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あのねノートを知っていますか


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記事:内藤 睦(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
皆さんはあのねノートを知っているだろうか。
あのねノート、もしくはあのね帳という名のノートの一種で、同時にそれに書く作文のことを意味する。小学校低学年から出される作文の宿題だ。
低学年の子には、習ったひらがなやことば、漢字を使って自由作文を書くのはハードルが高い。
なので、「先生に『あのね』とお話するように書きましょう」と言われ、「せんせい、あのね」から書き始める。漢字を習えば「先生、あのね」だ。
先生との交換ノートのような形式なので、先生からのコメントが必ず入って返ってくる。
調べると関西が発祥のようで、関西で盛んなようだ。
私が小1の頃、40年前にはもうあった。それから脈々と続いているようである。
 
今小2の息子も、小1の頃からあのねノートが宿題になった。算数や漢字などは前向きに取り組む息子だが、あのねノートは難易度の高い宿題だ。ほっておくと書けないので、私はおせっかいを焼く。
金曜日にあのねノートを渡され、週末に書いて月曜日に提出、という流れになっているので、金曜日に学校から帰ってきたら、おやつを食べながら「今週は何を書く?」と聞いて戦略を練る。土日の予定を話し、ネタになりそうなイベントにあらかじめ目星をつけておく。時には、お出かけや工作など、ネタになりそうなイベントや材料をこちらで考えて準備しておく。
そしてそのイベントの後に「あのねノートにどう書く?」と話す。質問中心に対話して、息子の中で書く内容がふくらむようにする。書いた後は「誰が、いつ、どこで、何をしたか。どんなだったか」辺りが書けているか、誤字・脱字がないか、などをチェックする。
 
息子と話した時には「今週はけっこう書くことがあるな」と思っていても、実際に書いたものを読んでみると、話していたことがぼろぼろ抜けていて、情報不足になっていることが多い。「ついさっき話していたことが、なんで書く時にこんなに抜けるんだろう」と不思議に思う。
男女で脳の発達の様子が違うことが大きな原因かもしれない。
 
一般的に、女の子の方が男の子より早く言葉を話し始めるという。これは、男の子と女の子の脳の発達の速度が違い、言葉をつかさどる「左脳」の発達は女の子の方が早いことが理由とされる。
また、右脳と左脳の発達度合いだけでなく、それらをつなぐ脳梁(のうりょう)という部分も関係があると言われている。右脳と左脳をつなぐパイプのような脳梁は、男の子より女の子の方が太いそうだ。だから女の子はスムーズに左右の脳を使って話すことができ、感じたことをスムーズに言葉にできるのだそうだ。
 
そうか、だから私はあのね帳が得意だったのだな。
私はあのね帳が苦にならなかった。ノートを前にして、スラスラ言葉が出てきて、文字をどんどん書くことができた。生意気にも「なぜ、他のみんなこんなに時間がかかるのだろう」と思っていた。
何でもネタにした。給食の時に苦手な魚の素揚げをわざと落としたことも書いた。
いろんな角度から書くこともできた。自分がやったことを書いたら、次は周りの人の反応や、続く行動を書く。自分がやりながら感じたことや考えたことを書く。そうやれば、どんどん字数が稼げた。
 
でも息子はそういう書き方ができないようで、手が長時間止まる。止まらなくても、絞り出すように書いている。やっぱり、頭の中に思い浮かんだことを言葉にするのが難しいようだ。
 
でも、息子の文章には息子の味がある。
コマを作った話や、ゲームをやった話など、物事をテーマにしたものが多い。そしてコマをどのように作ったか、どんなルールのゲームか、などの説明に重きをおく。最後には「コマができてうれしかったです」など、感情を書く。彼が感情を露わにするのは、文の最後だけである。
 
あのね帳は生活記録としてとてもおもしろい。
息子が小1の時のノートを読むと、
「百円ショップでおもちゃをかってもらいました。おかあさんに『五分かかったらなしやで』といわれました。えらぶときはドキドキしました」とか
「いもうととポンポンを作りました。ざいりょうはけ糸です。つくろうとおもったけど、おかあさんが『大きいのはだめだよ』といったので、小さいのにしました」など、私が彼の自由な行動の障害となっていることがわかる。
一応、時間がなかったとか、毛糸が十分なかったとか理由はちゃんとあるのだが、それでもなんかひどい親だ。反省しきりである。
 
ああ、先生はクラスの子ども全員のを読むことで、それぞれの日常生活、週末の過ごし方、家族(特に母親)の言うことや行動が丸わかりなんだろうな。私も先生になってみたい。
 
ちなみに私のあのね帳は、学区で作られた文集に選ばれて何回か掲載された。母が実家に40年も残しておいてくれていて、この前送ってくれた。
改めて見ると、まあ、なんてこまっしゃくれた子だったんだろう、と思う。小1の時の作文は、先生の好印象を狙って書いたことが見える作文である。小3の時のはなんと「私だけが知っている」から始まっている詩だった。恥ずかしすぎるポエマー。黒歴史である。
 
息子のあのねノートは、息子だけの文集、いや、世界に1冊の息子の本である。
ずっと私が大切に持っていたい。息子に渡そうとは思わない。そもそも息子は欲しがらないだろうし、渡しても見ないだろう。
この一冊には、この時だけの空気がずっと残っているだろう。ついつい口出ししてしまう、このどうしようもなく口やかましい母親を、息子の作文は的確にとらえている。
何十年経っても、このノートを開けて読んだら、私は自分の黒歴史を感じるだろう。
 
そして、息子との愛しい関係を思い出すことができるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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