メディアグランプリ

いや、気持ち悪いって言われても、僕はこうしないと落ち着かないので……



記事:岸★正龍さま(ライティング・ゼミ)

 

漫画喫茶での僕の話である。
ネットカフェではない。テーブルとソファがオープンに並ぶ、鉄板ナポリタンが名物の漫画喫茶での話である。

最初に告白をする。
僕はひとつの漫画を一巻から順に読んでいくことができない。色んなジャンルの漫画の一巻だけを持ってきて、一巻だけを次々と読んでいかないと落ち着かないのだ。
たとえば「リクドウ」の一巻を読んでから「ミュージアム」の一巻を読み、そこから「ナナのリテラシー」を読んで「黒街」に移り「霊能力者 小田霧響子の嘘」の一巻で締める。ジャンルでいうなら、ボクシング→クライムグロ→電子出版ビジネス→シュールホラーギャグ→心理ミステリ。と、そんな感じ。
同伴者がいる場合はそんな僕の様子を見て、「お前さ、そんな読み方してストーリー頭に入るの? っていうか面白いの? しかもその順番、見ているこっちが気持ち悪くなるよ」と文句を言ってくる。
いやいやいやいや、ほっておいて欲しい。
僕はこの読み方じゃないと落ち着かないんだし、一切迷惑もかけていない。個人の漫画喫茶での過ごし方を気持ち悪いと言うことも「マンハラ(漫画はちゃんと巻数に沿って読めよハラスメント)」とか名づけて取り締まってくれよ! と、毎度この言葉を言われる度に憤慨を覚える。

いいかい、僕がこういう読み方しかできないのには、深い理由があるんだぜ。

ATTENTION!

ここから、なぜ僕がこんな読み方しかできないかの理由を明かしていくが、それはひと言でまとめると「エニアグラムってスゲェぜ!」という内容である。もっといえば、十年以上学んでいる僕のエニアグラムラブ語りだ。暑苦しいし、わかりにくいところもあるだろうが、少なくとも僕と僕の周りの少なからぬ人々はこの考え方を知ることで人生が圧倒的に楽になったので、ぜひ最後まで読んでほしい。

さて、ということで早速エニアグラムの話である。

エニアグラムとは、古代ギリシャ哲学をルーツに、最新の心理学を取り入れて発展した性格類型論。9つのタイプをベースにした最大108バリエーションの性格について、驚異的な精度で分析をしている。

驚異的。そう驚異的なのだ。
本当の本当に驚異的な精度で人の内側を見抜くため、エニアグラムに触れたことのある人でその精度の高さに驚かない人はいない。
自分のタイプが分かったときの一番多い反応は「笑っちゃう」。なんでそんなに自分のことがわかるのかが驚異的過ぎて「笑っちゃう」しかなくなるのだ。
アップル、トヨタ、コカコーラ、IBM、ソニー、モトローラ、コダック、ゼネラル・モーターズ、ヒューレットパッカード、ボーイング、アリタリア航空、プルデンシャル、プロクター&ギャンブル、デュポンなど世界の錚々たる企業が注目し、取り入れていることも精度の高さを証明しているといえよう。

今回ここでお話ししたいのは、「囚われ」という考え方。
エニアグラムが性格を分析する際に、出発点としている基礎部分だ。
僕ら人間はみな「囚われ」を持って産まれてくる。その「囚われ」を一生抱えて生きていく。しかし「囚われ」は無意識の層にあるから、僕ら自身はそんなものが自分の中にあるとはまったく思っていない。それをいいことに「囚われ」は僕らの行動を密かに巧みに操ってくる。

『僕を探しに』という絵本を読んだことがあるだろうか?
パックマンのようなヤツが、欠けている自分の欠片を探す、シェル・シルヴァスタインの手による絵本である。僕自身は「囚われ」をその欠片のようなものだと考えている。僕の欠けている部分が、僕を完全体にするために、僕を操り衝動的に行動させる。そんなイメージ。

具体的にいこうか。
僕が抱いて産まれた「囚われ」は「貪欲」と名付けられている。
「貪欲」は僕に「いまおまえが持っているものでは、おまえは幸せになれないぜ。もっと幸せにしてくれるものを、ほらサッサと探しなよ!」という強い衝動を常に与えてくる。だから僕は何かの選択をしたときに必ず、この選択は正しいのか? 間違っていないのか? もっと他にいい選択があるんじゃないのか? と揺れ動いてしまうのだ。自分で自分が嫌になるほどの、隣の芝生が青く見えて仕方がないホリック。

漫画喫茶で「一巻だけ並列読み」をしないと落ち着かないのは、まさにこれ。
一巻から順番に読む? それってその漫画しか読まないってことでしょ? もっと面白い漫画を読み逃したらどうするの? 漫画喫茶には山のように漫画があるわけじゃん。どれが一番面白いかは全部読んでみないとわからないわけで、だったら「一巻から順番読み」で時間を無駄にしている場合じゃない。ひとつの漫画だけを読んでいて、もっと僕を満たしてくれる漫画に出会うチャンスを見逃すなんてあり得ない! そうだそうだ、できる限りたくさんの漫画を読もう。
「貪欲」に操られている僕は、脊髄反射レベルの速さでそう結論を出し、結果一巻並列読みをしてしまうわけである。

