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「体験」から広がるビジネス!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:串間ひとみ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「そうなんですか……」
 
ほどなく24時になろうとしている映画館で、私は自分の見通しの甘さを悔いていた。私自身は密を避けるためとの理由があったのだが、終わりが深夜の2時をこす映画に、そうそう人は来ないだろうとの予想は見事に打ち砕かれ、私が見たかった映画は満席だった。
 
私が見たかった映画というのは、12月26日より始まった「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の4DXであった。世の中の流行りに乗り、漫画を読んだらドハマリし、10月16日から公開された通常版の映画を見に行った。そして映画版にもドハマリし、複数回見に行ったが、私はそもそも映画館に足を運ぶ方ではない。じっと座っているのが苦手なのだ。それでも、『タイタニック』や『千と千尋の神隠し』など、興行収入に名を連ねている映画や、それ以外にも面白そうだと思ったものは、数えるほどではあるが、見に行ったことがある。そんな私の少し苦手意識のある映画の常識を変えたのが、4DXである。
 
さかのぼること1年前。映画好きの後輩君が、嬉しそうに冬休みの予定を話してくれたときのことだ。
 
「冬休み何の映画を見るか、楽しみなんですよね。面白い映画がたくさん公開されてるから。スパイダーマンとか、アナ雪とか、4DXでも見られますし」
 
「4DX?」
 
突然出てきた謎の単語に、思わず話を遮った。もともと映画をあまり見ないうえに、3D映像で話題になった『アバター』すら、どういう仕組みなのか分かっていないほど、映画の進歩に疎い私が、「4DX」を知るはずもなかった。
 
「4DXって、映像にあわせて座席が動くんですよ。あと水しぶきが飛んできたり、風が吹いてきたり、光ったり、においがしたりしますね。値段は1000円くらい高いですけど、僕は4DX あったら、そっちで見たいです。アクション映画とかだと、特に面白いですよ!」
 
説明を聞きながら、「ディズニーランドにあるアトラクションの物足りない感じかな?」という漠然としたイメージだった。それでも彼のただならぬ熱量により興味が沸いたので、おススメ通り『アナと雪の女王2 4DXマジカルエディション』を見ることにした。「同じ映画を見るのにわざわざ高いお金を出すだけの価値があるのだろうか?」ということを、少し疑ってい
 
「お荷物はロッカーにお願いします」
会場に入る前、スタッフさんに声をかけられた。「いやいや大げさでしょう。ディズニーランドのアトラクションでも、そうそう荷物のお預けないですよ」と内心思いながらも、バックと上着をロッカーに入れ、座席についた。普通の座席に比べて間隔が広く、ゆっくり見られそうだなというのが、最初の感想だった。
 
それからの約2時間。映画の場面に合わせて、スクリーン以外にも閃光が走り、水しぶき、風を感じ、本当に香りまでしたのだ。椅子に至っては、隣の人のポップコーン絶対今こぼれ落ちましたよね? というレベルで揺れ動き、ディズニーランドのアトラクションの少し手前ではなく、ひけをとらないレベルの体験ができた。正直水しぶきや風と言ってもね……とたかをくくっていたのだが、冬なのにそこまでやりますか? という忖度なしのかけっぷりだった。おかげで、よりリアルに映画の世界に入り込めた。これはすごい! 映画はじっと座って味わうものだという常識を覆す、ゆっくりなど見ていられない、想像以上の体験がそこにあった。
 
4DXを通して、「モノ」ではなく「体験」を売るというビジネスモデルの1つを見たように気がした。もちろん映画も「モノ」というよりは、「体験」に近いが、よりリアルさを追求したという点で、「映画」というよりは「アトラクション」に近く、私のようなじっと座るのが苦手という人にも楽しめるものとなった。つまり元来あるモノ・ビジネスに新たな体験が加わることで、これまでその対象でなかった人にも親しんでもらえるものに変化する可能性があるということになる。
 
同じような例で、スターバックスもそう。私はコーヒーを飲む方ではないのだが、初海外で初めて入ったお店がスターバックスだったという理由で、その後もときどき利用していた。おしゃれなカフェ的な要素しかなかったスターバックスが、いつの頃からか、コーヒーセミナーを始めた。ハンドドリップの仕方や、フードペアリングなど、テーマによって実際に作業をしながら、コーヒーについて学ぶ。フレンチプレスというものを、このセミナーで初めて知った。結果、自分が飲まなくても、人にいれてあげたい、それをやるための器具を買おうとなり、気づけばエスプレッソマシーンまで購入していた。もちろん自分ではあまり飲まないコーヒー豆も買ってしまうのだ。
 
天狼院書店も、「本というモノ」を売るだけではなく、「本の先にある体験」を提供するという、まさに4DXのような本屋さんだ。
 
これまで「体験」とは縁がなさそうだった分野でも、続々とそうした新しい形が生みだされているなあと思うことが増えてきた。「モノ」は、もう十分すぎる程世の中に出回っている。「モノ」を持つだけでは人は変われないが、「体験」を通してなら、その前と後では必ず変化が起こる。それは単純に知識かもしれないし、気持ちなのか、考え方なのか、生活習慣なのか。いずれにせよ、かけた金額や時間以上の変化を生み出すかもしれないところが、「体験」の持つ面白さなのではないかと思う。これからどんな体験ビジネスが出てくるのか楽しみだ。
 
今日ようやく、4DXバージョンの映画を見ることができた。回数を重ねるごとに、少しずつ減ってきていた涙が、復活してきたように泣いた。映画への引き込まれ方が違ったのだと思う。「体験」するって、やっぱりすごい!
 
 
 
 
***
 
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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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