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途中下機して知った毎日が縁日の街

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記事:三浦康志(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「リバーウォークって何ですか?」
リバーウォークを知らずにサンアントニオに来る客がいるんだ~、という顔をフロントマンはしていました。
 
サンアントニオはアメリカテキサス州の主要都市です。サンアントニオに来たのは、たまたまでした。サウスウエスト航空の導きでやってきました。
 
サウスウエスト航空はアメリカの格安航空会社で、その革新的な経営がとても話題になっていました。ロサンゼルスから本社のあるダラスに行く際に、サウスウエスト航空に乗ってみたのです。
 
ロサンゼルス―ダラス便を調べてみると、他の航空会社のようにダイレクト便がありませんでした。フェニックスとサンアントニオを経由してダラスに到着する便が示されました。そのように経由するなら、行ったことのない街に行こうと思い、サンアントニオに「途中下機」したのです。
 
ホテルにチェックインしたのは夕暮れ時でした。フロントマンに教えてもらったリバーウォークの場所に行ってみました。でもそこは高層ビルが立ち並ぶダウンタウンでした。リバーウォークを直訳すると、川沿いの遊歩道、です。そんなロマンチックな場所は見あたりませんでした。
 
探し歩いている際に、道路ではない、高層ビルの切れ目の下の方に小さな川がありました。そしてその両側に遊歩道がありました。これがリバーウォークでした。見下ろした場所は橋だったのです。
 
ダウンタウンの表層から埋もれたような位置にあるので気づかなかったのです。地下のような位置です。不思議な感覚です。興味がわいて調べてみました。
 
リバーウォークの川はサンアントニオ川で、名実とともにサンアントニオを代表する川です。この川が暴れ川で時々氾濫を起こして住民を苦しめたそうです。その洪水対策として川の流量を増やすために深く掘り込んだのです。
 
川は、ダウンタウンのところでUの字に湾曲しています。Uの字だと川が利用しやすいために人が多く住み着き、街ができたのだと思います。しかし、近代になるとこの湾曲が洪水を引き起こす元凶だと主張する人々によって、U字の口のところにショートカット水路を設けて一直線に作り変えました。
 
そうなると、U字部分は不要になるとして、埋め立ててはどうかという案が出ました。埋め立て案が通っていたら今のリバーウォークは無かったことになります。議論の末、川は存続させ、水位を下げたうえで、両岸を植栽して整備しました。それがリバーウォークの原型です。
 
夜の帳が降りてから、リバーウォークに降りてみました。そこには「夢のような別世界」が存在していました。
 
自動車が支配する地表とは全く異なる、人中心の世界が展開されています。
 
リバーウォークには自動車は存在しません。バイクも自転車もありません。移動手段は徒歩だけです。
 
川には乗り物が存在します。それは観光ボートです。20人乗りほどの小さな船で。船長兼ガイドが乗客を楽しませています。次から次へとボートがやってきます。自分も乗ろうと思い、船着き場に行ってみました。水路が引き込まれたショッピングセンターに船着き場はありました。
 
ショートカット水路ができたことで、サンアントニオ川はU字型から口字型に形を変えられました。ボートはその口の字を一周するのです。リバーウォークの全体像が理解できました。
 
川沿いは単なる遊歩道ではありませんでした。
 
いわば「縁日の参道」です。
 
カフェやレストランの外席が遊歩道に展開され、楽しそうに食事する風景がボートから見渡せました。メキシコ風の楽団が路上ライブを展開しています。その合間を縫うように人々がそぞろ歩きしています。
 
人々ははしご酒を楽しみ、
はしごショッピングを謳歌しているのです。
 
その人々がボートを見つけると手を振ってくれました。ボートの人々も手を振り返しています。
 
ボートを降りて、今度はリバーサイドに陣取って、次々とやってくるボートを眺めてみました。ボートは電飾が施されてとてもきれいでした。リバーウォークの縁日参道には見世物小屋はありませんが、川を行きかうボートが見世物なのです。山車のようです。
 
日本の縁日参道と異なり、リバーウォークでは毎日毎晩夜店が展開されています。毎日が縁日のような賑わいです。お祭りのようです。フェスティバルなのです。
 
自動車による制約から、ここでは人々が解放されています。その開放感が縁日を盛り上げるのだと思います。リバーウォークには信号もありません。
 
翌日、日中にリバーウォークを再訪してみました。昼間の顔は夜の顔とは少し違いました。遊歩道を純粋に散策している人が多くいました。
 
地上に戻ると別世界です。その落差は昼も夜も同じです。地上は自動車と高層ビルと喧騒の世界です。地下世界であるリバーウォークは、安らぎとウエルビーイングな世界なのです。
 
同じ場所でありながら高低差によって別世界が併存しています。そのような異次元体験できる地がサンアントニオです。誘ってくれたサウスウエスト航空に感謝申し上げます。
 
 
 
 
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2021-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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