メディアグランプリ

猫を好きなすべての人にとって猫は宇宙


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:はさみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
愛猫の顔の毛の流れを眺めていたら1時間経っていた。
晴れた休日のことであった。みんなそうだろうけど自分ちの猫、かわいすぎるよね。だから私も、今日もかわいいね〜♡と1オクターブ高い声で言いながらソファでお腹を出して私の顔をじっと見つめてくる猫のことをミルクティーのカップ片手に眺めていた。そしてその日は軽率に、スルッと集中してしまえる日だった。いつも見てるけど改めて見てみたら、顔に毛が生えてて、なんなの。すげー不思議じゃん。なんでこんなふうに毛が生えてるの。毛だらけ。よく考えたらこわい。人間の目の周りに毛がボーボー生えてたらちょっとアレだわって思うのになんで猫ならいいんだよ、とかなんとかそんなことを考えていたら顔の毛の流れに熱中し始めてしまったのだ。
 
あ〜ほんとうちの猫はブサイクだな。ブサイクなのにかわいい。私の姿を確認するとたちどころにゴロゴロ喉を鳴らしてくる。
私とこの猫の出会いは15年前にお世話になっていた職場でのことだった。その職場で働くまではまだ私は、犬派? 猫派? とかいうしょうもない質問をされればなんの疑問もなく「犬かな」と答えるタイプの女だった。チワワが飼いたかった。ロングコートチワワがよかった。完全に面食い。形から入るタイプである。今の私がブッサイクな猫にメロメロになることも知らないで!
で、職場の面接に行ったら猫がいた。もともと野良だったのがなんやかんや気付けば居着いてしまったらしい。もうあの、なに? 猫がそこにいるだけで猛烈な癒し空間になる不思議。職場なのに!? それまでの人生で猫との接触が極端に少なかった私は面食らった。面接なのに、本来ならとても緊張の高まる場所なのに、面接中、私の足元には猫がいた。こんな和やかで大丈夫か。猫があくびついでに両足を伸ばし、モッサ〜と出したハチャメチャにだらしないお腹に緊張感は吸い込まれていき、私の口からはスルスルと言葉が出てきた。普段なら面接なんて、お尻にかいた汗が気になってそれどころじゃないのに「もしご縁がありましたら、ぜひこちらでお世話になれれば幸いです」とか言ってしまっていたし、その後すぐに採用の電話があった。猫じゃん……猫のおかげじゃん……。
そして猫の存在はあっという間に私の心を侵食していった。なんせ出勤から退勤まで猫がいる。ハイになったテンションの勢いで木に登って降りられなくなった猫を助けに行ったり、すべての足をむしって本体だけになったゴキブリを仕事中の手元にプレゼントされたりとエキサイティングな気分を味わう日々が続いた。もう猫なしでは戻れなくなっていた。人生に猫がいなかった時代を忘れた。
そしてある日唐突に会社を畳む時がきたのである。猫ばっかり気にしていて会社が傾いていることに気が付かなかった。「みんなごめんね。とりあえず自分たちのことは置いといて、どうしよっか」「何がですか」「猫よ〜!」迷わず「引き取ります」と手を挙げた。
会社を畳むなんて思ってもいなかった数ヶ月前、猫に入れ込んでいる私に先輩は「なんかあんまり自分ちの子みたいに接しないほうがいいかもよ」と言ってくれたが、心の中で「もう遅い……」と思っていたのだった。
そして会社はなくなったが、猫が家に来た。
 
「うちの猫はブサイクだな」から「猫が家に来た」まで回想すること0.5秒。猫の顔の毛の流れの観察に真剣に取り組んだ。ブサイクなのにかわいくて本当に猫は神秘。自分の息子にさえ「生まれてきてくれてありがとう」なんて言ったことがなくてごめんね。もう、猫がいなかったらママ生きていけないんだ。人生で、出会っちゃった……猫と……。めちゃくちゃ幸せ噛み締めてしまう。今日もこの広い宇宙で出会えたことに感謝しちゃう。いきなり壮大かもしれないが、猫のことを考え出すといつしか宇宙のはじまりビッグバンに思い至る。だってビッグバンなかったら私と猫が会えてないしそもそも猫が生まれてないわけでしょ。ある時0が1になって、なんかよくわからないけど銀河系とか地球ができて生命体ができて人類が誕生して、猫まで生まれたの!? 嘘でしょ。誰だよ猫作ったの。とか考えてると、もう本当猫って宇宙。この理屈わかっていただけるだろうか。ていうか、猫が誕生するにあたり猫の設計図(DNAっぽい意味の)がどこかにあるわけで、それどこで作られたの!? もう宇宙としか繋げられなくて錯乱する。
そんなことを考えつつ、うちにいる個体としての猫を眺める。こいつの作成時にも設計図があったんだよな。毛の一本一本、肉球の様子、しっぽの曲がり。おかあさん猫のおなかにいる時の設計図でこの子が作られた。それも宇宙がなかったらおかあさん猫だって存在しなかったわけで、もう感謝せずにはいられない。
 
この猫イズ宇宙の私の熱量が伝わっただろうか。ラブイズオーバーっぽく言った。猫の顔の毛の流れ、じっくり見たことない人はぜひ眺めて欲しい。猫ってこんなに丁寧に作られてたんだってびっくりしてもらって、そしてぜひ宇宙に思いを馳せてみて欲しい。
 
 
 
 
***

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2021-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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