
・このままでいいのかと悩んでいる人
 
 
 
 
***
 
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2020-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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