メディアグランプリ

ダチョウが世界を救う!かもしれない嘘のような本当のはなし。


小川さん

記事:小川純(ライティング・ゼミ)

 

既によく知られた話かもしれないが、今、世界を救う鳥としてダチョウが熱い。

「は? ダチョウ? ダチョウってあのダチョウ?」

そう、そのダチョウである。動物園とかアフリカ大陸とかにいる、首と足が長い
あいつである。卵が大きいことでも有名かもしれない、あのでっかい鳥である。

そのダチョウが世界並びに人類を救うかもしれないという話である。今話題のジェダイよろしく人類を暗黒面から救ってくれるとでもいうのか。いやそうではない。そうではないが、ひょっとしたらそうなるかもしれない。そういう話なのである。

医療問題に造詣がある方ならピンときたかもしれないが、実はこのダチョウの卵から精製された抗体が人類を救った例は枚挙に暇が無い。二十一世紀初頭に世界を震撼させたSARSウイルスをはじめ、サルモネラ菌、エボラ出血熱、新型インフルエンザ、最近ではMERSウイルスの抗体まで精製されており、近年医療業界を賑わせている。他にもノロウイルス、アトピー、肺ガンに効く抗体の研究が進んでいるという。身近なところでは巷のドラッグストアなどでマスクやスプレー、フィルターの売り文句に「ダチョウ抗体入り」の文字を見た方もおられるかもしれない。

かように現段階でも、かなり多くの人類を暗黒面から救っている節のあるダチョウだが、更に人類が未来にかけて抱えている“ある大問題”に関しても一条の光明をさしているのだからその身体に秘めるポテンシャルたるや、いや恐ろしい。そしてその“大問題”とは何か。

それは“世界的食糧危機”である。

「え? 食べるの? ダチョウを? ていうか食べられるの?」

そうなのだ。ダチョウを食べるのだ。というのもダチョウというやつは抗体うんぬん以前にまず何より“肉がうまい”のだ。人命を救うダチョウ抗体といったやや高尚な話の後に、まさかの展開で申し訳ないが人間、霞を食べて生きていけるわけでもなし「武士は食わねど高楊枝」でも済まされない。人が生きて行くには食べていかなければならないのだ。これもまた人類の存亡に関わる話である。

実に二年程前、食糧問題にふれて国連食糧農業機関が「昆虫は栄養価が高く採集も容易、世界の未来のために理想的な食料になる」みたいな昆虫食推奨したことがあるが、今この時点でみなさんが一番気になっているのは食糧問題や昆虫食うんぬんよりダチョウが本当に食べられるのかといった問題及び、その味と食感ではなかろうか。本文の目的は「ダチョウが世界を救うかもしれない」なのでダチョウの味は是非ともお伝えしたいと思う。ことに筆者の表現力でダチョウの旨さが伝わるかが、いささか不安であるが筆者が興味本位で食べた“ダチョウはじめて食体験”を全力で持って拙文の〆にさせて頂く。

−あれは数年前、街路樹の桜もそろそろ若葉を見え隠れさせている時分だというのにまだコートが手放せない、うすら肌寒い四月の初めの頃のことだった。その日は食通のAさんに誘われて渋谷のTというスペースにやってきていた。なんでもダチョウの肉が食べられるらしい。

席に着くと最初に出されたのはダチョウのタタキだった。まさかダチョウをタタキにしてしまうとは。予想の斜め上な展開に内心おののきつつ。見た目はツヤっとしたローストビーフの様で、レア部分はルビーの様な煌めきをたたえていた。言われなければ少し上等な牛肉と間違えそうである。まずは何も付けずに頂く。それはサシの入っていない正に上質な牛の赤身肉を食べているのと同等かそれ以上であり、一口目から思いがけない感動を覚えたのを未だに忘れられない。そう、それは鳥というよりむしろ牛に近い食味であった(無論牛ではない)にも関わらず食肉の持つ癖の様なものはあまり感じられず後味もさっぱり。ジューシーなのにさっぱり。赤身の旨みが強く脂身がほとんど無いためだろう。気付けば私たちはダチョウのタタキに夢中になっていた。

次は塩、その次はわさび醤油と、すっかり舌鼓を打っているところにこの肉の提供者である、ダチョウの伝道師なる男が現れダチョウの未来とポテンシャルについて熱く語ってくれた。栄養価的には低脂肪高タンパク低カロリーで鉄分も豊富。生産コストも牛や豚などに比べ圧倒的に低いらしい。なんでも一キロ大きくなるのに必要な飼料が牛のおよそ四分の一で済むということだ。しかも必要な飼料は穀物ではなく安価なアルファルファや桑などの葉物らしい。さらには昼暑く夜寒いサバンナという過酷な環境下のもと生きてきたので環境適応力は高く南国でも雪国でも飼育が可能だという。

へぇ、これだけ旨くてそれだけ家畜としても優秀なら既に日本の食卓にあがっていても不思議ではないのにねぇなどと話していると、やはり日本ではまだ生産者も少なく消費者の認知度も低いために発展途上産業でありこれからダチョウの普及に尽くす必要があるという。すっかりダチョウに魅了された私は、行く先々でダチョウの話題に触れることを約束した。

ダチョウの食肉としてのポテンシャル、そしてその美味加減は想像して頂けただろうか。
そろそろ筆者はダチョウがゲシュタルト崩壊し始めた頃合いだが読者の皆さんは大丈夫だろうか。

そんなことより「じゃあ、どこ行けば食べられるの?」という疑問が残るかもしれないので調べてみたところ、最近では東京天狼院構える池袋でも数軒のお店が目玉商品としてダチョウ肉を提供している様である。今後は天狼院からお帰りの際にちょっとダチョウを食していくのもありかもしれない。なぜなら、その選択がダチョウの普及に繋がり人類を食料難から救う希望的未来に繋がるかもしれないからだ。しかしこれだけのポテンシャルを秘めたダチョウである。話題的にも飲食業を兼ねた業態で取り扱わない手はないのではないかとも思う。
ひょっとしたら天狼院でも食べられる日がいずれやってくるかもしれない。

 

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2015-12-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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