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わたし知ってるよ。あなたが頑張っているの、ずっと見ていたよ。

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H.Tomokoさん わたし

 

記事:H.Tomoko (ライティング・ゼミ)

 

年が明けたばかりのはずが、もう今月も終わりって、いったい1月はどこへ消えたの? と思ってるあなた! お正月はどこで迎えましたか? 箱根駅伝は見た? あの選手たち、すごいよね。ゴールに倒れ込むまで全速力で走り続けたその姿を思うと、胸が熱くなります。

でもね、わたしは声を張り上げていいたい。
「あなただって、すごいよ! ほんとだよ!」

だって、わたし知ってるもの。あなたも箱根の道を走りぬけていることを。それも、ほかにたすきをつなぐ人もほとんどなく、交代なしに一人で走っていることを。

早朝からの第1区。誰よりも先に飛び起きて、朝食の準備をして、家族を叩き起こす。次は、通勤、それから会社の席にすべりこみセーフで、長い2区を走りだす。要求のきつい上司とのやりとりは、権太坂を駆け上るときの厳しさのよう。子供のお迎え時間に間に合うように、最後の急こう配を駆け上がり、2区を終えたら、次は3区。帰宅途中にスーパーに買い出し、ここはフラットに快走ね。今日は、湘南海岸の風を感じてる? 金曜ならば、PTA役員として4区が入る。つなぎの区だと思ってたのに、なぜか議題がいつも荒れて、アップ&ダウンが入るんだよね。さて、やっと家についたら一息つきたい。でももちろんそれもままならず、晩ご飯作りから始まる最後の5区。これが一番長くてつらい。脚力とスタミナなしには、箱根の山上りは無理だから。でもあなたはここでも一気に駆け上る。子供を寝かしつけ、お皿を洗い、ばったんきゅーとベッドに倒れこむまで。そうして翌朝には6区が待ってる。他のチームは区間ごとに選手交代してるのに、あなたは一人で休むことなく走り続ける。ええっと、最後に自分の時間をゆっくり持てたのは、いつだっけ?

「今日もまた残業!クイズ番組見損ねちゃうよ」と嘆く男性同僚に、あなたは「大変ですねぇ」なんて、にっこり微笑んで、同情のフリ。でも本音は、「甘えんな!残業できるって、特権なんだゾ!」 子供のお迎え時間になったらピンポンダッシュで帰れるように、髪を振り乱して、休憩もろくに取らずに働いてるのが、あなただから。「家に帰ったら誰かがご飯つくって待っていて、子供をお風呂に入れてくれて、テレビ見る時間あるなんて、贅沢だっちゅーの」 ひとつの区間に集中して走っていられるって、心底うらやましい。

もちろん「男はつらいよ」って、彼らだって思ってる。否定はしないよ。女たちには見えないバトルがある。でも、彼らのプライドのために、その傷も涙も見なかったフリしてきたから、今となっては視界に入らない。っていうか、男の愚痴なんて聞いてる暇ないよー、ほんと。

「自分は欲張りだから」って、誰かがつぶやいた。「ひとつを選べなかったから」って。そうやって、大変なのはしょうがないんだって、自分に言い聞かせてた。でも、本当にそう? これは欲張った罰なんだろうか?

キャリアか家庭か。仕事か育児か。どうして選択問題になっちゃうんだろ。男ならば、選ばなくてすんだかもしれない2択問題。男ならば、「欲張り」じゃなくて「当然」だったかもしれないこと。

わかってるけど。男だったら、そもそも選択肢がないんだよね。女は選択を迫られて、男は一択を押し付けられる。会社に居場所を見つけられなかった男性は、一体どこに行くのだろう?

子供が熱を出しても、夫は休んでくれないからと、欠勤した朝。「こんなんじゃ、働き続けていけないかも」と、自信喪失。あるいは、幸運にも誰かが見ていてくれたとしても、ぐったりした子を置いて出かけるときに、頭によぎるのは「母親失格」の4文字熟語。父親だったら、何を思うんだろう?

あなたはそうしてまで働いてるのに、区間賞はいつも他の誰かがとっていく。若手のエース君が、後ろからさーっとやってきて、一気にあなたを追い越し走り抜いていったのを、せつない気持ちであなたは見てた。彼の肩の遠い向こうには、雄大な富士山が見える。ねぇ、今、何を考えてる? 「どうしてわたしは、こんな風に走るのを許されないの?」 それとも「どうしてわたしの夫は彼じゃなかったのかな……」 でも、知ってる?そこまでバリバリ仕事ができる人には、必ず良妻賢母の奥様がいて、しっかり彼のサポート役を勤めてる。だから、そこはあなた向きのポジションじゃない。それより、そんな完璧な男なら、他の女が放っておかなくって、ぜったいこっそり浮気するって! 島耕作読んだでしょ?

