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地獄へ行こう!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森嵜真由(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
青い空、照りつける太陽、カラフルな建物が並ぶ街並み、パン屋さんからかおる焼きたてのパンの匂い、街をゆく楽しげな人々……。えっと、ここってもしかして地獄でしたっけ?
 
2019年の夏頃から、私はスペインへ留学に行っていた。理由は主に1つ、スペイン語が話せる大人ってかっこいいな、と思っていたからだ。(スペインはごはんも美味しい)
スペインに着いたら、大家さんに挨拶して、ルームメイトと仲良くなって、授業もしっかり頑張って、休日はヨーロッパ旅行に行って……。そんなぼんやりした憧れを持っていた、はずだった。そんな憧れは、早々に打ち砕かれることになる。
 
いざ、スペインでの生活が始まったら、ひどい有様である。憧れの地だったスペインは、いつの間にか、私にとっての地獄になってしまっている。あの世には天国と地獄があると言うけれど、今生きているこの場所が地獄という可能性はありませんか? と本気で思っていた。私は、大学からの交換留学という形で留学したが、同じ大学からの留学生はいないし、その大学への留学は私でまだ2人目らしい。得られる情報もかなり少なかったと思う。日本人が少なく、学ぶには絶好の環境だったけれど、早い話私は孤独感に苛まれ、異国の地でかなり追い込まれていた。
 
勇気を出して話しかけた他の留学生とは話が全く弾まなかった。授業にも全くついて行けず、先生が何かしらのジョークを言ってるんだろうことはわかっても、教室で私だけが何が面白いのか全くわからず愛想笑いでごまかした。更に地獄なのは、ボイスレコーダーで録音した音声をきいても、何に笑っているのか1ミリもわからなかったことである。ルームメイトに、絞り出した語彙でこうして欲しいと伝えても、わからないよ、という顔をされたこともあった。挙げ句の果てには、留学先の大学の留学支援室であまりのふがいなさに号泣し、先生達を困らせた。休日は出かける気にすらなれなくて部屋に引きこもってしまう日もあった。あっれれ~おかしいぞ? と思った。こんなはずではなかったと思った。何一つ上手くいかないなあと思った。本当に情けないから言いたくないけれど、帰りたいなあと思ってしまった。
 
2020年年末現在の私から言わせてもらえば、あったりまえでしょ! 何おかしなこと言ってんの?! と過去の自分に頭突きをくらわせたいくらいである。なぜなら、地獄に行くことを選んだのは日本にいた自分自身なのだから。
 
過去の私に問いましょう。あなたは、留学に行くことが決まってから、何をしていたの?
スペイン語の勉強は? スペイン文化や歴史は? 日本の文化と歴史は?
きっと、過去の自分は何も答えられない。私は、何もしなかった。胸を張って言えるほど、頑張らなかった。私は愚か者だったのだ。愚か者の行く先は、もちろん地獄になるだろう。
 
現地に行きさえすれば、ものの数週間で慣れるとか何ヶ月かすればしゃべれるようになる、とか。留学サイトに載っている言葉は、嘘ではない。ただ、そこには、“あらかじめしかるべきことを学んだ人は”という前提条件が隠されている。そんなことわかっていると思う人もいるかもしれない。だけど、そんな当たり前のことに私は気づけなかったのだ。だから、留学って地獄なの? と思ってしまっていた。生活に慣れるのにも、人より時間が掛かった。
 
日本で頑張れなかったことがスペインに行って自動的に頑張れるようになってるわけないのである。全員に該当するかはわからないが、少なくとも私には無理だ。しかしながら、そのことに気づけて本当に良かった。身についたスペイン語や専門知識より、一番大切なことに気づけたと思う。それに、地獄にいたからこそ人のあたたかさは本当に身に沁みた。ルームメイトが休日に引きこもっている私にケーキを焼いてくれたり、家の目の前の八百屋のおばちゃんが落ち込んだ顔の私に桃をおまけしてくれたり、先生が自分の留学していた時の失敗話を私にもわかる簡単な言葉でゆっくり話して聞かせてくれたり。大学の図書館の守衛さんがスペイン語の宿題を教えてくれたこともあった。この優しさに触れることができたのは、私が地獄に落ちていたからだ。周りの人の力を借りて、地獄から這い上がることができたのだ。思い返せば、地獄は苦しくはあったが、悪いものでは無かった。(当時はそんなこと1ミリも思えなかったけど)
 
自分の甘ったれた部分にひたすら向き合わされたけれど、同時にそれは私が自分自身を正しく認識できるようにさせてくれた。悪い部分がどこなのか認識できなければ、改善しようと思っても、どうしようもない。愚か者の私を支えてくれている人達は、こんなにいるのだと伝えてくれた。自分がどこを改善すべきなのかは、もうわかった。支えてくれている彼らは、きっと私の成長を喜んでくれるだろうことも。
そんなことを気づかせてくれた地獄に、もう戻らないけど、いろいろありがとうと伝えたい。
 
過去の私へ 今は死ぬほど苦しんでください。大丈夫です、2020年の年の瀬にはライティングのネタにできるくらいになっているので。
 
 
 
 
***

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2020-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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