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天狼院書店は特別だ

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谷合さん 天狼院書店

 

記事:谷合美香(ライティング・ゼミ)

 

あなただけの。
この表現、すり切れるくらい使い倒されている表現かと思う。
では本当に「あなただけの」物が与えられているだろうか。

天狼院書店は、東京に1号店を構えているが、そのスペースはとても小さく思える。
本がフロアを埋め尽くしているからだ。
それは選ぶために置いてあるのではなく、集めるために置いてあるのかと見まがうほどだ。

繰り返すが小さい店である。
場所も、閑静な住宅街を思わせる商店街の中である。
正直、地味な商店街の、しかも二階にあるため、見つけにくい。

もちろん大型書店にある「ゆとりスペース」はない。
座って本を楽しむためにはカフェの客になる必要がある。

向かい合って本が収まるような棚レイアウトはない。
客同士が背中合わせに立って本が選べるほど店は広くない。

それでも不思議と本を選べる。くつろげる。
静かに、自分の欲しい本を見つけられる。

少し前に流行った「隠れ家○○」に近いたたずまいを持っているからだろうか。
それとも。
店の面積に対して本が多すぎる、作家の書斎風の質量で、何故か圧迫感はないからか。
棚と棚の間は人ひとりが立つのがやっと、なのにもかかわらず。

カフェスペースがあるから?
大きく開けた窓があるから?
一理あると思う。

本当は、本と自分の距離が近すぎて、本と自分しかいない錯覚が、圧迫感を払拭するのだ。
その距離が本の海に溺れる感覚を楽しませてくれる。
しかも目の前には自分の本棚がこのくらい充実していたらと夢見た量がそろっている。
それはつまり、ちょうど、自分が把握できる量に他ならない。

ほとんどは、店側のセレクトだ。
書店が行うイベントに関連した書籍が大半を占めている。

そう、イベントで「本」に参加できる書店でもあるのだ。

自分の書いた文章が人の目にとまったら嬉しい、そんな願いが叶えられるライティング・ゼミで「読まれる」文の極意を学ぶことができる。

自分の書いた本を人に読まれたいと思ったら、「読まれる」小説の書き方を学べる小説家養成ゼミ。

書くための時間と場所も提供している。
毎週火曜日の夜、カフェスペースは「かんづめ天狼院」となり、ペンの走る音、PCのキーを叩く音が書店を満たす。

ゼミだけでなく「部活」も「ラボ」ある。
本の周りにあるもの、本を作る構成要素。それらに直接触れることができるイベントを提供している書店なのだ。

フォト部で写真の腕をみがき、本の装丁ができるかもしれないと夢想してみる。
落語部で実践型の触れ合いを楽しむ。
落語への敷居を低くする用意も当然ある。
安心していい。店頭に並ぶ古典落語の本があなたをナビゲートしてくれる。
本をもっと楽しむために。本から生まれたイベントを楽しむために。

これらオープンな活動だけではない。
「天狼院秘本」は社長が社命をかけて販売する「本気の一冊」。
販売時のタイトルは秘密。買った人だけがわかる。
返品不可。
その上、内容は誰にも話してはいけない。

同じ秘本を買った者同士でも、感想を語り合うことすら許されない。
秘本が「御開帳」されるまでは。
幸い、歴代の秘本のほとんどは開帳されている。語ってもいい。
五代目の秘本は、他ならぬ天狼院書店によって舞台化もされている。
この上もなく語れる。

しかし四代目は「永久秘本」。誰とも分かち合えない本になっている。
社長が言葉を尽くして宣伝ライティングをしていても、秘本は秘本である。
秘密の書籍なのである。

目隠しされて手にとった本が、「あなただけの」読書体験を与えてくれる。
「あなただけの」心に秘めておく一冊。
読書仲間が欲しいと思いつつ、自分だけの領域も守りたいとき、秘本はあなたの心に寄り添う。

あなたの欲しい本を取り寄せてもくれる本の窓口として利用できるが、ここは天狼院。
書店のセレクトの中から、思いがけない本との出会いを楽しんで欲しい。

再び大型書店の話をしよう。

新刊から在庫から、「何でもある」書店で、何でも買ってしまったことはあるだろうか。
賢明なあなたにはないことかもしれないが、本屋に行って本を買わずに帰ってくるという選択肢はあなたの中にはない。

何でもある雰囲気に飲まれて、あるいは押されて、必要ない本まで衝動買いしてしまったことが、思い起こせばあるのではないだろうか。

「サロン」といったような名目の講演会に、無料だからと顔を出して、そのままになってしまった経験はないだろうか。

天狼院書店は、新刊書店だが新刊をすべて陳列しているわけではない。
選びに選んで、売りたい書籍を店頭に用意する。
そうして選ばれた本が、買う人を選ぶと言っても過言ではない。

天狼院書店に足を踏み入れたあなたは、書店に並ぶ書籍に選ばれる資格を得ている。
本を選ぶあなたは同時に、選ぶ能力を本に試されることになる。
真剣勝負を、本とすることになるのだ。

天狼院書店は、有料のイベントだけを行う。
そのかわり、聞きっぱなしにはさせない。
あなたの費やした金額に対価を払う書店である。

こうして紡ぎ上げる、本と「あなただけの」世界。
本が余計な音を吸い取った静寂の中で、本はあなたとだけの時間を得られる。
あなたに選ばれるのを待っている本が、密やかに棚に並ぶ書店。
天狼院書店は、そういう書店である。

 

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2016-01-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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