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ただ絆創膏を貼るよりも効果的な傷の治し方


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記事:内藤睦(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
子どもってどうしてこう絆創膏が好きなのだろう。
 
子どもはしょっちゅう、こけたりつまずいたりして膝や腕に傷を作り「イタイ、イタイ」と泣き叫ぶ。
とはいうものの、せいぜい擦り傷や打ち身で、そこまでひどい傷ではない。
なのに、喉が張り裂けんばかりに声を上げ、目から涙をぽろぽろ流し、この世の終わりのような表情で号泣する。
そんな時、絆創膏を取り出して貼れば、あら不思議。すぐに泣き止むのだ。
「さっきまでの号泣は何だったの?」というくらい。数分後にはキャッキャ笑っていたりする。
貼っただけで痛みが消えるのだろうか。
いやいやウソでしょ。絆創膏は傷口の保護効果があるだけなんですけど。
恐るべし、子ども心。
恐るべし、絆創膏の効果。
ちなみに、その後けっこうあっさり剝がしてしまうことも多い。
それでいいのか。いいらしい。
 
かく言う私も、子どもの頃は絆創膏大好きだった。
好きすぎて、傷もないのに鼻の頭に絆創膏を自分で貼って、近所のおばちゃんに「どうしたの? えらい傷作って」と心配されたこともあったらしい。
私の絆創膏好きは少し違う。
あの粘着テープのど真ん中に貼ってある長四角のガーゼの肌触りが優しくて大好きだったのである。
特に、かつてのジョンソンエンドジョンソンのもの、袋に赤い糸が入っていてそれでピーッと破るタイプの絆創膏の、ガーゼの手触りは最高だった。
ヘンな絆創膏愛である。
 
特段ケガがなくても絆創膏を体に貼り、そっと触るとなんだか気持ちが安らいだ。
宿題に疲れた時。親とのやり取りで悲しい思いをした時。話す言葉がなかった時。眠い時。疲れた時。絆創膏はいつも傍に置くことができた。
私はそれをそっと触って安心していた。
やっぱりヘンな絆創膏愛である。
 
思春期の頃、私は友達関係をこじらせて、うまく周りと話せなくなった。
誰かと四六時中一緒にいることができなかった。孤独だった。
それで大丈夫なフリをしていた。自分なりに普通に振る舞っていた。
でも本当は傷ついていた。
他の人が何を考えているかわからず、何を話せばいいかわからず、真剣に悩み苦しんでいた。
そして人と話せずにいる自分は他の人と違うと感じ、さらに気持ちを痛めた。
 
その頃、私の心の傷を癒してくれる存在は、絆創膏ではなく本だった。
人間関係や気持ちの辛さを何とか解決できる方法はないか。そういったことが載っている本がないか、本屋さんや図書館で探した。
 
今から30年以上前のことである。
人間関係や悩みごとの本や「雑談力を上げる」といったコミュニケーションスキルの本など、まだ存在しなかった。
「心を軽くする言葉」や「マンガ心理学入門」といった本はあったが、私の悩みをストレートに解決してくれるような本はなかった。
それでも、それらの本をむさぼり読んだ。
その結果、どうだったか。
残念ながら、心は痛んだままだった。人と話せるようにはならなかったのである。
 
結局私のコミュニケーション力が少し向上したのは、大学進学後だった。
一人暮らしを始め、近くに同級生が住んでいたことがきっかけで、クラスの同級生と話す機会が生まれた。サークルに入ってたくさんのメンバーと話すことになった。
おしゃべりな子の中ではとにかく寡黙だったと思うが、それでも人と話すことができるようになった。いろんな友達がたくさんできた。
 
今となっては思う。
本は傷ついていた私に優しく接してくれたが、そこには治癒力はなかった。
絆創膏は傷口を保護して、癒してくれるが、それだけでは不十分で、自分から動かなければならなかったのだ。
だから、自分が他人に話しかける経験を積む。人の話を聞く機会を作って人の気持ちを知る。
とにかくその経験を増やすことで、傷は癒えていったのだと思う。
傷口を治すのは、自分の実際の行動なのだ。
 
だから、もし今、人と話せなくて困っている人がいたら、私はこう伝えたい。
 
まずはつらい心に絆創膏を貼りましょう。
たとえば美味しいものを食べたり飲んだり、遊んだり、趣味を楽しんだり、といった好きなことをしましょう。
心が楽しくなる、自分にとって優しいことをするのです。
そうやって心の痛みが和らいだら、自分の中にある治癒力が高まってきていると思うので、その上で行動を起こしましょう。
お店に出かけて人に会う。オンラインで新しい人に会う。
趣味の集まり、地域の活動、何かの目的の元に活動するサークル、異世代が集まる交流会。とにかく何かの場に参加してみましょう。
がんばってトライすれば、きっと何かしら変化が起こると思うのです。
もちろん、参加してみたら合わない場で、疲れたり嫌な思いをしたりするかもしれません。でもいろんな場があるから、めげずに疲れたらまた心を保護して、自分の治癒力を高めたらいいんです。
目の前にいる人の話を聞いてみるのもいいと思います。
意外と「何を話そう」と思っている間は、他の人の話を聞いていなかったりするもの。
耳を傾けたら、自然に話すことが思い浮かぶかもしれません。
 
絆創膏は治癒力を持たない。でも優しく応援してくれる。
その応援を受けて、勇気を出して行動すれば、今よりいい方へ、きっと、変わる。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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