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手作りお菓子は、世界平和の架け橋である


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記事:遠山麗子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ケーキ食べる?良かったら召し上がれ~」
幼馴染の家に遊びに行くと、ドアを開けた瞬間から、焼き立てケーキの香ばしい香りがした。
その香りだけで、私はとても幸せな気持ちになった。
小学校低学年、鮮明な記憶である。
 
バターをたくさん使ったパウンドケーキやマドレーヌ、生クリームと牛乳で作られたであろうアイスクリーム……
お皿やカップに上品に盛られた手作りお菓子は、若干8歳の私にとって、衝撃的な美味しさで、「もっと食べたい!」という心の声を抑え込むのが大変だった。
その幼馴染の家に遊びに行く主目的は、遊ぶことより、お母さん手作りのお菓子を食べたかったから、と言っても過言ではない。
私にとって、夢のような幸せな時間だった。
でもその夢は、我が家に戻った瞬間、覚める。
 
私の実家は、商売をしていた。
母は、いつも忙しく動き回り、大家族の三度の食事を作るだけで、手いっぱい。
家事より働くほうが好きだった母は、そもそも料理が苦手。
加えてオーブンやレンジなどの家電製品が、我が家には無かったので、焼き菓子なんて作りようがない。
 
私は、母が大好きだった。
だから困らせるような言動はしなかったし、わがままを言うこともない子供であった。
 
数メートルしか離れていない幼馴染の家では、ソファーに腰かけ、お上品なお皿に乗ったおやつを、親子で談笑しながら食べていた。
子供ながらに自分の家庭とは全く違う、裕福な家庭というものを肌で感じていた。
声には出さなかったが、すごく羨ましかった。
 
一方、ガチャガチャした雑多な我が家は、にぎやかで笑いも絶えなかったけど、裕福な家庭とは程遠く、当時の私には、とても惨めに思えた。
おまけに忙しい母と落ち着いて話をする時間は、ほとんどない。
正直、寂しかった。
 
大人になったら、自分でお菓子を作ろう。
そしてゆったりとお菓子をつまみながら、子供の話に耳を傾ける母になりたい。
心の奥底で、そう決めた自分がいた。
 
時が経ち、私は結婚した。
手作りお菓子に、人の何倍もの憧れを抱いていた私は、来客が来るたび、簡単に作れるケーキを焼いて振舞った。
一番出番が多かったのは、バナナケーキ。
バターを使うと香りも味も良いけれど、とても高価。
だから負担なく、気が向いたらすぐに作れる、サラダ油をバターの代わりに使うバナナケーキを好んで焼いた。
 
憧れの手作りお菓子。
自分で作るようになったら、拍子抜けするくらい簡単で驚いた。
私がする事と言えば材料を計量して、混ぜて、型にはめて焼くだけ。
こんな簡単な工程なのに、食べた方々は一様に感動してくださる。
調子づいてお菓子教室に通ったり、料理上手な友人に教えてもらったりして、レパートリーはどんどん増えた。
喜んでもらえることが嬉しくて、誰かに会うたび、手作りおやつを持って行った。
 
結婚4年目に息子が、その後に娘が生まれた。
子供たちのおかげで、私が憧れていた、お菓子作りが好きなお母さんになる事が出来た。
 
定番のバナナケーキ、チーズケーキ、プリンにメロンパン……
幼稚園や学校から帰ってくる時間を見計らい、焼き上げる。
ドアを開けた瞬間に香りに気づき、目をキラッキラ輝かせる顔。
何が焼けたのかをニコニコしながら考える顔。
嬉しそうに、何個もお代わりする子供たちの姿に、私はどれだけ癒されただろう。
 
私がお菓子を作る一番の理由は、小さな自分の世界を満たすことだと思う。
自分の手でお菓子を作ることが出来る幸せ。
好きなだけ食べられる幸せ。
人に与えられる幸せ。
 
小さい時に憧れていた母の手作りおやつ。
当時は、叶わなかった夢を、自分が自分に作ることで叶えている。
 
お菓子作りをしている時、私の心はとても平和で幸せだ。
そしていつも、そのお菓子を差し上げる方を思い浮かべている。
自分で言うのもどうかと思うが、作製中の私は、慈愛と母性に溢れていると思う。
 
食べてくれた人のご意見は、色々だ。
「美味しかった」
「少しなのに、心が満たされる」
「ずっと食べていたい。」
「一口食べて、泣きそうになった」
 
大袈裟かもしれないが、少なからず自分の想いは伝わっていると思われる。
 
私のお菓子を食べてくれた人が、心穏やかに平和でいられるように。
今を楽しんでる人が、もっと楽しくなるように。
泣いている人が、泣き顔から笑顔に切り替わるように。
怒っている人が、怒りを忘れて、つい笑ってしまうように。
 
私がお菓子を作る一番の理由は、小さな自分の世界を満たすことであった。
それがいつの間にか、自分と関わる人たちの平和、その先にある世界平和を願いながら、作るようになっている。
そうやって私はこれからも色んな顔を思い浮かべ、大きな地球の母になった気持ちで、食べた人を幸せにするお菓子を作っていこうと思う。
 
 
 
 
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2021-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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