メディアグランプリ

天狼院のない街にいる私がライティング・ゼミで学ぶ理由


http://tenro-in.com/zemi/writingsemi/34310

記事:高橋さやかさま(ライティング・ゼミ)

私の住む札幌には、天狼院書店がない。実をいうと天狼院へは、一度も行ったことがない。そんな私が、この春から天狼院のライティング・ゼミに申し込んだ。

天狼院との出会いは、Facebookだった。ある日、いつものようにFacebookを開くと、珍しい人が少々熱っぽくある記事を紹介していた。そこには「天狼院」の文字。
「へー。なんか怪しげでアングラな香りがする名前だなー」などと思いながらも、「たまにしか投稿しない人がポストしたのだから、何か面白い記事なんだろう。タイトルにも惹かれるし」と思いながらリンク先をクリックした。それがこの記事だ。
「悩みがなく気楽にシンプルに生きるのが幸せであるという風潮について《川代ノート》」

「え。何これ!うわ!面白い!!っていうか、私がもやもやと心に抱えていたことを言語化してくれてる!」心の中で、そう叫びながらスマホの画面をどんどんスクロールした。これだけの文章をスマホで読んだのは初めてだったけれど、読み終えると心がなんだかスカッとしていた。私はこの「川代さん」という人の文章にすっかりハマってしまい、「川代さん」が書いた記事をさかのぼって読みあさった。そして、運命の記事に出会ったのである——。
国際教養学部という階級社会で生きるということ《川代ノート》
まるで、過去の自分を見ているようだった。大学生の頃の私を思い出して、涙が出そうだった。

私は大学時代、外国語学部英語学科だった。高校まで旭川に住んでいた私は、地元の進学校に進み英語の成績はトップクラス。自分の英語力にはそれなりの自信を持っていたし、「語学の獨協」といわれるその大学に合格してからは、合格通知とともに送られてきた大学のパンフレットを眺めて、「ここに行けば、きっと世界で活躍出来る人間になるのだ。」と世界を飛び回る自分を想像して期待に胸を膨らませていた。入学してからのオリエンテーションでも「卒業しても英語のレベルが日常会話程度です。と答える人が非常に多い。みなさんは、そうならないように頑張ってくださいね。」と言う教授を尻目に、「せっかくこの大学に入ったのに、日常会話程度のレベルでなんか終わるわけがない」などと思いながらその話を聞いていた。そう、日常会話程度では終わらないはずだったのに……

本格的に授業がスタートすると、意気込んでいた気持ちはどんどん萎んでいった。となりには帰国子女、向かいの席にはハーフの子。もちろん英語はペラペラ。留学経験がありネイティブ並みの発音の人がたくさんいる。海外旅行にすら行ったことのない、田舎者の私には相当なカルチャーショックだった。18年間築いてきた自信とプライドは、シャボン玉のようにはじけ、やる気さえも失ってしまった。
私は、逃げた。
自分がこんなにも弱い人間だったとは思わなかった。退学や留年こそしなかったものの、必要最低限の単位を取り、日常会話も出来るか出来ないかのレベルのまま大学を卒業した。逃げた自分への後悔と友達やバイト仲間との楽しい思い出という、苦さと甘さが入り交じった記憶だけが残った。

そんなほろ苦い記憶も薄れた頃に出会ったのが、先述の川代さんの記事だった。読み進めながら酸っぱさと辛さが混じったトム・ヤム・クンのような感覚を味わいながらも、読み終えた後には「ダメだった自分」がちょっと救われたような気持ちになり、スープを飲み干した時のように言葉が心に沁みた。 ようやく私は「あの頃」の私を受け入れることが出来た。——「こんな風に心に響く文章が書きたい。」おこがましくも、そう思った。

心に響く文章を書きたい、という思いを抱えながらもどうすれば良いのかわからず、本屋へ行き「文章の書き方」に関する本を探してみたが、どうもしっくりこない。もやもやとした日々を過ごしていたところ、ほどなくして「天狼院ライティングゼミ1.0」の募集告知が出た。「これは!」と思いながらも、仕事も忙しいし家事に子育てに……逡巡したあげく、足踏みしてしまった。
機会を逃してしまったものの、まずは何か行動してみようと、ブログをはじめてみた。自己流ではなかなか自分の中にあるものを思うように言語化出来ず、あげくに父親に「内容がまじめすぎる」などと言われてしまった。「あぁ〜やっぱりあの時ゼミに申し込んでいれば良かったな…」と後悔した。

また、いつものように仕事に家事に子育てに……追われるように日々を過ごしていたある日、twitterで目が留まった。
“人生を変える「ライティング・ゼミ1.0」 がさらなるパワーアップを遂げ、「ライティング・ゼミ2.0」となって帰ってきます!”
良かった! まだ間に合う! 今度は迷わなかった。募集がスタートしたその日に申し込んだ。

天狼院のない札幌では、ゼミの受講は通信だ。通信受講は、お店での受講とタイムラグがあり、動画配信を心待ちにした。動画がアップされる前に受講生の書いた記事がどんどんアップされていき、気持ちばかり焦った。
期待に胸を膨らませ、初めての受講動画を見る。想像以上に面白い!その場にいるみんなが楽しんでいる様子が画面からも伝わってきて、画面のこちら側にいる自分が悔しかった。私もみんなと一緒にワークショップやりたいよ。その場に行けなくても、せめて毎週、がんばって記事をアップしようと意気込んだのに、他の受講生の記事を読んで怖じ気づき、構想はあったもののまとめられないまま、最初の期日を迎えてしまった。

他の受講生が書いた文章はどれも面白く、シンプルな素材だけれど、心に沁みる味わい深い文章を作り上げる人。チャーハンのようにスピード感を持って元気をもらえるような文章もあれば、意外な素材の組み合わせで、あっと驚き「こういう見方があるのか」と感心するもの。ビーフシチューのように濃厚で、どっしりとお腹を満たしてくれる文章もある。
文章とは不思議なもので、卵焼きが料理する人によって仕上がりが違うように、同じ素材を使っても、それぞれにその人のエッセンスが加わって、出来上がりが全く異なる。料理人が年齢を重ねて成長していくように、同じ人が同じ素材を使っても、その時の状況、過ごしてきた年月によって、また違った味わいをみせてくれるところも面白い。

私は、どんな素材を使ってどんな料理をしよう。
出遅れてしまったけれど、今度は昔のように逃げずに向き合い、あの日の私に言うのだ。
「たくさん回り道をしたけれど、その分いろいろな素材に出会うことが出来たよ。」と。
ライティング・ゼミで学ぶ理由——あの日から回り道をして出会った、たくさんの素材をおいしく料理して、誰かの心にスーッと沁み込みホッとあたたまるような文章を、この寒い札幌から届けられるようになろう。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2016-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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