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誰もが簡単にかけられる催眠術の話


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記事:山田真美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は小学4年生の時、いわゆる「ダメな生徒」だった。
 
体育の授業がある日に、3回連続で体操服を忘れた。
成績も悪かった。全国の県庁所在地のテストは何度やっても落ちた。結局いつまで経っても覚えられなかった。
 
でも、ずっと「ダメな生徒」だったわけではない。
小学3年生までは、優等生というほどではなかったかもしれないが、悪目立ちするような生徒ではなかった。
兄弟がよく怒られるような抜けている性格で、親は手をやいていた。それを見ていた私は、小さい頃から「親に心配かけるようなことはしてはいけない」という責任感は少なからずあったと思う。
 
それが小学4年生から変わったのだ。
 
小学4年生になった春、担任になった先生が「お前は悪ガキ三人組だ」と、当時私と仲が良かった友人達と合わせて、そう名付けた。
なぜそう名付けられたかは、わからない。理由があったかどうかも定かではない。
 
ただ、名づけられてから、どんどん成績が落ちた。忘れ物が増えていった。そのたびに、「やっぱり悪ガキ三人組だからどうしようもないな」と言われた。私たち3人は要注意生徒として、席替えをしても常に最前列にされた。
 
当時は、私のことを「ダメな生徒」だと、自分自身も、周りも思っていた。
しかし今振り返ってみると、あれはただの「レッテル」だったと思う。
 
おそらく先生は、私の何かしらの言動を「悪ガキ」と感じ、そう名付けただけだろう。悪気はなかったと信じたい。
でも、その後5年生となり、担任の先生が変わってからは、また成績が戻ってきた。5年生の担任の先生からダメな生徒扱いをされたことは始めから一度もなかった。
 
「レッテル」というのは、誰でもかけられる「催眠術」のようなものだと思う。
 
催眠術は、皆さんもご存知の通り、暗示をかけることで催眠状態に引き入れることだ。
 
小学4年生の私は、「悪ガキだ」という暗示をかけられ、そういった状態へ近づいていったのだと思う。そして「悪ガキだ」と言われなくなったことで、その状態から離れていった。
これは単なる言い訳ではない。
 
人間は「レッテル」を貼ったり貼られたりすることで、物事をわかったつもりになる。その「わかった」という状態が一番はっきりしていて落ち着くため、本当にそうなのかと疑ったり、反抗したりことにエネルギーを使うことをやめる。
 
催眠術にかけられた経験のある方は少ないかもしれないが、催眠術を自力で解くのはかなりのエネルギーが必要になる。芸能人が催眠術にかけられているのを度々テレビで見かけるが、催眠のかかった状態で「動けない」「離れない」とか言っているのは、演技ではない。全力で反抗しても、できないのだ。ただ、暗示をかけるのをやめれば、すぐに催眠は解かれる。
 
レッテルも、自力で逃れるのは難しい。はじめは反抗する気持ちもあるかもしれないが、徐々に、その通りだ、そういう人間なのだ、という気持ちになってくる。
ただ、ひとたび「そんなことない」「本当のあなたはこんな人だ」と違うことを言う人が現れると、そっちに簡単に流されていく。
 
良いことでも、悪いことでも、「レッテルを貼る」ということは、催眠術をかけているのと一緒なのだ。
 
「男女平等」「LGBT」という概念がかなり浸透してきたが、これも一種のレッテルの問題ではないだろうか。
「男性」「女性」といったカテゴリ分けをすることは、「あなたは男です」「あなたは女です」という暗示をかけていることと同じなのではないか。だからこそ、その暗示に苦しむ方々が「LGBT」といった別の概念を、相当なエネルギーを使って浸透させようと活動している。
 
だが、私は「LGBT」ですら、レッテルとなってしまっているのではないかと感じる。
 
たしかに「LGBT」という言葉が浸透することによって、そういった方がいるということも理解しやすくなった。書類から性別欄がそもそも無くなったり、自由記述になったりしている。「LGBT」という言葉すら知らなかった頃から考えたら、「男性」「女性」というカテゴリ分けをやめようとする動きは浸透してきた。
 
しかし、今度はだんだん「LGBT」という一つのカテゴリに、まとめて押し込まれて窮屈になっているようにもみえる。
そもそもカテゴリ分けされることに違和感があった方からすれば、「LGBT」ですらただのレッテルなのだ。しいて言うなら「何でもない」というのが近い感覚なのかもしれない。
でも、人は物事をわかったつもりにしたがる。白黒つけないような考えには、多くの人は賛同できない。
 
「レッテルを貼らない」ということは不可能だ。すべてをあいまいにして生きていくことは絶対にできない。
それでも、時々立ち止まって「今の考えは、勝手な思い込みではないか?」「今までの考えは本当にあってるんだろうか?」と、エネルギーを使っても向き合って考える時間を増やしていければ、誰もが少しずつゆったり生きられる世界になるのではないかと私は思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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