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27歳で実家を出て、社長になった話


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記事:mihana(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「一人暮らしなんて、あんたに出来るわけないじゃん」
両親にそう言われる度、悲しくも、「ですよね……」と思っていた。
 
一人暮らしチャンスは、人生に何度か訪れる。1度目は大学生。2度目は社会人。ともに、学校や勤務地が、実家から離れるタイミングだ。私はそのどちらも逃し、27歳で、のほほんと実家暮らしをしていた。
 
お金に困ることもなければ、家事だってしなくてもいい。穏やかで、平和な毎日だ。すっかりその生活に慣れきってしまい、「このまま結婚するまで、実家にいるのかな……」と、ぼんやり思っていた。
 
だけど、「このままでいいのだろうか」という気持ちも、どこかにあった。同年代で一人暮らしをしている同僚は、自分でお金の管理をして、家事をこなしている。一人暮らしを通り越して、結婚という決断をした友人も多くいる。
 
比べたくはないけれど、みんなと比べると、周回遅れじゃないか。
“自立”しなくていいのか?毎日、自問自答を繰り返すようになった。
 
とはいえ、「一人暮らしをしようと思う」と両親に話すと、「お金は大丈夫なの?」「料理、大変だよ」「掃除もちゃんとできるの?」と、あらゆる角度からの親ブロックが炸裂する。その結果、「やっぱり今度でいいか」と、得意の先送りを繰り返していた。
 
27歳になったばかりの12月、仕事に少し余裕が出てきた頃、本格的に一人暮らしについて考え始めた。「このまま一人暮らしをせず、結婚もせず、実家にずっと居たら、どうなるだろう」と、想像してみたのだ。
 
実家のマンションにある私の部屋は、窓が共用廊下に面していて、日当たりがすこぶる悪い。「この部屋にずっと暮らすなんて、一生地下室に閉じ込められるようなものじゃないか!」そう思った私は、両親には言わず、水面下で物件を探し始めることにした。
 
私は理想が高く、「駅近、通勤1時間以内。築5年未満、オートロックで2階以上。バス・トイレ別で、2口コンロ。日当たり良好、でも価格は安め」という条件を譲らなかった。譲らなかったので、当然、なかなか部屋は見つからない。物件検索サイトでは、いつも1桁ヒットすれば良い方だった。
 
家探しは難航し、6か月が過ぎた。10軒以上の不動産屋を訪ね、20部屋は内見をしたが、高望みしすぎているのか、決まる気配すらない。「もうだめかも……」と諦めかけた瞬間、まるで天使の導きのように、条件に当てはまる新築物件が現れた。
 
早速、内見に行くと、理想通りの素晴らしい物件だった。加えて、大きな東向きの窓からの眺めも良く、昼は照明がいらないほど明るかった。その場で、「ここにします!」と即決した。
 
そして始まった、私の一人暮らし。思い描いていたほど、順風満帆というわけではなかった。東向きの窓からの直射日光で、夏は熱中症になりかけたこともあるし、景色がきれいな広い窓からは、虫もたくさん入ってきた。
 
ただ、数年経って、「よかったな」と感じることある。
それは、小さな決断を、たくさんするようになったことだ。
 
今日の夜、何を食べるか。家で食べるか、外食するか。
どの洗濯洗剤を使うか。1回でまとめて洗うか、タオルだけ別にして洗うか。
人生が、小さな決断の連続になった。
 
決断を続けると、自分なりのこだわりも出てきた。
一駅先のスーパーでしか買えない、あの卵が美味しいとか、
近所のドラックストアのトイレットペーパーは、柔らかくて良いとか。
 
当初、お金の管理がきちんと出来たり、家事をしっかりとこなせることが“自立”だと思っていたが、そうではなかった。収支の把握は、スマートフォンのアプリがやってくれるし、家事だって、代行を頼める時代だ。
 
一人暮らしをすることで、私は小さな決断をして、決めた1つ1つのモノやコトに、こだわりを持つようになった。そして、“好き”に囲まれて、生きるようになった。
 
私は、私の社長になることができたのだ。実家にいると、どうしても“両親の子供”という枠から逃れることができなかったが、今は四苦八苦しながらも、自分の人生の舵取りをしているという、確かな感覚がある。
 
また、実家を離れることで、両親が今まで私に、たくさんのものを与えてくれていたのだという、当たり前のことにも気付くことができた。実家の部屋は、確かに地下室並みに暗かったけれども、同時に温かくもあったのだ。
 
日々、迷いながらの経営ではあるが、たまに実家で温もりを感じつつ、私自身という会社を、大切に、丁寧に、育てていきたいと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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