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愛の伝え方を知っていますか


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
ずっとそこにあるのはわかっていた。
 
気にするなと言うのが無理な話なのだ。
 
ドアが開くたび、飛び込んでくる奇抜なピンク色の数字
 
真っ白な背景に浮かぶ文字たちが、ぼくに語りかけてくる。
 
全部うまくいく、心配しないで、と。
 
何度手に取りかけたことだろう。
 
でも、思いとどまってきた。
 
ぼくが求めているものは、そういうことじゃない。
 
「人は上っ面じゃない、中身だ。小手先のテクニックでどうにかなるもんじゃない」
 
ずっとそう思ってきた。
 
売れているのはわかっている。
 
2020年ビジネス単行本のベストセラー
 
2021年上半期でもベストセラーと人気が衰える気配は全くない。
 
そこには僕の知らない秘密があるのだろう。
 
でも認めたくなかった。
 
大切なのは人としての「あり方」 なのだ。
 
とはいえ、本当にこのままでいいのだろうか、
 
不安はある。
 
自分の信じる道だと突き進んでいけば、
 
いつか光は見えてくるのだろうか。
 
実際のところ、今日も仕事で失敗した。
 
苦手な部長へのプレゼン。
 
資料も準備したし、事前の練習もした。
 
でも、本番になるとどうしても緊張してしまう。
 
普段以上にたどたどしい話し方になってしまう。
 
ぼくの苦手意識は部長も分かっているのだろう、
 
つっかかるたび、イライラ度合いが増している。
 
「もう、お前の話はいい」
 
最後にはそう言われてしまった。
 
それに比べて、同僚たちの見事なこと。
 
内容なんてぼくとたいして変わらないのに、
 
部長だけじゃない、まわりのみんなも自然と笑顔になっていく。
 
お互いに冗談を言い合って、まるで友達同士の会話のようだ。
 
うらやましい。
 
結局のところ、いつだってそうなのだ。
 
仕事だって、プライベートだって
 
うまくいく奴らは「話し方」 が上手。
 
流ちょうに言葉を操って、みんなを笑顔にしたり、安心させたり。
 
それに比べて、ぼくはいったいなんなんだ。
 
中身が大切、どれだけそう思っていたって伝わらなければ意味がない。
 
もう認めよう。自分に正直になろう。
 
ぼくだってみんなを笑わせて頼りにされてチヤホヤされたい。
 
もう手段なんて気にしていられない。
 
視線を上げるとピンク色の数字がぼくを誘惑する。
 
たったそれだけで甘い世界を味わえるのなら……
 
魂を悪魔に売るような気持ちで手に取った本のタイトル、
 
それは「人は話し方が9割」
 
さあ、どんなテクニックで話し方を改善してくれるのか、
 
そう期待して読み始めたぼくが襲われた感情、それは、
 
本当かよ?
 
