カレーがつなぐ、ともだちの輪
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:田中真美子(ライティング・ゼミ平日コース)
彼との出会いは、私に勇気ときっかけを与えてくれた。
初めての対面は会社の懇親会でのことであった。
数十人が集まる立食パーティーで私は彼、Mさんと出会った。
社内の共通の知人である同僚のYさんが、Mさんと私を引き合わせてくれたのだ。
Mさんは何年か前に中途採用で入社したのだが、前職は海外でコロッケ屋を経営していたという異色の経歴の持ち主だ。
私たちの勤務先はシステム開発を請け負う会社なので、これは非常に珍しい経歴だ。
そんな珍しい経歴を持つMさん、コロッケ屋を経営していただけあって料理が得意なのだが、中でもカレーにかける情熱は凄まじいものがあった。
スパイスからカレーを作るのは当たり前、カレーの名店を食べ歩き、時にはお店のご主人からレシピを聞き出しお店の味を再現できるまで試作を重ねるなど、とにかくもの凄い探究心でカレーを追求していたのだ。
元々カレーが好きで、食べ歩きをしていた私。
カレーの料理教室に参加し、作るほうも趣味になりつつあったタイミングでMさんと出会い、そのカレーに対する情熱に触れて、大いに刺激を受けた。
会社の仲間が集まって開かれたホームパーティではMさんが実際にカレー作りをしているところを見せてもらい、レシピを教えてもらった。
出来上がったカレーは埼玉県所沢にある有名店を意識して作ったというもので、キーマカレーにピンクペッパーがかかっていて見た目も綺麗で、非常に美味しいカレーだった。
ある日のこと。
大好きなカレー店からダイレクトメールが届いた。
ダイレクトメールにディナーのコースの優待券が付いていたので、MさんとMさんを紹介してくれたYさんを誘い、三人でカレーを食べに行った。
お店に滞在した約2時間とちょっと、同じ会社に勤める同僚である三人だけど、仕事の話は一切なし、終始話題はカレーについてで盛り上がった。
その帰り道、早速次の会合に向けての作戦会議がはじまった。
「やっぱり色んなカレー食べ比べたいし、仲間増やしたいですね」
「Sくんとか、見た目がカレー好きっぽいし誘ってみるか」
「いいね! 絶対カレー好きだと思う」
見た目がカレー好きっぽいってなんやねん、と思いつつもそこから私たちは仲間探しを開始した。
「カレー部」という名のグループLINEを作り、カレーが好きそうな雰囲気を醸し出している人に片っ端から声をかけ、着々と部員を増やしていった。
活動の甲斐あってか、徐々に存在が知られるようになり、入部希望者から声をかけられたり、この人誘ってみたら? と推薦を受けるようになった。
ある時など、
「タナカさん、カレー好きですよね。カレー部ってのがあるらしいから参加したら? 」
とおすすめされたりも。
いや、そのカレー部作ったの私なんですけど。
最終的にはインドから来日し、同じ職場で働いていたインド人のBさんも巻き込み、Bさんからおすすめのお店を紹介してもらい、食事をしながらインドの話を聞くなど異文化にも触れることができた。
Mさんと知り合い、その強烈な個性に影響を受けて、少しずつ私はカレー好きを表明できるようになった。
それまでは、自分が好きなものを公言するのは恥ずかしくて、人前でカレーが好きです、と発信することができなかったのだ。
バカにされたらどうしよう、ひかれたらどうしよう、そんな気持ちが勝ってなかなか人に伝えることができなかった。
たかがカレーが好きかという話題で大げさな、と思われるかもしれないが私にとっては勇気がいることであった。
今までの人生の中で決定的な出来事があったわけではないが、おそらくささいな事で他人からの拒絶や否定を受けた経験が、澱のように自分の心に溜まっていて、発信することを怖れるようになったんだと思う。
そんな臆病な私のカレー好きを見抜き、Mさんを紹介してくれたYさんに感謝しないといけない。
「好き」という自分の意見を発信することは、私にとって勇気がいることであった。
発信することで、他人がそれについてどう思っているかの反応が返ってくる。
それはポジティブなものだけではなく、ネガティブなものもあるだろう。
私はネガティブな反応が返ってくることを極端に恐れていた。
加えて怖いのが無反応だ。
勇気を出して発信してみても、誰からも何もリアクションがなかったらどうしよう。
せっかく発信したのに、反応が何も無かったら恥ずかしいな、という気持ちもあった。
だけど、勇気を持って発信してみたら思った以上にポジティブな反応があったし、それをきっかけに同じ「好き」を持つ仲間ができた。
さらに、親切な人が私の「好き」を知って色んな有益な情報を教えてくれるようになった。
そして今、私は勇気を出して発信して良かったと思う。
もっと自分の好きなことをわかりやすく、多くの人に発信したい。
私がライティング・ゼミに申し込んだのもこのカレー部を作った経験が一つのきっかけになったのかもしれない。
これからも、勇気を持って発信し続けていきたい。
***
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