いつなりきるの? 朝でしょ! しかも早朝!
記事:菊野由美子さま(ライティング・ゼミ)
「今朝もいたいた! 今日は誰のなりきりメイクレッスンなんだろう?」
朝7時。出勤前のとあるカフェ。
店内の奥の7人掛けほどのテーブルに、おそらく出勤前と思われる女性たちが、5名ほど座っている。
彼女達の出で立ちに、一つだけ共通していることがある。
それは、
全員大判のマスクを着用しているのだ。
季節にかかわらず、マスク姿の人なんてめずらしくともなんでもないが、
5名ぐらいの人数で、しかも早朝に横一列に並ばれると、「何事だろう?」と意識が向かってしまう。
そのうち、何回かこの団体と出くわすうちに分かってきた。
これは、朝活を利用した、「なりきりメイクレッスン」なのだ。
朝、出勤前に、レッスン受講者はすっぴんでカフェに集合する。なので、みんなマスクが必須なのだ。
まず、30分で今日のメイクのポイントを講師(この方は先生なので、マスク着用はなし)が説明する。
そして、10分ほどでメイク道具のチェック。ここで、自分に足りない道具やコスメを貸し借りするのだ。
そこから15分で一斉に各々メイクがスタートする。
先生によると、出勤前の朝にタイムリミットを設けてメイクをすると、受講者の集中力が半端ないそうだ。そりゃそうだ。
ここでのメイク完成度が、その日一日のご機嫌具合に直結するのだから。
そして、最後の5分から10分で先生の手直しが入り、受講生はみんな、なりきりメイクを完成させて、アゲアゲ気分で出勤していく。
確かに、私もメイクレッスンを受けたことはあるが、次の日の朝、同じメイクを自分で完成させたことがない。
1回レッスンを受けたぐらいでは、その技術は身につかないのですよ。
しかし、朝出勤前に、あこがれの芸能人メイクを完成させて出勤できたら、その日の仕事のモチベーションが格段に上がること間違いなし!
低価格で短時間、週に3回「朝活なりきりメイクレッスン」が開かれている。
繰り返し、集中することによって、受講生のメイクスキルが、格段に上達するのだ。
このメイクアップアーティストさん、天才かも!
そうしているうちに、みなさんメイクが完成したようだ。
今日は、綾瀬はるか風になってウキウキご出勤されていかれました~。
私も「なりきり篠原涼子」のときに、ライティングをさぼって参加してみようかな。
と、自分のパソコンに目を向けようとしたとき、
「あの~、お仕事中すみません」と町の商工会議所青年部のような男性から声をかけられた。
「もしよろしかったら、この半熟卵をご試食いただいて、ちょっとでいいので感想を聞かせていただけませんか?」
そこには、深皿紙プレートに、3種類の半熟卵が各六分の一ぐらいにカットされたものが乗せられていて、それぞれに昔よく見た、お子様ランチのチキンライスの上に差してある、爪楊枝で出来た旗がA,B,Cと振り分けられて刺さっていた。
「卵にアレルギーはありませんか?」丁寧にとても腰が低く聞かれた。
「はい、大丈夫です」
ということで、いただいてみた。ふと周りを見渡すと、他のお客さんにもお願いしているようだった。
ここでは、朝活の内容と、一般のお客様の協力が必要な場合の内容などを事前にカフェへ申請し、パスされたら、このように他のお客様を巻き込むこともできるのだ。
「しかし、引き受けたはいいが、見た目は全く同じような卵……違いがわかるかな?」と思いきや、やはり朝のマジックなのか、早くこの頼みごとを終わらせて、自分の仕事も済ませ出勤せねば、という時間的プレッシャーと、引き受けたからには、何かお役に立てるコメントをしてあげたい、という期待的プレッシャーが、味覚の感度まで引き上げるようだ。
ちょっとした、「なりきりグルメレポーター」気分で、渡された記入用紙にサクッとコメントして、先ほどの青年部風のお兄さんに渡すと、これまた低い腰つきで喜んでいた。
窓際にお兄さんのお仲間が3人座っていて、集めたアンケート用紙に目を通しながら、卵を囲んで何やら話し始めていた。
今度は、イチゴ生産者の集まりのときに出くわせたらラッキーだな。
5年後、いやいや、3年後には、朝カフェの光景がこんな風に変わっていたらおもしろいだろうなぁ、
と一人妄想しながら、出勤前のカフェで、天狼院のライティングゼミに投稿する記事を書いていた。
私は数日前から、朝活ライティングを始めた。
去年の12月から天狼院のライティングゼミを受講し、週に1回は記事を投稿することが宿題なのだ。
しかし……、これが書けない。パソコンの前に、3時間、4時間向かっても、なかなか書けない。しかも自分に4、5時間フリーの時間が取れそうなときでないと、「私は書けない」という洗脳から抜け出せないでいた。
そんな状況にあえいでいたある日のゼミ中に、
「今から15分で記事を書いてみてください」と言われた。
「うそでしょ! 4,5時間かけても書けない私が、15分って……そんなバカな……」
しかし、終わってみると、こんなにうれしい自分自身の裏切りなんて、人生で初めてだった!
そう、書けたのだ!しかも、その記事が初めて天狼院のウェブサイトにアップしてもらえたのだ!
それから、短時間集中できる時間を探し始めた。
まず、仕事が終わり帰宅して、家事をさっさと済ませて、寝る前1,2時間ほどなら時間を割けるかもと試みた。
しかし、心の甘えなのか疲れなのか、すぐに睡魔が押し寄せてくる。パソコン開いたまま寝落ちした自分が何日も続いた。
「今日こそは!」と思っていても、思わぬ残業が入ったり、断り切れないお誘いがあったりで、なかなか時間が作れない。
「もう、情けない。自分が嫌いになりそう……」
せっかく光を見出したのに、何かいい方法はないものか……。と意気消沈していたら、何気なく目に入ったFacebookからの「朝活イベント」お知らせ。
今までもよく「朝活」のイベントのお誘いはいただいていたが、参加したことはなかった。そりゃそうでしょ、私は寝ることが大好きだから。
しかし、待てよ……。早朝なら睡魔に襲われることも、思いがけないく私を邪魔するものは何も起こらない。
そしてその時、昔どこかで目にした、古い言葉のワンフレーズが頭をよぎった。
「あなたがいつもしているのと同じことを行えば、あなたはいつも受けているのと同じものを受けることになる」
心が波立った。
「人生を変えるライティング」この言葉に心が動かされ申し込んだのではないか! 生活習慣を変えてみよう!
次の日、朝7時からオープンのカフェに出かけた。パソコンを開く。「出勤」という絶対に遅れてはならないデッドラインに追い立てられながら、少し緊張気味にキーボードを進めていく。
なんと……書けた。
さらに、朝活ライティングをした日は、その日の仕事に向かう気持ちにも変化が表れ始めた。
出勤したときに、「私はもう、ライターとしての仕事を一つ終わらせてきたのよ」という、ちょっとくすぐったい自己満足感の気持ちを持って、仕事をスタートすることができるのだ。
「菊野さん、今回の記事は読みごたえありましたよ。構想にだいぶ時間を費やしたんじゃないですか?」と、編集担当者の問いかけに、なりきり篠原涼子メイクの私は、
「確か……、この記事は、あ、そうだ! 天狼院の朝カフェで7時ぐらいから1時間半ほどで書き上げたんでした」
なんて、数年後に答えていたりなんかしたらいいなぁ。と妄想しながら、450円のカフェラテに、焼き立てパンとゆで卵の無料モーニングをつけて、今朝も「なりきりライター」続行中であります!
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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