書くことから逃げ続けていた私が、今、文章を書く理由
記事:高野萌美さま(ライティング・ゼミ)
2016年4月10日。私はママチャリを漕ぎながらある書店へ向かっていた。
福岡天狼院。
今夜、ここでライティング・ゼミの初回講座を受けるためだ。
書店? ライティング? と聞くと、本を読んだり文章を書いたりするのが好きなのかなと思う人がいるかもしれない。
だけど実際は違う。私はそこまで本を読まない。文章を書くのも苦手だ。
どれほど苦手意識を持っているかというと、小学生のころ、読書感想文か読書感想画どちらかを提出するという夏休みの課題が出されると、毎年迷わず感想画を選ぶくらいだ。どうしても書かないといけない状況になってもギリギリまでその存在を無視し続け、提出日前夜に一夜漬けでしっちゃかめっちゃかな文章を書いて何とか提出するような奴である。
こんな性格でよく大学まで卒業できたなぁと思う。
そんな私が、なぜ、苦手であるはずのライティングを勉強しようと思ったのか。
私が表現するもので、ほかの誰かの心を動かしてみたかったからだ。
「伝える」「伝わる」「それを聞いた人が行動する」という一連の流れを、私も作れるようになりたいと思ったからだ。
「伝える」ということを意識しだしたのは19歳のころ、イラストレーターとして1人で仕事を始めたときだった。
依頼主から言われた内容を受けて、イラストを描いて、納品する。文章にすると1文で完結するこの行動が、私にはとても難しかった。
まず、依頼主からの要望を伺うとき。依頼主は「こんな絵が欲しい」という思いはあるけどそれを具現化できないから私に仕事を頼むのだ。それは分かるのだが、「なんかこう、パァーっとした感じで! お願い!」と言われて一発で依頼主の思い通りのイラストが描ける方がいるなら、私はその人をエスパーと呼びたい。
イラストを描くときもそうだ。依頼主の思いを何とか理解できたとしても、それを表現するだけの表現力や構成力がないと思うようにアウトプットできない。
納品するときも同じく。「どういう理由があってこのモチーフを描いたのか」「なぜここでこの色を使ったのか」という説明を依頼主にする必要がある。「パァーっと!」で考えを伝えきれていると思っている、あの依頼主に。
「伝える力」だ。私にはそれが圧倒的に足らなかったのだ。
依頼内容で理解できなかった部分を質問するスキル。自分の考えを形にするスキル。自分の思いを相手に理解してもらうスキル。どれもみんな、伝えることが下手な私に原因があったのだ。
伝えることを避け続けていたツケが社会に出てからドッと押し寄せてきて、イラストを描くこと以外の部分で悩むことが多くなった私は、それから1年後、逃げるようにフリーの仕事をやめた。
それ以降、私は「伝える」ことに異様な執着心を見せるようになる。
就職活動では商品の良さを世の中に伝える広告業界か、経営者の話を伺い問題解決に向けたアドバイスをするコンサルティング業に的を絞った。結局希望の業種に就職できず、メーカーのお問い合わせ窓口の部署で働いたときは、どうすればお客様の考えを理解しご納得していただけるかと、話し方やコミュニケーションに関する本を読みあさった。しゃべりがうまい人がいれば積極的に話しかけてその技を盗もうとした。少しでも伝えることに役立ちそうと思ったら惜しみなくお金と時間を注いだ。もっと外に、もっと多くの人に発信できる仕事がしたいと、福岡の会社へ転職してみた。
伝えることができる人になりたい。
自分の思いを伝えて相手に共感してもらえるようになったら、私は幸せだ。
そのためだったら時間もお金も惜しくない。
それは、熱狂的なファンが自分の好きなアイドルのためならなんだってする感覚と似ているのかもしれない。
どうしても気になって仕方がない、この子のためなら頑張れると思えるアイドルを見つけたファンが、その子が売れるために同じCDを何枚も買ったり、「遠征」「参戦する」と言ってライブツアーの開催地すべてに参加したりする感覚。アイドルのイメージカラーに似た商品があれば直接関係なくても買ったり、手間と時間をかけてファングッズを自作したりするような、そんな情熱。
すべてはアイドルのため。好きなアイドルが笑顔で活動を続けられることがファンである自分の幸せ。そのためには時間もお金も惜しくない。
私にとってのアイドルは、「伝える」ということだったのだ。
見つけてしまったのだ、自分の時間を費やしてでも極めたいスキルを。
福岡の会社へ転職しても、私はまだ希望の部署へ行けず悶々としていた。そんなとき目にしたのが福岡天狼院のFacebookページだった。
ライティング、か……。
文章書くのは苦手だけど、これで少しでも伝えるスキルが身につくなら……!
このゼミで私はどこまで「伝える力」に近づくことができるのだろう。4カ月後が楽しみだ。
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