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働くことそのものがご褒美


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記事:澤村貴子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
そういえば、元々大学時代からアルバイトは真面目にしていた。働くということ自体は、好きだったのかもしれない。
 
就職先は、当時付き合っていた彼が大学院に行くので、地元を離れずにすむ会社を選んだ。その彼とは就職目前の春休みに別れてしまったけれど。男で就職先を決めるという典型的なバカ女子大生だったなと思う。
 
入りたい業界でもなかったが、とりあえず働く1年が3年、5年と過ぎた28歳の時、朝起きる時に左膝に激痛が起きるようになった。寝起きだけ変だな、と安易に考えていたが、日々症状は悪化していった。手足が浮腫むようになり、顔も浮腫んでいると感じるようになった。
お年頃だったので、顔の浮腫みは堪え難いと思い、総合病院に行くと、とある難病の疑いをかけられ、専門の先生のいる大学病院にすぐに行くように言われた。
そこからは、ありとあらゆる検査をした。その頃の記憶がほとんどない。
辛さとだるさと不安と忙しさと。朦朧としていたのかもしれない。しかし、どんな検査をしても、病名はつかなかった。病名がつかないと、治療薬がなかった。痛み止めだけ処方されながら、ありとあらゆる検査をしていたが、身体中の痛みは、強くなっていった。これから少しずつ私の身体は、思うように動かなくなるのだろうなと思っていた。
今は歩けるけれど、そのうち、車椅子になるのだろう。そうなると通勤は無理だろうし、今の仕事も、続けられないだろう。もう旅行もできないし、富士山にも登れない。好きな洋服も着られなくなる、大好きな飲み歩きもできなくなってしまうのかと今から思えば、それはできるよと言いたくなることも多いが、とにかくできなくなることを毎日、毎日数えて泣いていた。病気の辛さもあったけれど、私の心配をして痩せてしまった母に対する申し訳なさで、ポロポロと涙がこぼれた。
 
やがて、一歩一歩が痛くなっていた。階段は手すりにつかまり、一段ずつそろそろと降りていた。仕事が終わると疲れ果て、電車にすら乗れなかった。父が車で1時間以上かけて毎日迎えに来てくれた。本当に身体がボロボロだった。
 
もちろん、仕事も辞めたら、とよく言われた。
発病した理由はわからないけれど、強いストレスも要因と言われ、私はそんなに仕事を頑張っていたのだとこの時初めて気付かされた。頑張っていたというよりは、求められる役割に応えようとする性格だったのだと思う。周囲の空気に流されていた。向いていない職種であったにも関わらず、成果を求められれば、応えようとただひたすら無理をしていたのだと思う。
 
でも辞めなかった。
辞めないどころか、私は仕事だけはできる身体になりたいと願っていた。
薄っぺらな付き合いの彼氏のそばに居られるという理由だけで就職先を決めたような私が、仕事だけはできる身体になりたいと願っていた。結婚どころか、彼氏もできない、子供を産むことなんてとても無理だと思った。色々思い描いていたことが全て叶わなくても、仕事だけは続けたいと思った。そう思う事が、自分でも意外だった。
 
当時の仕事や会社に執着するわけでもなかったが、私は人生において、一つするとしたら、きっと「働き続ける」そして、「自分で生きていける力をつける」ことが最優先の価値を見出す人間だったのだった。
 
毎日ポロポロ泣いていた日から15年。色々あって幸せなことに、会社も辞めずに、元気に働き続けている。いい時ばかりではもちろんない。不本意な部署への異動もあったし、報われない努力なんて山のようにある。本心から納得できていないことを、進めなければいけないこともある。なんだ若い頃とちっとも変わっていないなと笑えてくる。
 
でも、あの時私がたった一つ願った、働くことが、今、できているのだ。
それだけで、充分私の人生、儲けものではないだろうか。
 
そういえば、結婚もできてないし彼氏もできたこともあったけど振られた(病気以外の理由で)
この先、運よく結婚できたとしても、子供は産めないだろう。両親に孫を見せられなくて本当に申し訳ない。
できなかったこと、叶えられなかったこと今は過去形でたくさん出てくる。
でも、私は働くことができているのだ。それだけで、とても幸せな人生だと思おう。そういう人間を社畜っていうのだよと言われそうだが、社畜万歳! それも私の生き方だ。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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