メディアグランプリ

「天然さん、いらっしゃい」


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:蒲生厚子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
なぜか天然といわれる。
10年ほど前からゴスペルを習っているが、その仲間たちから「あっちゃんって天然だね」と言われ、「えっ!?」と耳を疑った。はじめてだ。
しかもひとりではなく、みんなから言われて、東の帝王という異名までついてしまった。
あれれ? わたしって天然なの?
え? なんで? どういうこと?
 
どちらかというと、子どもの頃からおとなしく、しっかりしていた……はず。
三姉妹の末っ子ではあったが、上の姉とは10歳、下の姉とは6歳差があるので、常に姉たちの行動を見ており、同級生にくらべると大人っぽかったのではと思う。幼稚園の頃からピアノを習い、洋楽を聴き、映画を観て、本を読み、楽しいインドア生活を送っていたと思う。
 
中学、高校と進むにつれて、姉たちのお陰でみんなより早く見聴きしていた経験がものを言い、先頭を切って新しいことに挑戦することも多く、友達もどんどん増えていった。学校を抜け出してBEATLESの映画を観に行ったり、自主休校してQUEENのライブに行ったり。バスが部分ストライキ(ストライキでバスが半分しか運行しない)の時は、学校へ行かずに我が家集合で下校時までおしゃべりすることもあった。今考えたらやりたい放題にも思えるが、一緒につるんでくれる友達がいたからこそ出来たことだ。
「やろう!」というと、喜んで賛同してくれる仲間がいた。
社会人になっても、やりたいことをまっしぐらにやってきた。その都度一緒に活動してくれる仲間がいて、コミュニティは形を変えながらも自分らしく楽しく生きてきた。
 
だから、勝手に自分でリーダーシップのあるしっかり者というブランドイメージをもっていたのかもしれない。
 
しっかり者と天然って真逆?
 
50歳を目前に夫の他界をきっかけに、大企業のオフィスレディというものに挑戦することとなった。そこからのポンコツぶりは言うまでも無い。ずっと専門職でやりたいことだけしてきたわけで、組織なんて大嫌い、空気を読んで上の人を気遣うなんてしたこともなかった。自分らしくいられるわけがない。というより、自分らしさがどんなのだったかもわからなくなっていった。本来の自分ってどんなんだっけ?
あれ? あれれ?
こんなになんにもできない自分って?
それでも何年も勤めていると、さすがに少しずつでも仕事ができるようになってくる。自分らしい人間関係ができてくる。
 
そのころからに頻繁に言われるようになった言葉が「天然」なのだ。
知人に言わせると、肩書きや見た目とのギャップがヤバいらしい。
第一印象がとてもしっかりしていて、近寄りがたい一面もあるけど、知ってしまうとなんか抜けていて面白い。
本人は全く意識していないので、何が面白いのかさっぱりわからない。
真面目に言っているのに、みんなが笑っているという不思議な光景も……。
 
よくわからないので、こちらからみんなに聞いてみる。
「なんか、天然だって言われるんだけど」
するとたいていの人は「そうだね」と好意的に笑ってくれる。
 
結婚前の娘夫婦と私の結婚式の話をしていたときのこと。
「私の結婚式のときは祐子(私の姪)がまだ3歳で、花道を歩いて花束をくれたんだよね。覚えてる?」って聞いたら、娘は「私はまだ生まれてないから覚えているわけがない!」とあきれ顔で答えた。ごもっとも。「あ、そうか。そうだよね」私の中では姪の祐子はとても小さくて昔のまま。時系列の空間が完全にずれていた。
照れ隠しに「よく天然って言われるけど、こういうところか」と言うと、娘は「おかんは天然だよね。私は不思議ちゃんだと言われるけど」と答えた。婿は「僕もまだ3回しかあってないけど、それでもそう思うくらいだからよっぽどです」
これはショックだった。
家族も言わないだけで天然だと思っていたんだ。
 
他企業の人にも同じ質問をすると「そう。あなたってすごいよね。会議のときにみんな思っていても言えないことを、ストレートに聞いてくれる。心の中で拍手喝采だよ」「それってアホってことだよね」と大笑い。でもお陰さまで良い関係が築けて、困ったときは手伝っていただける。本当にありがたい。
 
そういえば、大学時代の友達と久しぶりに旅行に行ったときも「あっちゃんのドジぶりが健在でおもしろかった」と言われた。そうか、40年前は天然という言葉ではなくドジという言葉だったか。それならよくわかる。私はドジっ娘だ。確かに。昔からドジだった。そしてそれは愛すべきニュアンスでもある。
 
若い頃は「すごいね」「何でもできるね」と言われるのがいやで、ドジなエピソードを話すのが楽しかった。エピソードには事欠かなかった。
本屋さんで棚に並んでいる本を抜いて買ってきたら、欲しい本の隣を抜いたらしく、見たこともない本でがっかりしたことは忘れられない。買ったものを電車の中に忘れることなどしょっちゅうだし、お金を払おうとして財布の中に2円しか入ってないとか、そもそも財布を忘れて買い物をしてレジで返したことも何度かある。最近では財布がなくても、携帯の電子マネーが使えるので大変助かっている。
 
先日は電子マネーで買い物をしようと思い、画面をみてびっくり仰天した。なんと20万円もチャージされていた。えっ、い、いつの間に……!
画面を二度見どころか、三度見した。
きっとかばんの中で勝手にチャージされたに違いない。ポチッと押した記憶がないから。自分のお金に変わりはないから大きな問題ではないのだけれど、あぶく銭を手にした気分で、気軽にぽんぽんとネット通販に手を出している自分がいる。これはヤバい。
 
そうか、こういうところも天然と言われるわけか。
人間はいろいろな側面を持っている。しっかりした面、臆病な面、ドジな面、そして天然な面。すべて自分に違いない。自分が見ている側面と人から見えている側面、両方とも自分に違いないのだから、ありがたく受け入れさせてもらおうと思う。そして愛すべき人間として生きて行ければこんなに楽しいことはない。
実害なければすべてよし!
天然さんは今やわたしのキャラクターの中心に鎮座しているかもしれない。
「天然さん、いらっしゃい」だ。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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