メディアグランプリ

たった4秒に21,000円を支払う価値はあるのか。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:古山有則(スピード・ライティング特講)
 
 
「ここから飛ぶんですよね?」と思わず、情けない声が漏れた。
高さは、約100メートル。マンションだと30階。
あと数センチでも足を踏み出すか、あるいは少しでも風が吹いたら、確実に急降下するであろう、天国か地獄の狭間にいる。
そう、今から私はバンジージャンプをしようとしているのだ。
思い返せば、3年前。
私の仕事はメンタルトレーナーで、「自分と向き合う」ことサポートしている。自分と向き合うために、クライアントに対して「死ぬまでにやってみたいことはなんですか?」という課題を定期的に出す。心の声を引き出すために、重要な問いである。
出題している私も、この課題を考え回答していくのだが、毎回のようにそこには「バンジージャンプをしたい」と書いていた。
ずっとやってみたいとは思っているが、実行に移していないものとして、どこか心にひっかかっていた。
心にはひっかかっていたが、どこか先延ばしを繰り返し、しまいには忘れてしまう……ということを3年間続けてきて今に至る。
「自分と向き合う」ことをサポートしていると、毎日のようにクライアントからの嬉しい声が届く。30代女性からブロックされていた元カレと大逆転で復縁を成功した話、20代女性からブラック企業を辞め、一流企業に転職を成功した話、高所恐怖症を克服して気球に乗ることにチャレンジした話。
常々、クライアントに教えているようで教わっている。仕事は、アウトプットをしているようで、同時にインプットもさせていただいているのだ。クライアントからいただく人生を変えたエピソードに刺激を受け、私も何かにチャレンジしようと思った。
そう思った私は、3年間で35冊書き続けているノートを適当にパラパラめくってみた。
すると、何度も何度も私に発見してもらいたそうに「バンジージャンプ」という言葉が光っているように見えた。
言葉は、必要なときに響いてくれる。これはバンジージャンプをやる運命にある。そう思い、すぐに詳細を調べることにした。
調べてみると、私が住んでいる場所から車で2時間の場所に、都合良くバンジージャンプができるところがある。
値段は17,000円。写真撮影にプラス4,000円かかる。正直、高い。率直にそう思った。
落下している時間はおよそ4秒。
たった4秒に21,000円を払うことができるだろうか、いや到底できない。
それに4秒のためだけに2時間をかけていくのには、やや時間がかかる。21,000円あれば、私の大好きな本を1冊1500円換算で14冊も買うことができる。
バンジージャンプは、4秒。本であれば、1日1冊の超ハイペースで読んでも2週間はかかる。お金の使い方としては、読書に使った方が賢いかもしれない。
ハッと私は気づいた。
このように考えてしまうから、バンジージャンプにチャレンジをするのに3年間もかかったのだろうと。
心の声は「チャレンジしたい」と思っている。しかし、頭の声は「お金や時間」などできない理由、やらない理由で必死に行動にブレーキを踏んでいるのだ。
頭の声に従っていては自分のやりたいことができないと、繰り返しクライアントに伝えていることである。
「エイヤ!」と勇気を振り絞り、最短で予約可能な日付の3日後を予約した。先延ばしにすると、何かしら理由をこじつけてキャンセルしてしまう。
当日の朝、「4秒のために2時間と21,000円を使うのか」と思いながらも「いざ出陣!」と家を出た。
少しずつ目的地に近づいていくと、どんどん現実的になってくる。余裕をもって45分前に到着し、受付をすると、「もう今すぐ飛べますけどどうしますか?」と言われた。
心の準備はできていないが、断る理由もないので承諾をし、誓約書を書くことになった。
この飛ぶ前に書く誓約書が、怖い。
誓約書の内容を簡単にまとめると、
「万が一の場合になっても文句を言いません」と「理由は自分でバンジージャンプをやろうと決めたリーダーなので!」というものだ。
ツッコミどころの多さに、思わず関西人のように「いやいやいや」とツッコミを入れたくなる。入れんけど。誓約書という第一関門を突破し、ジャンプ台へ。
スタッフの人に安全装置をつけてもらっているとき、
「この自然溢れる景色は楽しむものであって、バンジージャンプをする場所ではない」と心の底から思った。
スタッフの人に「もう少し前に足をだして」と言われると、「足をもう少し出したら落ちちゃうよ」と情けない声が漏れる。
心の準備はできていなくても、「さあいきましょう!」とスタートの時間はやってくる。それもそのはずで、私にとっては死ぬまでに1回しか経験しない非日常な経験だが、スタッフの人にとっては通常業務だからだ。早く飛んでほしいに決まっている。
心の準備はできなくとも、スタッフの合図を聞き、覚悟を決める。
5、4、3、2、1バンジー!
自分が隕石になって地球に向かって加速しているイメージだ。
頭の中は真っ白。
そこでたった1つだけ言葉が浮かんだ。
「人生終わった」
無事終了し、人生が終わっていないことを確認すると、目には涙が浮かんでいた。
「死ぬまででやってみたいことを達成したから」と美談にしたいが、違う。単純に怖かったからだ。
たった4秒に21,000円を払ってよかった。一生バンジージャンプをやったことがあると言えるから。話すネタができたとさえ思う。
1番大きな収穫は「人生終わった」と思ったことで、「もう怖いものなんてないな」と思えたことだ。その証拠に、帰りの車の運転を始める前に、5分で50,000円のスカイダイビングにチャレンジしようと決めた。きっと安い買い物になるだろう。
 
 
 
 
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2021-09-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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