「どうして?」って、ふっと思うよね。優雅に茶のみ友達とランチしてる専業主婦の奥様を見ては、「あっちに行く道もあったはずなのに、どうして私はこっちを選んだんだろ」って、特に憂鬱な雨の日には、隣の芝生は青いどころか、ブーゲンビリアが咲き乱れる花園みたい。でもね、彼女たちも時々同じように思ってる。「どうしてこっちの道を選んじゃったのかな、私だって本当は」って、案外ね。選択肢があったが故の苦悩。だから、時には話しかけたらいいんじゃない? 彼女たちも大変だってわかったら、ずっと気楽になるんだから。

「週末ゆっくりできました?」って、若者よー、空気読めー! 「いやー、会社にいるほうが、まだ楽だから」って言ったあなたに、「そうなんですよねー!」って、毎朝丁寧に髪の毛巻いてる人が言う? ドン引きしちゃうよ。こっちはシャワーもろくに浴びる暇なく会社に来てるのに。女子力なんて幼稚園児の娘にとっくに負けてるし。でもね、あなたにも、そんな美しき日々があった。着飾って、自分のことだけ24時間考えていて。いつか彼女たちにも、わかる日が来る。やがておばさんになり、おばあちゃんになり、愛を集めることよりも、愛情を周囲の誰かに与える喜びがあるんだってこと。

だけど、「女の人はやっぱきれいじゃないと」って、何それ? そんなおやじには言い返せ。「男はやっぱり顔ですよ。仕事だけできてもねー。なんていうか、男を捨ててるみたいで不幸そう?」

生活臭があって、なぜ悪い? つまらないプライドは、ゴミの日に一緒にだしちゃおう。あなたのスーツに子供がつけたご飯つぶも、会社でカバンから息子の靴下がでてきたことも、自虐ネタにして、笑いを取ろうよ。そのほうが、ずっと楽だし、うまくいくって。保障する。

そうやって、あなたは今日も、たった一人で駅伝を走る。
どうして?
自分が自分であるために。
他の誰でもない自分の足で勝負するために。

そう、わたしはあなたの話をしているの。
楽しみながら、落ち込みながら、ワーキングマザーをしているあなたのことを。
すべての中途半端さにうんざりしながら、ジレンマに絡み取られながら、それでも走るあなたのことを。

雑誌に出てるすごママなんか、無視してね。あれは都市伝説で、存在してない。比べないで。あなたはあなたの行くべき道がある。

抱え込みすぎないでね。時には、誰かにたすきを預けて、区間のひとつやふたつ、お願いしちゃえ。夫や子供やジジババにもね。言い方をよく考えて、そして、花をもたせることをお忘れなく。ちょっと大げさかなって思うぐらいに、褒め殺して。色物・白物ごっちゃに洗濯した夫に「使えねーっ!」って叫びたい気持ちはわかる。それでも、そんなパパを娘は頼もしく思ってる。誰よりも、夫はあなたに認めて欲しがってる。だって彼はあなたを選んだ人。

息子も中坊になったら、自分でお弁当を作れって命令しちゃえ。それは手抜きや、愛情不足じゃない。そうやって、彼らは料理ができるようになり、いつか彼女に愛される男、妻に感謝される男に育っていく。

大事なことは、たすきをなくさないこと。どんな区間を走っていても、絶対落としちゃいけないもの。もし余命が一週間だったら、誰と何する? その答えが、あなたの優先順位なの。1日じゃ短すぎて選べない。1ヶ月じゃ選びすぎる。1週間で、絶対会いたい人、やりたいこと。それがあなたの「一番大切」。時々は、立ち止まってもいいんだよ。芦ノ湖の水面の輝きが見える? なんなら、今日はとっても天気がいいから、白鳥ボートに乗るのもいいよね。

だって、わたし、知ってるもの!
あなたがどんなに頑張っているか、ずっとずっと見てきたもの!

忘れないでね。上り道も、下り道も、風が吹く日もあなたはちゃんと箱根の剣を走りぬけ、そしていつかゴールする。私には、あなたが笑ってるのが見える。だから今日も走り続けて。そして時には沿道で応援してくれる人にも手を振って。

ほら、今日もまたゴールに近づいた!

 

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2016-01-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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