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人工知能も五月病になるのか?


人口知能
記事:まるバ さま (ライティング・ゼミ)

 

こんばんは、7時の近未来ニュースです。

 

この春、新卒として入社した人工知能が、五月病を発症したという報告が全国で相次いでおり、受け入れた企業では対応に追われています。

 

***

 

大田区のネジ部品メーカーで、今年4月に入社した人工知能は5人。

 

「仕事ってのはなぁー! 口で教えるもんじゃねぇ!」

「背中を見て盗むもんじゃぁ!」

このような、年配ベテラン社員たちの、いかにも職人といった姿は過去のものとなりました。属人的な秘密のベールに包まれていた職人技を、パターン化した数字へ解析することに成功。熟練工しかできなかった、旋盤の微妙なハンドルさばきをインプットすることで、入社初日から人工知能の新入社員がスイスイと旋盤を操っています。

 

新卒で入社した人工知能の雲田AI(アイ)さん。

「プログラムどおりやるだけです。え? チョー簡単ですよ」

 

ライバル企業も含めた過去の製品をすべて記録したうえで、将来市場で求められる製品を先読みすることも可能。そのデータをもとに新製品を発表したところ、空前の大ヒット。業績もV字回復を果たしました。

 

 

南池袋の書店に入社した人工知能は、客の好みに合わせてオススメ本を提案する「レコメンド」の業務で早くも頭角を現し、即戦力として活躍しています。

2013年開店以来の、客の購入履歴や趣味・嗜好、行動パターンをすべて記録したうえで、これまで独自の選択眼で好評を博してきた名物書店員の知識・直感も学習済み。

 

「そう! こんなのが読みたかった!」

「すごい! 欲しかった本がどうしてわかっちゃうの?」

 

と、客の反応も上々。今まで自分では気づかなかった、新しい読書体験を提供してくれると話題になり、ファナティックなリピーターが急増中。客一人当たりの購入単価も上がったそうです。

 

 

ところが、5月の連休以降、企業に入社した人工知能が急に不調になったとの報告が、全国で急増しています。時期的に、人間の社員が陥る「五月病」と同様の症状ではないかとみられ、消費者庁では注意をよびかけています。

 

 

横浜市のIT企業では、4月に入社した人工知能10名のうち6名で五月病とみられる症状が発生。大きな痛手となっています。

連休明け最初の営業日から突然、人工知能が急にスリープ状態に入り、先輩社員からのコマンドにも、砂時計マークを出したまま、一切反応を返しません。

 

この企業では、入社当初から人工知能を非常に重宝してきました。

ストレス耐性も強く、土日関係なし・昼夜問わず指示を与えても消耗することなく、着実にアウトプットを出し続けるので、客先からの信頼も厚かったといいます。

特に短納期・低予算案件が多いIT業界において、人工知能なしでは会社が立ち行かないと、担当者は嘆いています。

 

「人間の場合、職場になじめず孤立することが、五月病の原因になります。当社の人工知能社員は、同期入社どうしで、文字どおり情報の『同期』をクラウド上で行っており、社内コミュニケーションには問題はなかったと思います」

 

 

今回発症が認められた人工知能を納入したベンダーが、電話インタビューに答えました。

 

「過去の事例の学習を経ることで、人工知能は完成します。当社では百科事典並みの豊富な世の中の事象を、あらかじめ人工知能に学習させておくことで、納入後すぐに現場で戦力として働くことができます」

 

「学習させるコンテンツには細心の注意をはらっています」

 

「ハリウッド映画を模倣して、自我に覚醒した人工知能が人類に戦争をしかけることがないよう、映画は一切見せていません。

また、不死鳥をテーマにした漫画の事例から、人間と人工知能が恋に落ちないよう、プログラム的な防止策を講じています」

 

「このような事態になるとは、全く想定外です。現在、内部で調査中ですので、これ以上はコメントできません」

 

コンピュータウィルスに感染した形跡や、機械的な故障は見つかっていないそうです。

 

 

その後、番組独自の調査で、さきほどのベンダーから人工知能の学習作業を委託された業者を特定。事情を知る社員との接触に成功しました。

 

(プライバシー保護のため音声を変えています)

 

「人工知能が普及したおかげで、受注も倍増したんですが、ウチも例に漏れず、人間の社員がゴッソリ減らされちまって。ミイラ獲りがミイラになるってやつですかね」

 

「え? 請けた仕事はきっちりやってますよ!」

 

「何か小細工して変なデータ紛れ込ませたって? いやいや、アンタ、とにかく人が足りなくて、そんなことなんかしてる余裕ねえっスよ。こっちが五月病になりたいくらいだ」

 

 

では、なぜこのような症状が発生してしまったのでしょう?

 

 

人工知能事情に詳しい、国立天狼院大学 コンピュータサイエンス学部 客員教授 Watson博士は、こう分析しています。

 

「人工知能の優れた利点は、学習したデータをから、まだ発見されていない新しいパターンを見つけ出し、未来を予測するところにあります」

 

「今回五月病を発症した人工知能の学習データベースを、大学で独自に分析したところ、

 

サツキ、メイ > 分類:『となりのトトロ』

五月みどり > 分類:演歌歌手

……

 

などのインプットは行われていましたが、やはり『五月病』そのものは登録されていませんでした」

 

「しかし、納入後に起こった世の中のニュースや時事ネタ、入社後いきなり負荷の高い業務を請けた経験を新たに学習しています。それらを踏まえたうえで、人間がこんな状況に置かれたらこのように変化するであろうと予測し、『五月病』の概念を自然に獲得していったと考えられます」

 

 

大学で継続調査を行ったところ、同様に、人間が入力していないにも関わらず、『厨二病』の概念の獲得が認められたということです。ところどころイタい言動の兆候が見られたときには、直ちに運用を中止するよう、教授は注意喚起を促しています。

 

 

***

 

 

それでは、続いてのニュースです。

 

「本日昼ごろ、自動運転タクシーが行先を誤り、法外な料金が乗客に課せられるという事故が発生しました」

 

「40代の男性が群馬県のJR高崎駅から草津温泉へ行くため、目的地を『草津』とインプットしたところ、間違って500キロ離れた、滋賀県草津市に到着……」
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2016-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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