「苦手な人と話す必要はない。自分が気持ちよく話せる人といれば、話し方は自然と上達する」
 
「自分から話さなくていい。聞き役に徹することで、あなたの話も聞いてもらえるようになる」
 
うーん、本当か。
 
そんな簡単なことで、話し方って上達するのだろうか。
 
求めていたのは今すぐにでも使えるテクニック。
 
でも、いくらなんでもこんなに簡単にはいかないんじゃないか。
 
ただ…
 
このままじゃいつもと同じパターン。
 
たくさん本を読んで知識を身につけても実際に使ってみないのが、いつものぼく。
 
どれだけ本を読んだって変われない。
 
だまされたと思って試してみるか、
 
こんなに楽な方法なら、失敗したって失うものなんてなにもない。
 
とはいえ、どこから始めたらいいものか、
 
具体的な方法がないまま、翌日会社に向かうと、
 
エレベーターで一緒になったのは苦手な部長。
 
昨日の失敗の後だけに、いつも以上に居心地が悪い。
 
普段だったら、気まずい思いから何かを話し始めてしまうところだ。
 
でも……
 
本の言葉を思い出す。
 
「苦手な人と話す必要はない」
 
よし、どうせダメ元、試してみよう。
 
「おはようございます」
 
声を張ってあいさつした後、心を決めて黙ってみる。
 
部長の方も、おっ、おはよう、と言ったきり。
 
昨日のこと、怒っているのかな、
 
気にならないかと言えばうそになる。
 
ただ、そこをグッとこらえて、とにかく黙る。
 
するとエレベーターの降り際に部長が一言
 
「昨日のプレゼン資料、一つ、修正してくれ」
 
あれっ、ほとんど話してないけれど、
 
いつもよりは感触が悪くないような……
 
席に着き、さあやりますか、と修正に取り掛かる。
 
するとすぐに耳に飛び込んできたのは、「おい」 という声。
 
目を上げると、部長がぼくの目の前にドカッと座る。
 
「お前の昨日の資料、やっぱり俺の理解と違うんだけど」
 
こうなると一方的に話が続くのがいつもの展開。
 
先ほどの修正の件でしたら、今すぐに
 
と言いかけて、エレベーターでのことを思い出す。
 
ついつい先回りして弁解したくなってしまうのだけど、
 
ここも、まずは本のアドバイス。
 
言葉を挟まず、話をきちんと聞いてみる。
 
なるほど、そうなんですね、とうなずきをいれて、
 
部長の言葉を繰り返してみる。
 
すると、どうだろう。
 
いつもは感情的になっていく部長の様子がちょっと違う。
 
少しずつ落ち着いていくとでもいうのか、
 
ぼくを見る目にも、穏やかさがあるような気がする。
 
その後も、話を勝手にまとめようとしたり、
 
部長の会話を奪ったりしないで、
 
聞かれたことにだけ、正直に、丁寧に答えることを心掛けた。
 
部長が求めていることって何だろう、それだけを考えた。
 
しばらく続いた沈黙にも、
 
どうでしょう、と不安で聞きたくなるのをこらえていると、
 
「よし、わかった」 部長が突然そういって席をたつ。
 
ちゃんと考えているじゃねえか、
 
離れ際、そういった部長が笑顔だったのは見間違いだったのか
 
それにしても、一体何があったんだろう。
 
今日のぼくは、ほとんど話してなんていない。
 
部長が一人で話して、勝手に納得していっただけ。
 
それなのに部長はあんなにも満足そう。
 
これくらいでいいのなら、苦手な部長とだって、ぼくにもできるのかも。
 
そう思った時、本のある言葉が思い浮かんだ。
 
「コミュニケーションの基本、それは『共感と寄り添い』
 
人は誰だって自分に一番興味がある。
 
だから、自分に関心を示してくれる人を好きになる」
 
そういうことか。
 
部長だって、誰だってそうなのだ。
 
みんな自分が大好きなのだ。
 
話を聞いてもらいたいし、大切にしてもらいたい。
 
だから、ぼくは自分から話す必要なんてないのだ。
 
ただ、聞いてあげればいい。
 
寄り添って共感すればいい。
 
よくよく見てみれば、うまく行っている同僚たち
 
彼らだって、話を聞くのに徹している。
 
だから、愛されているんだ。
 
ぼくはすっかりだまされてしまっていたようだ。
 
大切なのは「話し方」 だと思っていた。
 
でも違う。
 
大切なのはむしろ聞き方
 
この本の本当のタイトルは「人は聞き方が9割」 じゃないか。
 
いやいや、ちょっと待て。聞き方だけじゃ物足りない。
 
この本のキーワードは『共感と寄り添い』 のはず。
 
それは相手を思いやる気持ち……
 
なんだ、やっぱりそうなんだ。
 
ぼくは間違っていなかった。
 
大切なのは人としての「あり方」
 
人に対する愛じゃないか
 
そしてなかなか伝えられない愛を相手に伝えるのが、
 
聞く姿勢も含めた、話し方ってわけですか。
 
そういえば、この本はこんなことも言っていた。
 
「相手のことを大切に思っていれば、自然とあなたの周りには嫌いな人はいなくなる」
 
確かに部長のこと、苦手意識は少し減ってきているかも。
 
うーん、話し方一つで愛の問題まで改善できるとは。
 
いやいや全くまいりました。
 
「人は話し方が9割」
 
本当に効きました。
 
 
 
 
***

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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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