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未来の不安はミイラで解決! エジプトのミイラに救われた少女の話


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記事:黒木里美 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
7歳の私は「死」の恐怖に怯えていた。
「ボーっとしていると、交通事故にあって死んでしまうぞ!」
父親のこの一言がいけなかった。
父親もぼんやりして危なっかしい娘を心配してのことだっただろうが、その日から私は、いつ命が尽きるかと不安でたまらず、大人になれないことを思い、悲しくて涙ぐむこともあった。
 
そんな私を救ってくれたのが、エジプトのミイラだった。
 
まずは、エジプトについておさらいしよう。
エジプトと言えば、ピラミッドやクレオパトラ、月夜の砂漠をラクダで旅するといったエキゾチックなイメージだろう。
そんな世界観を抱かせるエジプトは、多くの人がいつかは行ってみたいと願う憧れの地である。
しかし、同時に、エジプトがアフリカ大陸にあることを忘れてしまっているなんて人も多いはずだ。
それぐらいエジプトは、近くて遠い国だと思う。
 
30代の私にとってエジプトと言えば、チョビ髭がトレードマークの吉田作治教授だ。
幼い頃、エジプトの遺跡発掘特番はもちろん、歴史もののクイズ番組にもエジプト言えば必ず登場していた。
 
最近、教授のエッセイを読むことがあった。
今から80年も前、小学4年生の頃、『ツタンカーメン王のひみつ』という児童書に出会い、古代エジプトの文明や死生観に憧れを抱いたことがきっかけで考古学者となったそうだ。
考古学の権威である吉村教授をエジプトへと駆り立てた本は、どのようなものだったのかと、本好きの心をくすぐる内容だった。
 
そして、7歳だった私を救ってくれたのも一冊の絵本だった。
『エジプトのミイラ』との出会いだ。
神保町の古本街で母に買ってもらって以来、片時も私のそばを離れることのない一冊だ。
 
「死んでも魂は生き続ける。死は終わりではない」
 
巨大な墓、豪華な装飾、丁寧に作られるミイラ。
王が埋葬され、魂が旅立つまでの物語。
絵本に描かれているのは、古代エジプトの話とわかっていても、当時の私は憧れずにはいられなかった。
 
「私、ミイラになりたい」
 
信じられないかもしれないが、7歳の私は、本気でそう願っていた。
しかし、憧れていてもやっぱり本物のミイラを見るのは恐い。
けれど、心底興味がある。
 
その後、私はミイラに出会う機会を得たのは、小学三年生の時だった。
科学博物館で開催された「人体の世界展」だ。
当時、展示の内容や規模の大きさからもかなり話題になっていたことを思えている方もいるかと思う。
 
『エジプトのミイラ』を買い与えてくれた母親も、さすがに腰が引けていた。
展示は一人で見るから、どうしても連れて行って欲しいと頼み込んで、ようやく連れて行ってもらった。
 
会場には、何百体もの献体という「ミイラ」がいた。
そして、エジプトのミイラと同様に幼い私の死生観に影響を与えた。
献体とは医学の発展を願い、死後、身体を研究のために提供することだ。
一番心に残ったのは、妊婦さんの献体だった。
医療機器が今ほど発達していない時代、その妊婦さんの献体は胎児や母体に秘められた多くの謎を解き明かす鍵となったそうだ。
目の前の母子やその家族、そして、研究に携わった人々のことを思うと胸が苦しくなった。
恐いなんてことを言っては申し訳ない。
身体のこと、生きる意味、死んでからの事、もっと知りたい、考えていきたいそう強く感じていたことを覚えている。
 
肝心のエジプトのミイラに会ったのは、ずいぶん大人になってからだった。
そして、昔からミイラは展示物の目玉として大人気だったことも大人になって知った。
今では私もミイラが展示されていると知ると、ついつい見に行いってしまう。
見に行くと言うよりも、仲間に会いに行くと言った感じだろうか。
 
ミイラについて、大人になってから知ったことがもう一つある。
それは、エジプト以外にも世界中にミイラがいるということだ。
丁寧に作られたミイラ、ほったらかされていつの間にかなってしまったミイラ、生きながらミイラになっていった人もいた。
そして、生贄として作られたミイラもあった。
南アメリカで発見された子どものミイラだ。
 
「子どものミイラなんて、なんて酷いことをするのだ」
 
誰もがそう思うだろう。
私も、なぜ子どもがミイラにならなければならないのかと不思議に思い、昨年、科学博物館へ足を運んだ。
展示されていた子どものミイラはしっかりと布に包まれ、当時おもちゃや食料と一緒に丁寧に埋葬されていたそうだ。
 
子どものミイラは、祈りによって作られものだった。
天災による食料難。
神への祈りを込め、大切な子どもを、「未来」を捧げたのだ。
無力な人の手で、最後の力を振り絞り作ったミイラを、古代の人々の切なる祈りが込められたミイラを、誰が責めることができるだろうか。
 
死んでなお愛する者たちと共にありたい、人々の幸せを願いミイラになった人たちや、ミイラ作りに携わった人々がいた。
ミイラを科学的に研究することで当時の人間の身体の特徴や、かかっていた病気はもちろん、持っていた技術や文化など様々な知識を得ることができる。
ミイラは、貴重な資料でもある。
決して恐いものではないと知ってもらいたい。
 
死は誰にも必ず訪れる。
死を思うのは、生きている証であり、死があるからこそ限りある生と向き合うことができる。
人々に死を思わせ、生と向き合う勇気をくれるミイラ。
私の古代エジプトのミイラからはじまった「死」を学ぶ旅。
生ある限り、世界中の様々な時代の宗教や、人々の心に受け継がれる死と生の知恵を学ぶ旅人であり続けたい。
 
 
 
 
***

 
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2020-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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