大ヒットしている本を読んでみた
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記事:山田THX将治（リーディング俱楽部）
「『FACT FURUINESS(ファクト・フルネス)』は、店頭に在りますか？」
私は、行きつけのビジネス書専門書店の店長に、ダイレクトメッセージを送ってみた。毎日忙しく働いていて、返信が遅れ気味の店長だったが、その日は珍しく、
「在りますよ。取り置きしておきます」
と、直ぐにレスが私のPCに届いた。
それだけ『FACT FURUINESS』(日経BP社・刊)は、売れているということなのだろうか。
私が『FACT FURUINESS』という本を知ったのは、天狼院で開催された講座に講師として来て下さった或る大学教授のSNSでの書き込みからだった。短い書き込みだったので、本の内容まで伺い知ることは出来なかったが、翻訳本であることと外出自粛が続いた昨年の前半に、最も売れたビジネス書であることは理解出来た。
件(くだん)の大学教授の言葉なら黙って聞いてみようと、私は購入を即断した。
『FACT FURUINESS』は、スウェーデンの医師でグローバルヘルスの教育者であり、ユニセフのアドバイザーでもあるハンス・ロスリングという方が、息子夫婦であるオーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランドとの共著として書かれているものだ。
日本語訳は、アメリカの名門、カーネギー・メロン大学で学んだフリーランスプログラマーの上杉周作氏と、大学准教授のかたわら多くの翻訳も手掛ける関美和さんの手によるものだ。専門用語が、解かり易く翻訳されているのはそのお蔭だ。
医師や大学の研究者が書いたり訳したりした書籍は、内容が堅く読み辛いのが通り相場だ。しかも『FACT FURUINESS』は、題名も英語のままで、余計に身構えてしまいそうになる本だった。
ところが、『FACT FURUINESS』のページを開いてみると、内容は先入観とは真反対で、出来の悪い私の頭にでも、簡単に内容が入って来るものだった。それはまるで、クイズの本か子供向けの“へぇー、ホォー”と言わせる様な作りに為っていた。
『FACT FURUINESS』の冒頭は、『サーカスが大好きな理由』というイントロで始まる。続けて、誰にでも解けるクイズが十数問並んでいる。これが単なるイントロとしてのクイズではなく、問題を解き解説を読み進めると、グローバルに発展してきた世界が、読者の頭の中で解明出来る仕組みと為っている。
情報が数多く飛び交う現代社会では、受け取り側の各自が、勝手な解釈によって本質とずれた固定観念が出来上がってしまっていると、著者は警告している。
しかし、それはただ、上から目線の警告ではなく、一つ一つのデータを例にとり、各自の固定観念とは別の見方も有るのだと忠告してくれている。
もしかすると、その筋の専門家からすると、少し冗長な文章と感じるかもしれないが、一般的な読者の理解度には、丁度良い頃合いの文章と思われた。何故なら、私も専門外のデータに関する事柄が、まるで手に取る様に理解出来たと思うからだ。
特に、所々で挟み込まれているグラフや写真が、エビデンスと為って記憶によく残るのだ。これは多分、謎解きかクイズを解く時に感覚に近いものを私は感じたのだ。
なので多分、『FACT FURUINESS』という書物は、その帯にある通り“世界の教養”それも、学校や教科書では教えてくれない、それでいて、興味が湧き記憶に残り易い教養が満載されているといっても過言ではあるまい。何しろ、400ページ近い厚さの本だが、一気に読み切ることが可能だからだ。
そして、『FACT FURUINESS』を読了すると、自分の思い込みに気付き、世の中が正確に見える様に為るのだ。それは、基準となるデータと基本的な思い込みを、本文中に数多く盛り込んでいるからだ。
結構教養本を数多く読んでいる自負がある私ですら、自分が陥っていた思い込みに気付き、新たな見解を述べることが出来る様になったからだ。
しかも、文中に出て来るデータは、新しく新鮮であるばかりか、著者の私見すらも取り除かれている感じがするのだ。これは、教養本によく見られる、著者から教えられるだけの一方通行ではなく、読みながら考え・学ぶ構成に為っているからだとも感じられるから不思議だ。
しかも、著者の教えはデータが明記されていることで、真実だと考えるに足るものと為っているのだ。
そして、『FACT FURUINESS』を読了した後では、読者各々(おのおの)に世界に対する正しい見方が身に付くと考えられる。少なくとも、身に付いたと小さな自信が湧いてくる。
ハッキリ書き記すと、今、この『FACT FURUINESS』を読むか読まないかで、明日からの新聞やニュースの理解度は、必ずや変化するだろう。
その事を試すだけでも、『FACT FURUINESS』は読む価値が有る本と、私は言い切れるのだ。
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