しかも面倒くさいことに、このホリックは出口なしなのだ。
音が鳴ると自動的に反応してしまうフワラーロックのように、なにかを選択すると無意識下の「囚われ」が僕を操り「いま僕がした選択より優れた選択が外にある」という気持ちを自動的に発動させ、隣の芝生が青く見えてしまい、衝動に負けて隣の芝生に移り、けれど隣の芝生に移ったらそのまた隣の芝生が青く見える気持ちが自動発動するわけで、まさに出るに出られぬアリジゴク。

やっかいである。
実にやっかいである。

さて、あなた。
あなたにも、こういうやっかいな心の動きがないだろうか?

僕と同じ「より良いものがどこか他で手に入ると感じ欲しがってしまう」衝動かもしれないし、あるいは以下のどれかのような衝動かもしれない。
・ 自分の想いを成し遂げるためには戦わないといけないと感じる
・ 争いを避けるために表面的に人に合わせる
・ すべて自分で解決しなければならないと肩に力が入ってしまう
・ 地位や関心を得るために自分を駆り立てる
・ 人からどう見られるかを常に考えてしまう
・ 現実から逃避して概念や知的世界に入り込んでしまう
・ なんだかしらないけど漠然とした不安がいつもある
などなどなど。
ひょっとしたらあなたにはピンとくるものがないかもしれない。別にそれはそれでいい。間違ってもらうといけないのだが、この文章の目的はあなたのタイプを判断することではない。というか、そんなのどうでもいい。覚えておいていただきたいことはたったひとつ。

その衝動に従ってはいけない。

「囚われ」に従って衝動的に行動してしまうと本来手にできたはずの果実を失うからだ。僕の漫画喫茶でいうなら、完結まで続けて読んではじめて味わえるその漫画の豊かさを、一巻だけ読み散らしかてる限り手にすることができない。衝動に負けて、豊かさを失っているわけだ。
大切なことなので、もう一度繰り返す。

その衝動に従ってはいけない。

じゃあどう対処するのか?

後回しにするのだ。
本当は止まるのがいい。ガツンと衝動がきたとき、「囚われ」が操ってきたぞ、その手に乗るもんか、とそこで止まれればベストだ。けどね、これ、言うは易く行うは難し。その衝動はとてつもないパワーなので止まるのが大変。というか正直僕は止まれない。だから後回しにしよう、って考えることにしている。

漫画喫茶に入って、同じ漫画の一巻から五巻をもって席に座る。
すぐに「この漫画だけでいいのか? 他の漫画も同時に読むべきじゃないのか?」って衝動がやってきて席を立ち他の漫画も持ってきたくなる。そこでまずは大きく深呼吸をひとつ。そして自分にこう言うのだ。
「まず一巻を読もう。まったく面白くなかったら次の漫画を探しに行こう」
で、一巻を読む。一巻を読み終えたときに「二巻を読んで面白くなかったら」って後回しにして、二巻が終わったときには「三巻を読んだら」って後回しにする。そうしてどんどん後ろに回して、知らないうちに衝動が消えるのを待つようにしている。

バカにみたいに思うかもしれないが、これがなかなかに効く。
1, いつものパターンの衝動がくる
2, 深呼吸
3, その衝動を後回しにして、目の前のことに集中する
頭の隅にこの公式を置いておいていただき、ぜひ試してみて欲しい。

などと。
偉そうに書いたが、僕はこのライティングゼミに関しても現在進行形で、隣の芝生が青く見えて仕方がないホリックに苛まれている。こうして文章を綴りながら「おまえは文章の修業をしたいってここにいるけど本当にここがベストなのか? 他にもっと素晴らしい場所があるんじゃないのか? 探せよ探せ」と慣れ親しんだ「貪欲」がドンと突き上げてきて、つい「ライティング セミナー」とかで検索してしまっている。

けれど、僕は知っているのだ。
ここで教えてもらっていることに集中し、しっかり理解し毎週文章を提出することが一番修行になり、豊かな果実に結びつくことを。

だから引っ込んでろよ、おれの「貪欲」。
負けるもんか!

追伸
この僕の文章を読んで、嬉しいことにあなたがエニアグラムに興味を持ってくれたとする。きっとあなたは「エニアグラム」で検索し、ネット上に出てくるタイプ判定の質問に答え自分のタイプを知るだろう。
けれど残念ながら、それがあなたの本当のタイプである確率は限りになく低い。僕はこれまで300人以上の人とエニアグラムについて語ってきているが、ネットのタイプ判定で自身の正しいタイプに行き着いた人は皆無だ。理由は、ネットの判定は「本当の自分」ではなく「なりたい自分」や「そうあらねばならない自分」を出してしまうから。
だからそこで出てきたタイプについては、「そういう可能性もある」くらいに軽く考えてもらい、そのタイプに決めつけて自分の可能性を狭めることだけはしないでください。

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-02-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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