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練習台としての学び~他者へのフィードバックは自分への戒め~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ことほぎ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
ひょんなことから、シロダーラとアビヤンガの練習台になることになった。どちらも、アーユルヴェーダの有名なマッサージ法だ。
 
シロダーラは、温かいセサミオイルを額から頭皮に垂らすことで中枢神経をリラックスさせるヘッドマッサージだ。脳の浄化と心のケアができると言われており、不眠の人には特にオススメのマッサージ法だ。
 
アビヤンガは、体質別に厳選された薬草オイルを全身に塗布し、マルマと呼ばれるアーユルヴェーダのツボを押していく全身マッサージだ。体液(血液・リンパ液など)の流れが良くなり、疲労回復はもちろんのこと、アンチエイジングにも効果がある。
 
そんなマッサージの練習台にどうやってなったのか。
 
私は、リラクゼーションサロンが大好きで、友人のフェイスエステサロンをはじめ、行きつけのサロンが決まっている。そんな中の一つから声がかかったのだ。
 
このコロナ禍にあっても人気が衰えないそのサロンは、前々から要望のあったアーユルヴェーダセラピストの養成講座を開講した。
 
2名のお弟子さんが、理論と実技の机上学習を終え、初めて実技の実践練習を行うという。以前、フェイスエステの練習台になったこともあり、お役に立てるのであればとお引き受けした。
 
当日、お弟子さんの自己紹介が終わり、いざ練習。カウンセリングから始まり、まずはシロダーラの練習。オーナーが注意点を教えながら見本を見せていく。練習台は、ただマッサージを受けていればいいというわけではない。練習後のフィードバックという大切なお役目がある。この段階から、どのようなフィードバックをしたら、二人のお弟子さんにとって有益かを考え始めた。
 
みなさんは、さまざまな学びの現場で、生きた言葉を受け取った経験はないだろうか。
 
その言葉を聞いた瞬間、ハッとさせられ、改善点をストレートに言い当てられた衝撃に目がくらむ。自分の未熟さに対する嫌悪感と、このまま終わってたまるかという意地が同居する。そして何よりも、その言葉を発してくれた人の思いやりを感じる。そんな経験だ。
 
私は、そんな経験を何度かしたことがある。
 
社会人になりたての頃、初めての営業先に向かったあの日、みんなが顔をこわばらせていた。口には出さないが、新人全員が、内心おどおどしていたのはいうまでもない。翌日の朝礼で、女性部長が新人に向けてかけた言葉は、「みなさん、女優になりましょう!」だった。
 
考えればわかることだが、お客様にとって、営業担当者が新人かどうかは関係がない。料金分のサービスが受けられればそれでよいのだ。「自信がなくても、自信があるように振る舞え!」、それが我々への訓示だった。
 
ピラティスインストラクターの養成講座では、「インストラクターの態度は、クライアントにうつる」という言葉が印象的だった。
 
インストラクターも人間だ。疲れているときもあるだろう。とはいえ、手を抜いたマインドでクライアントに接すれば、そのクライアントもまた手を抜いた動きをしてしまうというのだ。
 
初めて実践練習をする2人からは、「おそるおそる感」がにじみ出ていた。また、無意識の癖や性格も……。
 
シロダーラは、温めたオイルをタイミングよく交換しなければならない。雑に扱うと、オイルの流れる音がリラクゼーションを妨げてしまう。そのことに集中していたのか、床近くにおいてある容器を持つときに、何気なくでた「よっこらしょ」の言葉。
 
アビヤンガでは、体質によって、マッサージのリズム・圧・速さを変えるのだが、おっとりさんは、とにかくスローテンポで、せっかちさんは、ちょっと粗雑感を感じるほどの速さでマッサージをしていく。
 
また、マッサージをするほうもされるほうも、身体や筋力に左右差があるため、左右差を感じさせずにマッサージをするのは大変らしく、私の身体は見事にバランス悪くマッサージされていった。
 
「プロは再現性がある人」という言葉が浮かんだ。
オーナーのマッサージは、いつも一定。もちろん何度受けても、プラスアルファ(肩こりがひどい時に、いつもより入念にほぐしてくれるなど)はあれどマイナスはない。
 
以前、フェイスエステのまねごとをさせてもらった際、母親を練習台にしたのだが、「手が荒れているわね!」と言われてしまった。日常生活をする分には潤っているように見える手も、マッサージをするような特別な場面では、通用しない。お弟子さんの一人は、この時の私と同じだった。
 
若いお弟子さんは、肩こりがないのか、ツボを押さえ切れていなかった。セラピストは、自分が体験しえないことについても研究が必要なことがわかった。
 
無論、オーナーの手が荒れていると感じたことは一度もなく、変化する私の身体のツボをいつも的確に捉えてくれていた。
 
自らの精神・身体のケアと実践研究が、セラピストを支えている。
 
2人へのフィードバックを考えながら、職業人としての自分を振り返った。
 
不安を吹っ切るための「女優魂」を発揮できているだろうか。
慣れたルーティンワークこそ丁寧に再現性高く行えているだろうか。
無意識の行動・言動が、誰かを不快にさせていないだろうか。
性格が、マイナスに働いている場面はないだろうか。
誰かの役に立つための学習を継続できているだろうか。
心身をケアできているだろうか。
 
世の中には様々な職業があるが、どの職業にも共通して必要なことは、「内省的実践家」であることだ。
 
練習台としての経験は、他者へのフィードバックをする立場でありながら、自分を内省させ、学びを深める良い経験となった。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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