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退職を迫られた「旧人」が仕事を続けられたのは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤野ナオミ(スピード・ライティング特講)
 
 
「あなたは、この仕事に向かない。別な仕事を探してほしい」
同僚から言われた言葉にショックを受けました。
とはいえ、「やっぱりか」という感じも……。
 
この勤務校では失敗続きでした。
私のふとした言動が、生徒や保護者、教職員の怒りを買ったり、傷つけたり。
「スクールカウンセラーとして、しっかり仕事をこなさなければ!」と思えば思うほど、ミスが重なります。
 
新人であれば、「この仕事は向かない」と考え、転職してもいいでしょう。
転職せずに、「経験を積めばいい」と前向きに考えることもできるでしょう。
残念ながら、当時の私は、心理カウンセラーとして働いて15年。
とっくに新人の域を出た「旧人」です。
 
言い訳にしか過ぎないでしょうが、怠けていたわけではありません。
心理カウンセラーとして力をつけたいと思っていた私は、自己研鑽に励んできました。
時間の許す限り、カウンセリングのワークショップ、セミナー、研修会、学会に参加しまくってきたのです。
 
ところが、私の努力も虚しく、ある教員を怒らせてしまい、同僚のスクールカウンセラーと一緒に謝罪しなければならなくなってしまった……。
それで、ベテランの同僚から、冒頭の発言が出てきたのです。
 
管理職からお叱りを受ける。
冷たい態度を取ってくる教職員もいる。
文字通り、針のむしろ。
 
「できるなら、辞めたい」
 
でも、夫は2年間の無職の末、安月給の契約社員になったばかり。
息子は小学校の低学年。
私が今の仕事を続ければ、安定した収入が得られる。
 
もし、あなたが同じような状況にあったとしたら、どうしますか。
転職しますか、それとも、同じ職場で仕事を続けますか。
 
管理職からクビを勧告されたわけではなかったので、「今の仕事を続けるしかない!」と思い、ビジネス系のセミナーに参加するようになりました。
脳の使い方を学び、能力を最大限に発揮できるようになれば、ひと皮むけるのではないかという希望をこめて。
 
ところが、仕事では相変わらず、情けないミスの連発。
「やっぱり私では実力不足。もう限界か……」と思った時。
 
「ハコミ・セラピー」という、聞いたこともない心理療法に出会います。
「これよ! これ!」と私の中の何かが叫んだので、思わず、学び始めてしまいました。
心理療法の技術を身につけるというより、私自身の課題を解決するために。
 
「ハコミ・セラピー」では、マインドフルネス(瞑想)を使って、自分の身体に起きていることに注意を向けていきます。
身体の中をマインド(心)で満たすから、マインドフルネス。
身体に注意を向けることで、前頭葉の働きが弱くなり、普段は抑え込まれている感情や考えが浮かび上がってきます。
 
こんなに努力をしてきたのに、ミスばかりの私は、そもそも粗悪品なんだ。
 
母との関係が、私の自信のなさに影響を与えていることは分かっていました。
私だけを叱り、責め、弟や妹は可愛がった母。
これまでの自己研鑽の過程で、母に対する怒りはなくなっていたので、もう解決したと思っていたのに。
 
私は勇気をふりしぼり、「ハコミ・セラピー」を学ぶ仲間の前で、マインドフルネスを通じて気づいたことを話すよう心がけました。
 
「私だけがダメ人間」って思ってしまう。
私一人がヘドロまみれの汚い沼にはまっていて、天上の世界へのぼっていく輝かしい人々を見上げているイメージが浮かぶ。
 
仲間たちは、批判することも、ジャッジすることもなく、静かに受け入れてくれました。
「私にも同じ気持ちがある」と言う人さえいます。
 
無意識に埋もれていた感情や考えが出てきたら、仲間たちに伝える。
それを受け入れてもらい、「そのままでいいんだよ」と声をかけてもらう。
小さい時にかけてほしかった言葉をマインドフルネスの状態で聞くと、心の底にしみわたっていく。
 
そうしたやり取りをくり返すうちに、私は少しずつ私自身を受け入れることができるようになっていきました。
「残念なところもあるけれど、私なりに頑張っているんだから、まあ、いいんじゃない」という感じに。
 
そんな時、針のむしろの勤務校で、以前の私だったら尻込みするような難しい案件が舞い込んできました。
腹をくくって私なりに考え、対応していくと、生徒や教職員にも納得してもらえる着地点が見つかりました。
何より、冷静に対応している自分にビックリ。
 
大学院を修了して以来、ずっと指導を受けてきた大学教授からも、「最近、まともになってきたなあ」と、嬉しいお言葉。
以前は、「お前はバカか!」と叱られていたのに。
 
私の経験を振り返って思うことがあります。
 
長年必死に努力しても実を結ばない「旧人」さんは、どこかで自分に「No」を出しているのかもしれません。
「自分はダメだ!」と自分にムチをふるうたびに、本来持っている力を発揮するゆとりが失われていきます。
ゆとりがなくなると、視野が狭くなり、ミスを連発する。
そして、ますます自信を失っていくという悪循環。
 
無理にポジティブ思考になろうとするのではなく、自分に優しい言葉をかけてみてはどうでしょう。
頑張ってるよ。
よくやってるよ。
何とかなるよ。
 
ホッとすると、身体に入っていた余計な力が抜けていきます。
身体が楽になると、うまく発揮できなかった力が解放されていくかもしれません。
 
自分を叱咤激励したほうが、能力が発揮できるという人は、そのままでOKです。
でも、努力しても、自分を責めても、どうにもならない時は、やり方を変えるのもいいのではないでしょうか。
 
私は、ちょっと情けない自分を励ましながら、今もスクールカウンセラーを続けています。
同僚に退職を迫られたお陰で、大切なことに気づくことができました。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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